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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:RCT 75歳以上の高齢者に対する厳格な降圧が歩行速度や移動制限に与える影響

Effect of Intensive Blood Pressure Control on Gait Speed and Mobility Limitation in Adults 75 Years or Older
A Randomized Clinical Trial
75歳以上の高齢者に対する厳格な降圧が歩行速度や移動制限に与える影響

JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2016.9104 Published online February 6, 2017. 

【背景】
 厳格な降圧が心血管系の合併症や死亡を減らすことは分かるが、身体機能への影響は分かっていない
【目的】
 厳格な降圧が歩行速度や移動状況に与える効果を評価する
【デザイン・セッティング・患者】
 今回のランダム化比較試験は2636人の75歳以上の高齢高血圧患者で、2型糖尿病や脳卒中既往がないSPRINT研究の患者。データは2010年11月8日から2015年12月1日まで集められ、解析はITT解析で行われた
【介入】
 患者は120mmHg以下を目標とした厳格治療群(n=1317人)と140mmHg以下を目標とした通常治療群(n=1319人)
【メインアウトカム】
 歩行速度は4m歩行試験で評価された。自己申告の移動に関する情報は退役軍人のRAND12項目健康調査とEQ-5Dで評価された。移動制限は、歩行速度が0.6m/秒以下もしくは、自己申告の歩行もしくは階段昇降の制限と定義した。
【結果】
 2629人の患者で移動状況が定義された。女性 996人(37.9%)、男性 1633人(62.1%)、平均年齢は79.9歳、平均フォローアップ期間は3年だった。厳格治療群および通常治療群で歩行速度は有意差を認めなかった(平均差 0.0004m/秒:-0.005 to 0.005)。年齢・性別・人種・ベースラインの収縮期血圧・CKD・心血管疾患の既往などでのサブグループ解析を行ったが、どれも有意差を認めなかった。

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(本文より引用)
 退役軍人RABD12項目健康踏査の身体コンポーネントスコアによるサブ解析では中等度の変化が認められたが、統計学的に有意な差には至らず、40点以上の平均差が0.004m/秒(-0.002-0.010)、40点未満の平均差が-0.008m/秒(-0.016-0.001)だった。多因子での解析を行ったが、厳格治療が移動制限に与える影響は認めなかった(HR 1.06:0.92-1.22)
【結論】
 SPRINT研究の75歳以上の高齢者では、収縮期血圧を120mmHg以下を目標にする厳格治療群は、140mmHg以下を目標とする通常治療群と比べて、歩行速度や運動制限への変化と関連しなかった。
【批判的吟味】
・まずは論文のPICOから。
P:75歳以上の糖尿病・脳卒中既往の無い高血圧患者
I:収縮期血圧120mmHg以下の厳格治療群
C:収縮期血圧140mmHg以下の通常治療群
O:歩行速度、移動制限
T:ランダム化比較試験/ITT解析
・比較的元気な高齢者を組み入れたのはSPRINT研究であること、SPRINTのデータ自体が若干それまでの研究データと異なる患者群である可能性があるので、このデータをそのまま適用して良いは悩ましいところです。
・ちなみにSPRINT研究はそもそも起立性低血圧患者、認知症、施設入所者は除外しているので私達がこの結果を当てはめたい患者は含まれていないことになりますかね。
歩行速度評価者の盲検化はされていない模様です。
・歩行制限のデータは自己申告であるところも限界。
【個人的な意見】
 まあ、SPRINT研究のデータを用いた別解析という形ですね。歩行速度って結局なんというかサロゲートアウトカムなんですよね。しかも、患者群が知りたいデータとは違いますが、元気な人の歩行速度には降圧は影響しないから、年齢80歳でも元気に歩いている人は、降圧してもOKというデータと考えたら良いでしょうか。
✓ 120mmHg以下の厳格治療群は、140mmHg以下の通常治療群と比べて、歩行速度や運動制限への変化と関連せず