読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:抗MDRP薬/悪性症候群/高プロラクチン血症/アブレーション後

MKSAP

長らくお待たせしました。ややマニアックな問題でした。ではどうぞ!

 

Q1

 52歳男性。発熱、血圧低下でICUに入室。1年前に表面積のおよそ20%に及ぶ熱傷を負った。その後、皮膚移植のため頻繁に入院しており、1週間前にも左大腿部前面の移植をしている。最後に移植した部位で24時間前から排膿がある。内服薬は抗菌薬含め現在なし。体温38.8℃、血圧95/50、脈拍115。心肺の所見は正常範囲。左大腿部前面の移植片以外は感染徴候なし。創部は瘢痕化して弱く、中等量の膿を排出している。エンピリックにバンコマイシンが開始された。血培2セットから緑膿菌検出。セフェピムを追加。薬剤感受性試験ではβラクタム、カルバペネム、フルオロキノロン、アミノグリコシドを含む全ての抗菌薬に耐性を示した。

 

問 治療は?

A コリスチン静注

B ミノサイクリン静注

C リファンピン静注

D チゲサイクリン静注

 

①抗MDRP薬

 この患者にはコリスチンの静注が必要である。多剤耐性緑膿菌はICUのようなセッティングでは生えやすく、院内発症のグラム陰性菌による肺炎の最も頻度の高い起因菌である。熱傷患者では特に緑膿菌感染を起こしやすく、治療をしても予後不良である。コリスチン(ポリミキシンE)は高い腎毒性のため、歴史的にあまり使用されてこなかった。最近、コリスチンが使用されてきたのは、多剤耐性のグラム陰性菌、特に緑膿菌に使用可能な数少ない抗菌薬の一つであるためである。

②他の選択肢

 ミノマイシンとリファンピンは緑膿菌活性に乏しく、チゲサイクリンは緑膿菌活性がない。

 

POINT MDRPにはコリスチン

Pogue JM, Marchaim D, Kaye D, Kaye DS. Revisiting “older” antimicrobials in the era of multidrug resistance. Pharmacotherapy. 2011;31(9):912-921. PMID: 21923592

 

Q2

 50歳男性。肺炎と診断され、救急外来で抗菌薬が開始された。双極性障害の既往があり、リチウム、リスペリドンでコントロールされている。来院日夕方、意識障害が進行し、ハロペリドールを静注したところ、発熱と筋強直を発症。体温39.9℃、血圧187/108、脈拍110、呼吸数32。発汗、筋強直、意識障害は持続。ストライダーは聴取せず、呼吸不全はない。

 

問 輸液に加えてすべき治療は?

A アセトアミノフェン

B アトラクリウム

C 人工呼吸

D ロラゼパム

 

①悪性症候群

 適切な治療は輸液とロラゼパムのような神経遮断薬である。この患者は抗精神病薬に対し奇異反応を起こす悪性症候群である。特徴は発熱、筋強直、自律神経失調である。ハロペリドールのような所謂定型抗精神病薬による誘発が多いが、すべての神経遮断薬で起こりうる。治療は保存的に行われ、高熱、筋強直、脱水をコントロールする。原因薬剤の中止と鎮静を行う。病態として脱水以外は明らかになっていない。輸液とベンゾジアゼピン以外で必要時推奨されるのはブランケット、アイスパックなどによるクーリング、ニトロプルシドのような血管拡張薬による降圧、抗不整脈薬やDVT予防のヘパリンなどである。また、悪性症候群のリスクになるため、併用されているリチウムは中止すべきである。抗精神病薬が今後も必要であれば、最低2週間は休薬し、少量より再開する。

②他の選択肢

 悪性症候群の解熱に対するアセトアミノフェンやアスピリンのエビデンスはない。

 アトラクリウムのような筋弛緩薬もエビデンスがない。重症例では電気痙攣療法を行うことがある。サクシニルコリンは悪性症候群のリスクである。
 人工呼吸は呼吸不全のない段階では不適切である。筋強直や痙攣により呼吸補助が必要であれば適応となる。

 

POINT 悪性症候群には脱水補正とベンゾジアゼピン

Strawn JR, Keck PE, Caroff SN. Neuroleptic malignant syndrome. Am J Psychiatry. 2007;164(6):870-876. PMID: 17541044

 

Q3

 26歳女性。定期通院で高プロラクチン血症(55ng/ml)を指摘された。6年前、月経不順があり、精査したところ、軽度の高プロラクチン血症(33ng/ml)が発覚し、MRIでは下垂体に微小腺腫を認めた。ドパミンアゴニストで治療され、直近のプロラクチンは正常範囲であった。初潮は13歳で、その頃から月経不順。妊娠したことはなく、家族歴や内服薬はない。血圧108/70、脈拍82、呼吸数12、BMI25。中肉中背。乳房発育は正常だが、全体的に圧痛を認める。乳汁分泌、ざ瘡、多毛は認めない。PRL 55ng/ml、TSH 1.2μU/ml。

 

問 次に行うべき検査は?

