栃木県の総合内科医のブログ

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症例:Lancet 62歳女性 意識障害

case report今回はLancetからです。
題名はネタバレですが、まあ気にしない。

症例:62歳女性 意識障害

Lancet 2016; 387: 2422

 高血圧とコントロール良好な2型糖尿病の既往のある62歳女性が、家で床に倒れて反応がないところを家族に発見された。家族曰く、入院前日には精神的に疲れて見えたが、それ以前は正常な健康状態だったとのこと。
 診察ではGCS 3、体温 39.4℃、頻脈があり、血圧は170-200mmHg程度だった。両下肢に筋力低下があり、全身診察で他は異常所見を認めなかった。GCSが低く、気道確保のため挿管された。低血圧・発熱・頻脈は輸液で改善せず、昇圧剤を必要とした。頭部CTおよびその後撮像された頭部MRIでは、以下の通りだった。

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(本文より引用)

質問. この患者の意識レベル低下の原因は

 

回答:敗血症 sepsis

経過:

 急性水頭症を考慮して脳室ドレナージが行われたが、頭蓋内圧は5mmHg(正常 5-15mmHg)で、その後も5-10mmHg程度だったので2日後に抜去された。脳脊髄液検査は正常で、胸部画像検査および血液培養結果から、肺炎に続発する敗血症と診断し、抗菌薬治療で意識は正常に戻った
 その後はリハビリ施設に退院し、正常な意識レベルまで改善した。彼女の以前の病歴を確認すると、水頭症は生下時から長期にわたって存在していたと判断された。

解説:
 本症例は、深刻な慢性水頭症にも関わらず、正常な精神状態および機能を維持する脳の潜在能力を示している。正常圧水頭症とは対称的に、代償された水頭症とは、感染症や外傷などが起こるまでは無症状だが、失神や突然死の原因に繋がることもある。

 代償された水頭症は、真空水頭症とも呼ばれ、脳脊髄液の流れを妨げない水頭症の一種である。通常、高齢者で脳体積の減少や加齢によって引き起こされたり、Alzheimer病や白質萎縮症、脳炎の様な脳萎縮
、外傷性脳損傷や脳卒中によって引き起こされる局所的損傷によって起こる。臨床医は、無症候患者の画像診断で偶発的に見つかるこの所見に注意すべきである。通常本症例の様に追加のwork upは不要である。