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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:脊椎関節炎/汎血球減少/不眠症/免疫不全者

MKSAP

 答えがわからないようにタイトルつけると面白味が出ない。どうしたらよいものか。

 

Q1

 38歳男性。3年前から腰部の痛みとこわばりを自覚。症状は朝強く、動くと軽快する。既往歴、家族歴はなし。時折アセトアミノフェンを内服し、痛みは少し和らぐ。バイタル正常。身体所見上、腰椎の可動域制限がある。採決では血沈亢進とCRP上昇以外特記所見なし。レントゲンでは両側の仙腸関節の融合が見られる。

 

問 治療は?

A ジクロフェナク

B エタネルセプト

C メトトレキサート

D スルファサラジン

 

①脊椎関節炎の治療

 脊椎関節炎の軸関節症状にはジクロフェナクのようなNSAIDsを用いる。軸関節の脊椎関節炎は画像上の仙腸関節炎と少なくとも一ヶ所の軸関節炎症状、もしくはHLA-B27の遺伝子と少なくとも二ヶ所の軸関節炎で定義される。特徴として、炎症性腰痛、腱付着部炎、指炎、ブドウ膜炎、乾癬、クローン病や潰瘍性大腸炎、家族歴、HLA-B27、CRP上昇、NSAIDsへの反応良好などがある。この患者は慢性の炎症性腰痛があり、仙腸関節の癒合があり、強直性脊椎炎で起こりやすい。強直性脊椎炎では、初め、仙腸関節や下位腰椎に起こりやすい。軸関節症状には最大量のNSAIDsが第一選択薬であり、炎症を抑えるのに効果的である。80%の患者で痛みは改善する。NSAIDsの種類による効果の違いほとんどないが、一つの薬が2週間で効かなければ、他のものに替えてもよい。

②他の選択肢

 エタネルセプトのようなTNF-α阻害薬は末梢関節を含む症状に用いられるが、コストと長期予後が不明であるため、第一選択としては推奨されない。もしNSAIDsが不十分であったり、禁忌だった場合は考慮する。

 メトトレキサートやスルファサラジンのようなsDMARDsは末梢関節には効果的だが、軸関節には効かない。

 

POINT 脊椎関節炎にはまずNSAIDs

Song IH, Poddubnyy DA, Rudwaleit M, Sieper J. Benefits and risks of ankylosing spondylitis treatment with nonsteroidal anti-inflammatory drugs. Arthritis Rheum. 2008;58(4):929-938. PMID: 18383378

 

Q2

 56歳男性。労作時胸痛で受診。既往歴に高血圧、2型糖尿病があり、リシノプリル、アトルバスタチン、メトホルミンを内服している。体温37.1℃、血圧126/67、脈拍106、呼吸数18、BMI27。眼瞼結膜貧血あり。眼球結膜黄染あり。聴診上、呼吸音は清、S4を聴取。腹部は軟、圧痛なし。臓器腫大なし。

Laboratory studies:

Hemoglobin

7.6 g/dL (76 g/L)

Leukocyte count

3900/µL (3.9 × 109/L)

Platelet count

56,000/µL (56 × 109/L)

Reticulocyte count

0.5%

Alanine aminotransferase

29 units/L

Aspartate aminotransferase

27 units/L

Total bilirubin

4.9 mg/dL (84 µmol/L)

Direct bilirubin

1.0 mg/dL (17 µmol/L)

Lactate dehydrogenase

427 units/L

直接クームス試験陰性。心電図正常。

Figure 71.

(MKSAPより)

 

問 診断は?

