読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:高血圧前症/無月経/汎血球減少/中毒

MKSAPリアルタイムで参加できませんでしたがどうぞ!

 

Q1

 50歳男性。高血圧の経過について相談。6週間前に血圧138/82で受診。その他、検査異常なく2週間後の外来では血圧136/85。喫煙、飲酒、内服薬はなく、家族歴として母が高血圧である。本日、血圧135/84、他のバイタル異常なし。BMI26。身体所見は胸部聴診含め異常なし。心電図異常なし。

Laboratory studies:

Complete blood count

Normal

Serum creatinine

Normal

Electrolytes

Normal

Glucose

Normal

Total cholesterol

192 mg/dL (4.97 mmol/L)

LDL cholesterol

145 mg/dL (3.76 mmol/L)

HDL cholesterol

38 mg/dL (0.98 mmol/L)

Triglycerides

Normal

 

問 生活習慣改善に加えて介入は?

A 歩行時血圧モニタリング

B 高感度CRP測定

C ヒドロクロロチアジド

D 1年以内の血圧再検

 

① 高血圧前症

 この患者は1年以内の血圧再検をすべきである。JNC7が定めた高血圧前症というグループは将来高血圧になるリスクが高く、生活習慣改善が望まれる。高齢と家族歴は将来降圧が必要となるリスクを増加させる。この患者は軽度の肥満であり、脂質は境界値のため、生活習慣への介入をし、有酸素運動を増やし、体重を減らすべきである。

②他の選択肢

 歩行時血圧モニタリングは白衣高血圧や降圧困難例、治療による低血圧、自律神経失調が疑われる患者に使用する。

 CRPは心血管イベントで上昇する炎症マーカーであり、心血管リスクの階層化に利用できるかもしれない。

 この患者は持続高血圧の基準を満たさないので降圧薬の適応はない。

 

POINT 高血圧前症は1年以内にフォロー

Chobanian AV, Bakris GL, Black HR, et al; National Heart, Lung, and Blood Institute; Joint National Committee on Prevention, Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Pressure; National High Blood Pressure Education Program Coordinating Committee. The Seventh Report of the Joint National Committee on Prevention, Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Pressure: the JNC 7 report [erratum in JAMA. 2003;290(2):197]. JAMA. 2003;289(19):2560-2572. PMID: 12748199

 

Q2

 33歳女性。5ヶ月前からの無月経と3ヶ月前からの乳汁分泌。患者曰く、無月経になる前の月経は正常で、内服薬はない。バイタルは正常。視野狭窄はない。両側の乳汁分泌を認める。LH 2mU/ml プロラクチン965ng/ml fT 1.1ng/dl 成長ホルモンは正常。MRIではトルコ鞍に1.5㎝のmassがあり、視交叉を圧迫。

問 初期治療は?

A ドパミンアゴニスト療法

B 経口避妊薬

C 放射線療法

D 経蝶形骨洞的切除術

 

① 下垂体腫瘍

 この患者はプロラクチノーマであり、初期治療としてカベルゴリンのようなドパミンアゴニストが使用される。高プロラクチン血症は閉経前の女性に乳汁分泌、月経過少、無月経を引き起こす。男性だと勃起不全となる。性欲減退や不妊症、骨量減少は両性で起こる。大きな腫瘍はmass effectを伴うこともあり、男性や閉経後女性で多い。この患者はプロラクチン増加が著しく、無月経、乳汁分泌に至っている。腫瘍も大きく視交叉にまで及んでいるが、視野検査に異常は見られない。ドパミンアゴニストはプロラクチンを正常化し、症状を改善させ、腫瘍も80-90%の患者で50%以上の縮小が見られる。これが第一選択の治療であり、軽度の視野狭窄があっても行われる。カベルゴリンはブロモクリプチンより高いが効果も高い。

②他の選択肢

 経口避妊薬は性ホルモンを置換し、月経を促すが腫瘍の大きさは変わらない。単純なエストロゲン置換としては不適切であるが、高プロラクチン血症があり、腫瘍が小さい場合、妊娠を望まなければ好まれることもある。プロラクチノーマにはエストロゲン受容体があり、腫瘍が増大する可能性があるが経口避妊薬の量ではあまり心配はない。

 手術は薬物治療に反応が悪かったり、視野異常が著しい場合に適切である。

 放射線療法は薬物治療、手術の両方で効果が乏しかった場合に考慮される。 

 

POINT プロラクチノーマにはまずドパミンアゴニスト

Melmed S, Casanueva FF, Hoffman AR, et al; Endocrine Society. Diagnosis and treatment of hyperprolactinemia: an Endocrine Society clinical practice guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2011;96(2):273-288. PMID: 21296991

 

Q3

 43歳男性。2日前からの腹痛で来院。最近汎血球減少あり、家族歴なし、ビタミン製剤のみ内服中。体温36.2 °C、血圧143/69 mm Hg、脈拍86/min、呼吸12/min。黄疸あり、脾腫なし、そのほかの身体所見は正常。1年前の血球数と肝機能は正常。腹部CTは腸間膜静脈血栓があるが、リンパ節腫大や脾腫なし。

Laboratory studies:

Haptoglobin

Undetectable

Hemoglobin

10.4 g/dL (104 g/L)

Leukocyte count

3400/µL (3.4 × 109/L)

Platelet count

89,000/µL (89 × 109/L)

Reticulocyte count

7%

Total bilirubin

2.8 mg/dL (48 µmol/L)

Direct bilirubin

0.4 mg/dL (7 µmol/L)

Lactate dehydrogenase

775 units/L

問 診断に必要な検査は?