A 妊娠反応

B GH測定

C コルチゾール測定

D 視野検査

 

①高プロラクチン血症

 プロラクチンが再上昇してきたら妊娠反応を採るべきである。高プロラクチン血症や月経過少の病歴はあるが、まずは妊娠を否定しなければならない。妊娠中はプロラクチンが上昇するため、妊娠可能年齢の女性では妊娠が否定されるまで他の介入を自動的に行うべきではない。

②他の選択肢

 先端巨大症が疑われても、無月経、月経過少の女性の評価としてGHを測定するのは有用ではない。ただでさえGHの日内変動は大きく、ランダム濃度は診断に有用ではない。先端巨大症の特徴は、顎前突、鼻・唇・舌の腫大、前頭部突出、空隙歯列、睡眠時無呼吸、手足の腫大、股関節・膝関節炎、手根管症候群、脂ぎった皮膚、スキンタグなどがある。先端巨大症の約40%にプロラクチンの共分泌が見られる。そういった患者の一部で無月経や乳汁分泌が見られるが、この患者は無月経以外の特徴がない。

 クッシング症候群を疑う所見がないためコルチゾール測定は有用ではない。クッシング症候群の特徴は、筋力低下、皮膚線状、低カリウム血症、説明できない骨粗鬆症、新規発症の高血圧、糖尿病であるが、高プロラクチン血症は起きない。月経不順はよく起こる。

 視交叉が圧迫されると一般的には両耳側半盲が起きる。下垂体腫瘍の存在がはっきりしない限り視野検査は不要である。

 

POINT 高プロラクチン血症ではまず妊娠反応

Kreitschmann-Andermahr I, Poll EM, Reineke A, et al. Growth hormone deficient patients after traumatic brain injury–baseline characteristics and benefits after growth hormone replacement–an analysis of the German KIMS database. Growth Horm IGF Res. 2008;18(6):472-478. PMID: 18829359

 

Q4

 61歳男性。定期受診。4年前から心房細動があり、6ヶ月前にアブレーションを受けた。施術以来、動悸、倦怠感、呼吸困難感、前失神のような症状はない。高血圧、2型糖尿病の既往があり、リシノプリル、アテノロール、メトホルミン、ワーファリンを内服している。血圧124/82、脈拍72。胸部診察上心音整。他の身体所見は異常なし。心電図上も正常洞調律。

 

問 今後の治療は?

A ワーファリンを継続

B アスピリンに変更

C クロピドグレルに変更

D アスピリンとクロピドグレルに変更

 

①アブレーション後

 この患者はワーファリンを継続すべきである。全ての患者で、アブレーション後、2-3ヶ月はワーファリンを続ける。その後はアブレーションの有無に関わらずCHADS2スコアのような評価ツールを用いて抗凝固療法を行う。この患者はアブレーション後無症状だが、症状が出ていない心房細動や今後起こる可能性もあり、脳梗塞のリスクはある。高血圧、糖尿病でCHADS2スコアは2点であり、年間発症率は4.0%である。

②他の選択肢

 アスピリン、クロピドグレルに変更することで抗凝固療法をやめるのは不適切である。CHADS2スコアが0点であればアスピリンが好まれ、1点であればアスピリンでもワーファリンでもよい。ワーファリン内服が困難の際は、アスピリン単独より、アスピリンとクロピドグレル併用の方が脳梗塞予防に大いに寄与する。しかし、ワーファリンに比べると効果は劣る上、出血のリスクも高い。ダビガトランやリバロキサバンも選択肢であるがアブレーション後の研究がされていない。

 

POINT アブレーション後もワーファリン継続

Chowdhury P, Lewis WR, Schweikert RA, Cummings JE. Ablation of atrial fibrillation: what can we tell our patients? Cleve Clin J Med. 2009;76(9):543-550. PMID: 19726559