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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:雷鳴頭痛/回転性めまい/ケロイド/血便

めまいの性状を聴取する意義は乏しいと教わりながらもタイトルに回転性と書いてしまう悲しい性。ではどうぞ。

 

Q1

 56歳女性。突然発症の頭全体の痛みで救急外来を受診。36時間前に始まり、市販薬では軽快しない。高血圧の既往があり、生活習慣の改善で経過を見ていた。30パックイヤーの喫煙者。血圧148/68、脈拍96整、呼吸数16。項部硬直あり。他特記所見なし。血小板19万、INR0.9、Cre0.9。頭部単純CTは異常なし。

 

問 診断に有用な検査は?

A 頭部造影CT

B 腰椎穿刺

C 頭頸部MRA

D 頭部単純MRI

 

①SAHの診断

 この患者は腰椎穿刺をすべきである。突然発症の激しい頭痛があり、くも膜下出血が最も心配である。微笑出血の場合、初期の頭部CTは陰性のことがある。そういった時は診断のため腰椎穿刺を行い、赤血球やキサントクロミーを確認すべきである。キサントクロミーは発症後6時間以上は続かない可能性があるため、赤血球の存在がくも膜下出血を示唆する。また、腰椎穿刺は髄膜炎など他の疾患の除外にも有用で初圧も測ることができる。

②他の選択肢

 単純CTが陰性であれば、造影CTによるマスエフェクトを伴うような病変の同定は意義が乏しい。CTアンギオやベノグラフィーは動脈瘤や静脈洞血栓症の診断に有用であるが、急性期に必要な検査ではない。

 MRAは解離や動脈瘤の除外に有用だが現時点では不適切である。また偶発的に他疾患が見つかっても外科的介入に影響しない。

 MRIによるくも膜下出血の診断は有用性が明らかではなく時間もかかる。

 

POINT 頭部CTでSAHは否定できない

Perry JJ, Spacek A, Forbes M, et al. Is the combination of negative computed tomography result and negative lumbar puncture result sufficient to rule out subarachnoid hemorrhage? Ann Emerg Med. 2008;51(6):707-713. PMID: 18191293

 

Q2

 48歳男性。2日前からのめまいと嘔気。症状は急に始まり、ローラーコースターに乗っているようだと。最もひどい症状が出るのはベッドから起き上がった時と、車の駐車をする時。30-40秒持続し、2回吐いた。発熱、頭痛、難聴、耳鳴、複視、構音障害、脱力、歩行障害はない。5年前にも同様の症状があった。うつ病の既往があり、シタロプラムを飲んでいる。バイタル、神経学的所見は正常。Dix-Hallpike試験をすると20秒後に激しい水平性眼振を認めた。繰り返すと減弱してくる。

 

問 診断は?

A 良性発作性頭位めまい症

B 小脳梗塞

C メニエール病

D 前庭神経炎

 

①めまいの診断

 この患者は良性発作性頭位めまい症(BPPV)である。めまい診療で重要なのは、その原因を回転性めまい、前失神、平衡感覚障害、その他の神経疾患に分類することであり、この患者は回転性めまいである。

 回転性めまいは末梢性と中枢性に分類され、末梢性にはBPPV、前庭神経炎、メニエール病、アミノグリコシド毒性、帯状疱疹ウィルス感染症がある。Dix-Hallpike試験で同様の所見が得られ、2-40秒の潜時の後1分以内の水平性眼振が出れば陽性である。BPPVの診断に頭部画像検査は必要なく、神経学的所見は正常である。

②他の選択肢

 中枢性のめまいは脳幹や小脳の虚血、梗塞、出血で起きる。障害部位によって複視、構音障害、嚥下障害、脱力、しびれ、歩行障害を伴う。Dix-Hallpike試験では潜時なく1分以上持続し眼振は垂直方向である。

 メニエール病の古典的3徴はめまい、難聴、耳鳴である。体位は関係なくこの患者には難聴、耳鳴がない。

 前庭神経炎はウィルス感染に関連し、BPPVよりはるかに長く持続する。典型例では1週間程度だが数ヶ月続く例もある。

 

POINT 小脳梗塞でのDixは陽性となる

Bhattacharyya N, Baugh RF, Orvidas L, et al. Clinical practice guideline: benign paroxysmal positional vertigo. Otolaryngol Head Neck Surg. 2008;139(5)(suppl 4):S47-81. PMID: 18973840

 

Q3

 26歳男性。硬くて滑らかな結節。外傷後数週で出現し、徐々に増大、現在のサイズになった。たまに圧痛があるが、それ以外は無症状。

Figure 50.