A コバラミン欠乏症

B 遺伝性球状赤血球症

C 発作性寒冷ヘモグロビン尿症

D 温式自己免疫性溶血性貧血

 

①コバラミン

 この患者はコバラミン欠乏症である。末梢血スメアは巨赤芽球と過分葉核球を認める。コバラミンは赤血球成熟に必要なため、欠乏すると赤血球産生が溶血という形で頓挫する。コバラミン欠乏症は舌炎や体重減少、溶血性貧血による青くて黄色い肌を呈し、神経学的には、位置覚、振動覚が低下し、痙性失調へと進行する。

②他の選択肢

 温式自己免疫性溶血性貧血は無症状であったり、貧血、黄疸で発覚し、末梢血スメアでは中心が薄くなった網状赤血球が見られる。直接クームス試験はしばしばIgGで強陽性となり、補体に対しては弱い反応となる。

 発作性寒冷ヘモグロビン尿症は成人では稀であり、寒冷の元で赤血球上に発現しているP抗原に対するIgG抗体による溶血である。温かくなると補体が反応し溶血を起こす。巨赤芽球と過分葉核球は見られず、小さな球状赤血球が見られる。

 遺伝性球状赤血球症は遺伝性の赤血球膜の異常で、末梢血スメアに球状赤血球を認め、ビリルビンカルシウム胆石ができやすい。脾腫を伴うことが多い。

 

POINT コバラミン欠乏は汎血球減少を引き起こす

Acharya U, Gau JT, Horvath W, Ventura P, Hsueh CT, Carlsen W. Hemolysis and hyperhomocysteinemia caused by cobalamin deficiency: three case reports and review of the literature. J Hematol Oncol. 2008;18:1-26. PMID: 19094231

 

Q3

 35歳の女性、2年前からの不眠で受診。入眠中、不快な這うような感覚が足にあるとのこと. 20代から同様の症状があるが、徐々に悪化傾向。唯一症状を緩和する治療はコデインである。祖母も同様の症状がある。バイタルや身体所見、神経所見は異常なし、パーキンソニズムや末梢神経障害も無し。

 

問 診断は?

A アカシジア

B 有痛性筋痙攣

C ミオクローヌス

D むずむず足症候群

 

①むずむず足症候群

 むずむず脚症候群は、中年で始まることが多いが、20代でも起こりうる。家族歴があることが多く、年々悪化する。治療はドーパミンアゴニストやオピオイド。睡眠中に周期的な足の動きがあり、スパズムを起こすこともあり、一緒に寝ている人も含めて睡眠を妨げる。

②他の選択肢

 アカシジアは動かしづらさの感じはあるが、感覚異常や周期的な入眠中の四肢の動きはない。

 有痛性筋痙攣は痛みを伴う。

 ミオクローヌスは入眠時の痙攣である。

 

POINT むずむず足症候群は睡眠の妨げになる

Bayard M, Avonda T, Wadzinski J. Restless legs syndrome. Am Fam Physician. 2008;78(2):235-240. PMID: 18697508

 

Q4

 38歳男性、6ヶ月前から増悪する発熱、夜間盗汗、背部痛で来院。頭痛は持続し、動きとは関係なく、夜も残存。1ヶ月前にガーナから移住し、HIV感染の既往があるが、内服治療無し。見た目は低栄養で調子が悪そう、38.2 °C 、血圧112/74 mm Hg、脈拍78回/分、呼吸14/分、BMI 19。脊椎の屈曲、伸展、回旋が制限されている。中部胸椎に圧痛を認める。神経所見は正常。レントゲンでは、T12-L1の椎間は狭く、MRIでは傍脊椎に腫瘤を認めた。胸部レントゲンは異常無し。

 

問 すべき検査は?

A CTミエログラフィー

B テクネシウムシンチ

C ツベルクリン反応

D 脊椎生検

 

①脊椎カリエス

 診断は、結核性脊椎炎である。診断は生検で行われる。患者は免疫不全状態にあり、発熱、盗汗がある。しかしその他の感染症や腫瘍、結節性痛風なども鑑別に挙がる。

②他の選択肢

 CTミエログラフィーでは、脊椎周囲の病変を描出するが、診断には結びつかない。

 テクネシウムシンチでは、炎症の部位を明らかにはなるが、診断には至らない。

 ツ反はルーチンの検査としてはよくやるが、過去にHIV 感染もあり、陽性にはなるだろう。

 

POINT 脊椎カリエスの診断には生検を

Jain AK. Tuberculosis of the spine: a fresh look at an old disease. J Bone Joint Surg Br. 2010;92(7):905-913. PMID: 20595106