栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

ACPJC:Therapeutics 飛行機旅行中の乗客では弾性ストッキングが症候性DVTを減らす

ACPJCです。
弾性ストッキングエビデンス再び!!

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Compression stockings for preventing deep vein thrombosis in airline passengers. 

Clarke MJ, Broderick C, Hopewell S, Juszczak E, Eisinga A. 

Cochrane Database Syst Rev. 2016;9:CD004002.

臨床上の疑問:
 4時間以上の飛行機旅行中の乗客では、深部静脈血栓症(DVT)予防に弾性ストッキングの効果はあるか?

Reviewスコープ:
 4時間以上の飛行時間の飛行機に乗る乗客に対して、弾性ストッキングとストッキング無し群を比較している研究を組み入れた。片足のみにストッキングを履き、もう片方には履かない研究は足関連のアウトカムのみを評価対象とした。
 アウトカムは症候性および無症候性のDVT、肺塞栓症、表在静脈血栓症、浮腫で超音波・静脈造影・アイソトープ検査で診断した。

Review方法:
 Cochrane Specialised RegisterでMEDLINE、EMBASE/Excerpta Medica、CINAHL、AMED、関連文献、Cochrane CENTRAL、WHO International Clinical Trials Registry、ClinicalTrials.gov、ISRCTN registerが全て2016年2月まで検索された。また、RCTのリファレンスリストも調査対象だった。

 11RCT(n=2906人、平均年齢 45-49歳、男性 39-68%)が、組み入れ基準を満たした。9研究が両脚弾性ストッキングとストッキング無しを比較していた。1研究がタイツとタイツ無し群、1つが行きが片足、返りが別の足を比較していた。8研究はDVTリスクの低〜中等度の患者が対象であり、2研究高リスク患者が含まれていた。旅行は全て5時間以上で、バイアスリスクは1研究で低く、隠蔽かは2研究で低く、アウトカム評価者の明確な盲検化はされていなかった。

結果:
 9研究(n=2821人)を通して、症候性のDVTやPEは発症しなかった。ストッキング群はストッキング無し群と比べて症候性DVTを減らしたが、表在性静脈血栓症は減らなかった。浮腫スコア(0-10点)はストッキング群で有意に低くかった(6研究 n=1246人、平均差 -4.7:-4.5 to 4.9)

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(本文より引用)

結論:
 4時間以上の飛行機旅行中の乗客では、弾性ストッキングがDVTと浮腫を減らす

 弾性ストッキングのポジティブデータですね。過去に報告されているフライト中のDVT絶対リスクは4600フライトに1件から2000件に1件程度と言われています。今回のアウトカムで重要なのは症候性であるということです。過去の研究では、アウトカムに無症候性DVTが入っていることがポイントで、これは有効性のアウトカムとして不十分な可能性があります。今回は敢えて症候性を評価したわけです。
 実際の所は効果はごくごく小さいものです。NNT 32程度でRR 0.90(0.74-0.96)という形ですかね。どうしてもリスクを減らしたい!という患者さんにとっては、勧めても良いかもしれませんが、その効果はあまり大きいものではないことを知っておく必要があります。