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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:Kanavelの4徴/アスパラカリウムⓇとスローケーⓇ/骨折による出血量

カンファ 感染症 代謝 整形 薬剤 救急

カンファでの学びも相変わらず興味深いです。
やっぱり症例シェアが重要ですね。
知らないことたくさんだなあ。

Kanavelの4徴 Kanavel sign

 カンファで久々に名前を聞きました。 一応整理しておこうかと思います。Kanavel signは指の皮膚軟部組織感染症の際に、押さえておくべき特徴です。蜂窩織炎(Cellulitis)と化膿性腱滑膜炎(Tenosynovitis)を区別する上で重要です。
 具体的には、

・指のび漫性腫瘍
・指関節の軽度屈曲位での拘縮
・受動伸展時の激痛
・屈筋腱の走行に沿った圧痛

https://osuemed.files.wordpress.com/2011/05/flexortenosynovitis.png
https://osuemed.files.wordpress.com/2011/05/flexortenosynovitis.pngより引用)

 Kanavel先生はアメリカの外科医(1874-1938年)で、手の感染症の専門家でした。最後は交通事故で亡くなったとのことです。

 この徴候が認められたら、化膿性腱滑膜炎を考える必要があるので、抗菌薬のみならず、外科的ドレナージおよび滑液包の開放ドレナージが必要になります。マネージメントが異なるので覚えておく必要がありますね。

 ✓ Kanavel signを認めたら整形外科コンサルト


 

アスパラカリウムⓇとスローケーⓇ Potassium L-Aspartate and potassium chloride

 この辺りは恐らく薬剤師さんの十八番というところでしょうか。まあ、同じカリウム補充なんですが、カリウムを含む化合物はたくさんあります。本邦で使用可能な内服薬のカリウム化合物は
・アスパラカリウムⓇ(アスパラギン酸カリウム)
・スローケーⓇ(塩化カリウム)
・グルコン酸カリウムⓇ(グルコン酸カリウム)
があります。
 正直あまりちゃんと使い分けられておらず、せいぜい粉末か錠剤かを気にするくらいで、あとは院内採用を使うかと思ってました。

 今回、アスパラカリウムⓇで補正しているのになかなかカリウム値が上昇しない場合が話題になりました。低カリウム血症では代謝性アルカローシスを合併していることが多いわけですが、代謝性アルカローシス合併の低カリウム血症の場合、基本的にはCl-(クロール)が低下しており、Cl補充が重要になります。
 スローケーⓇは塩化カリウムですから、このCl補充が同時にされるのですが、アスパラカリウムⓇはClが補充されないため、代謝性アルカローシスが持続しカリウム排泄が亢進してしまうという機序が言われています。40%くらいしか体内に残らないという記載も見つけました。また、さらにアスパラカリウムⓇはそれそのものがアルカリ性なので、代謝性アルカローシスがなかなか改善しないということもありえ

 ちなみに蛇足ですが、低カリウム血症の際に、果物や生野菜などのカリウム含有食品の摂取量を増やすこともあまり効果が無いとされています。食事中のカリウムは主にリン酸カリウムやクエン酸カリウムであり、塩化カリウムよりも吸収が悪いことも覚えておく必要があります。 

✓ カリウム製剤の使い分けを覚えよう

 

骨折による出血量 Bleeding by fracture

 これも昔JATECか何かで見たような気がするのですが、一応おさらいで。骨折部位による出血量は以下の様に見積もられています。まあ、あくまで参考値ではありますが・・・。これ以外にも血胸や腹腔内出血も合併するとエライことになります。http://images.slideplayer.com/8/2438842/slides/slide_4.jpg

http://images.slideplayer.com/8/2438842/slides/slide_4.jpgより引用)

 通常循環血液量は体重の1/13程度と言われており、体重60kgの方は、60÷13=4600ml程度となります。一般的にHb 1g/dL低下する出血は400ml程度と言われており、通常の上腕骨や大腿骨骨折でもHbは2g/dL程度は低下すると考えて良さそうです。
 出血量が循環血液量の40%を超える場合には、Class4の出血で最重度ということになります。2000ml(2000ml=約40%)の全開輸液でも血圧が上がらない場合、40%以上は出血していると見積もることになりますね。

  ✓ 骨折の際のHb低下を予測しておく