(MKSAPより) 

 

問 適切な治療は?

A トリアムシノロン局所注射

B 経口ステロイド

C 抗菌薬外用

D トリアムシノロン外用

 

①ケロイド治療

 ケロイドの適切な治療はトリアムシノロンの局所注射である。その結果、時間をかけて、病変は平になり、症状は軽快する。典型的には数週から数ヶ月の経過で複数回の局所注射を必要とする。大きなものや治療抵抗性のものにはレーザーや放射線治療を考慮する。ケロイドは肥厚性瘢痕の一形態であり、素因のある患者の創部に起こる。良性の増殖性腫瘍であり、創部外にも拡大し自然消退しない。したがって小さくても瘢痕となり、圧痛や痒みを伴う。一般的な肥厚性瘢痕は手術創や外傷部位に起きるが、創部外へは拡大せず2年以内に消退するところがケロイドとは区別される。

②他の選択肢

 ステロイド内服は局所注射に比べて効果が劣り、全身性の副作用が起こりやすい。抗菌薬の外用は感染徴候のない場合不要である。ステロイド外用は病変に浸透しないため極めて効果が薄い。

 

POINT ケロイド治療はステロイド局注

Luba MC, Bangs SA, Mohler AM, Stulberg DL. Common benign skin tumors. Am Fam Physician. 2003;67(4):729-738. PMID: 12613727

 

Q4

 65歳男性。救急外来に6時間前からの腹痛のない血便で受診。既往・内服なし。体温36.6℃、血圧130/78、脈拍96、呼吸数18。腹部所見異常なし。直腸診で外痔核なく、鮮血が付着した。Hb10.4g/dl、WBC6000/μl、Plt38万/μl。

 

問 出血の原因は?

A 大腸癌

B 大腸憩室

C 十二指腸潰瘍

D 虚血性腸炎

 

①血便の原因

 この患者の鮮血便は憩室出血であり、大腸に起こりやすい(75%)。大腸由来の出血の中でも憩室出血は最も多い(33%)。出血は動脈性で憩室の増大によって底にある血管の中膜が薄くなり起こる。基本的に無症状であり、大量出血により、頻脈、低血圧、起立性変化のない限りは下血のみである。大腸内視鏡により、憩室出血の同定、エピネフリンや焼灼による止血、血管拡張のような他疾患の除外が可能である。血管拡張や血管異形成は下部消化管出血の11%にのぼるという統計もある。主栄養血管より分岐した粘膜下血管の拡張であり痛みはない。鉄欠乏性貧血や上部消化管出血の存在は区別が難しい。

②他の選択肢

 大腸癌が活動性の出血を起こすことは稀。慢性的な出血があり潜血であることが多い。

 黒色便やタール便は上部消化管出血を示唆し、150-200mlの出血が予想される。上部消化管出血でも下血をきたしうるが、少なくとも1000mlの出血が必要で、血行動態の変化を伴う。

 虚血性腸炎は下部消化管出血の1-19%を占め、腸間膜血流の低下が原因である。低灌流は脾弯曲やS状結腸直腸の境界域のような分水嶺領域に起こりやすく、患者は初発でめまいがあるかもしれない。腹部に突然発症の疝痛があり、一時的な鮮血便を伴う。

 

POINT 腹痛のない血便には直腸診

Wilkins T, Baird C, Pearson AN, Schade RR. Diverticular bleeding. Am Fam Physician. 2009;80(9):977-983. PMID: 19873964