栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:RetroCohort メディケア患者に対する男女医師による入院死亡率・再入院率の比較

メディケア患者に対する男女医師による入院死亡率・再入院率の比較
Comparison of hospital mortality and readmission rates for medicare patients treated by male vs female physicians

JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2016.7875 Published online December 19, 2016.

【背景】
 女性と男性医師の間では、診療パターンの違いがあることが研究によって明らかになっており、女性の方が診療ガイドラインを遵守し、EBMを実践していることが多いことが知られている。一方、女性と男性医師の違いによる患者アウトカムがどうなるかは大規模には検証されていない。
【目的】
 女子および男性医師によって治療された患者群毎の死亡率と再入院率が異なるかを検証する
【デザイン・セッティング・患者】
 2011年1月1日から2014年12月31日までに、メディケアの65歳以上の一般内科的な治療目的に入院した患者のうち20%をランダム抽出した。医師の性別と30日死亡率、再入院率の関係を評価し、患者や医師の特徴や病院固有の因子(同じ病院の女性・男性医師を比較)を調整した。感度分析では、病院入院ケアに従事している医師(ホスピタリスト)のみを評価し、医師の仕事内容に基づいてランダム化して評価を行った。また、特別な状況や基礎疾患の重症度などによる違いが患者アウトカムに影響するかも比較した。
【メインアウトカム】
 患者の30日死亡率と再入院率
【結果】
 全体で158万3028人の入院データ(平均 80.2歳、62万1412人が男性、96万1616人が女性)が30日死亡の解析に用いられ、154万797人の入院データ(平均 80.1歳、60万2115人が男性、93万8682人が女性)が再入院率算出に用いられた。
 女性医師によって治療された患者は、男性医師によって治療された患者と比較して可能性のある交絡因子を調整しても、30日死亡が11.07% vs 11.49%、調整Risk -0.43%:-0.57 to -0.28%、p<0.001、NNT for 1人死亡予防 233人。30日以内の再入院は15.02% vs 15.57%、調整Risk -0.55%:-0.71 to -0.39%、p<0.001、NNT for 1人再入院予防 182人。ホスピタリストのみのデータや8つの医療状況や疾患の重症度を調整しても、違いは認められていた。

f:id:tyabu7973:20161224012312j:plain(本文より引用)

【結論】
 高齢の入院患者では、女性内科医による診療が男性医師と比較して、死亡率と再入院率に関連した。これらの所見は、過去の研究でも指摘されているような、女性医師と男性医師の間での診療パターンの違いが患者アウトカムにとって重要かもしれない
【批判的吟味】
・いつも通り論文のPECOから
P:メディケアデータベースから抽出した高齢入院患者
E:女性医師の診療
C:男性医師の診療
O:30日後の再入院率、死亡率
T:後ろ向き観察研究
・重症度による感度分析はされているものの、女性医師が軽症患者を診ていた可能性はあります。
疾患は、敗血症・肺炎・心不全・COPD・尿路感染症・急性腎不全・不整脈・消化管出血で評価しましたが、どの疾患でも同様の結果でしたが、特に有意差がついたのは敗血症と肺炎でした。
・その他、交絡因子の調整として、人種や併存疾患、収入、医師の出身大学や医学部の種類なども考慮されている。
死亡率の差は0.4%、再入院率は0.55%と死亡率の絶対値はそれほど多くはないかもしれませんが、NNTはそれなりです。
・性別という固有のデータではありますが、何が直接的な違いの原因なのかの評価はできていません。
【個人的な意見】
 これは、なかなか興味深い結果でした。個人的にはこの違いを生んでいるのが何なのかが最も興味があります。働き方の違いなどもあるのかもしれませんが・・・今後の検証が期待されます。

✓ 高齢の入院患者では、女性内科医による診療が男性医師と比較して、死亡率と再入院率を有意に低下させた