A 直接クームステスト

B 第Ⅴ因子ライデン測定

C CD55とCD59

D 抗核抗体と抗カルジオリピン抗体

 

① 汎血球減少症

 不自然な場所での静脈血栓、溶血性貧血、中等度の汎血球減少があり、発作性夜間ヘモグロビン尿症に特徴的である。診断は、白血球と赤血球のCD55とCD59のフローサイトメトリーで行う。

②他の選択肢

 直接クームステストは自己免疫性溶血の評価に用いられ、脾腫、球状赤血球、網状赤血球増多症、非抱合型ビリルビンと乳酸デヒドロゲナーゼの上昇、ハプトグロビン低下が特徴的。この患者では脾腫なく、自己免疫性溶血性貧血では彼の汎血球減少や血栓症は説明できない。

 第V因子ライデン突然変異は、最もcommonな遺伝性塞栓症の疾患であるが、この患者の汎血球減少と溶血は説明がつかない。

 抗リン脂質抗体症候群は、静脈や動脈血栓のリスクが高く、内臓の静脈や下肢の静脈が好発であるが、この患者の無症状の塞栓症や汎血球減少や溶血を説明はできない。

 

POINT PNHの診断にはCD55/59

Brodsky RA. How I treat paroxysmal nocturnal hemoglobinuria. Blood. 2009;113(26):6522-6527. PMID: 19372253

 

Q4

 55歳の男性自宅付近の地面で意識障害で倒れているところを発見され来院。起き上がるのが困難であり、自発呼吸はあるが、頻回で浅い。体温36.5 °C 、血圧135/91 mm Hg、脈拍110/min、呼吸 24/min.痛み刺激で起きる、頻脈以外は、心臓肺の身体所見は正常で、腹部軟、神経学的所見で局所症状なし。

Laboratory studies:

Blood urea nitrogen

14 mg/dL (5 mmol/L)

Creatinine

1.9 mg/dL (168 µmol/L)

Electrolytes:

 

Sodium

138 meq/L (138 mmol/L)

Potassium

4.1 meq/L (4.1 mmol/L)

Chloride

90 meq/L (90 mmol/L)

Bicarbonate

12 meq/L (12 mmol/L)

Glucose

90 mg/dL (5.0 mmol/L)

Lactic acid

2.8 mg/dL (0.3 mmol/L)

Serum osmolality

390 mosm/kg (390 mmol/kg)

Blood gases:

 

pH

7.24

Arterial PCO2

28 mm Hg (3.7 kPa)

Arterial PO2

102 mm Hg (13.6 kPa)

中毒スクリーニングでは、エタノール、オピオイド、ベンゾジアゼピン、一般的な娯楽用ドラッグは陰性であった。胸部レントゲンでは異常なし、膀胱内には尿は少量であったが、導尿で赤血球、シュウ酸カルシウム結晶排出あり。

 

問 治療は?

A 血液透析

B エタノール静注

C フォメピゾール静注

D フォメピゾール静注と血液透析

 

① 中毒

 本患者は、エチレングリコールの摂取による急性中毒である。エチレングリコールは不凍液と溶解の混合したものである。アルコールデヒドロゲナーゼによるエチレングリコールの代謝では、グリコール酸、オキサロ酢酸、葉酸などを生成し、痙攣や意識障害など神経症状を引き起こす。治療しなければ、非心原性の肺水腫や心血管の虚脱を引き起こす。エチレングリコールの摂取から24〜48時間後に尿中シュウ酸カルシウム結晶排出により、疼痛や腎不全が発症。フォメピゾールはアルコールデヒドロゲナーゼを阻害し、エチレングリコールへの代謝を抑制する。この患者では、血清クレアチニンの上昇や乏尿、血尿といった腎臓の臓器障害が出ており、浸透圧較差、代謝性アシドーシスといった以上が出ているため、血液透析も必要である。

②他の選択肢

 血液透析単独では、毒性のある代謝物を除去はできるが、エチレングリコールは毒性のあるものへ変換し続けられてしまう。

 

POINT エチレングリコールにはフォメピゾールと透析

Jammalamadaka D, Raissi S. Ethylene glycol, methanol and isopropyl alcohol intoxication. Am J Med Sci. 2010;339(3):276-281. PMID: 20090509