栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:RCT 夜間の筋クランプに対する酸化マグネシウムの効果 

夜間の筋クランプに対する酸化マグネシウムの効果
Effect of Magnesium Oxide Supplementation on Nocturnal Leg Cramps

JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2016.9261 Published online February 20, 2017.

【背景】
 マグネシウム製剤は、夜間の筋クランプ(NLC:Nocturnal leg cramps)の予防に広く用いられているが、有効性を証明するエビデンスがない。
【目的】
 酸化マグネシウムがプラセボと比較してNLCを予防できるか
【デザイン・セッティング・患者】
 北イスラエルで2013年2月から10月まで行われたランダム化二重盲検プラセボ比較試験で、2週間の組み入れスクリーニング期間後に、4週間の治療期間を設けた。
 ITT解析が2014年3月22から2016年4月17日まで行われた。対象は市民ボランティアの中でNLCを経験した方を用いており、21歳以上、2週間のスクリーニング期間中に4回以上のNLCが認められた方を対象とした。
【介入】
 酸化マグネシウムカプセル群と見た目が同様のプラセボ群を眠前に4週間経口摂取。
【メインアウトカム】
 プライマリアウトカムは、1週間のNLC回数でスクリーニング期間と治療期間を比較した。
 セカンダリアウトカムは、重症度やNLCの持続時間、QOL、睡眠の質などを評価した。
【結果】
 166人のボランティアの中で72人(43%)が除外された。15人は参加を拒否し、57人が組み入れ基準を満たさなかった。94人は39%が男性で平均年齢 64.9歳でランダムに酸化マグネシウム群 48人、プラセボ群 46人に割り付けられた。6人がプロトコール通りに完遂できなかった(各3人)。
 NLCの平均頻度はマグネシウム群で-3.41回/週(7.84→4.44)、プラセボ群で -3.03回/週(8.51→5.48)だった。両群の差は0.38回でITT解析では有意差なしだった。重症度や持続期間、QOL、睡眠の質に差は無かった。

f:id:tyabu7973:20170226223933j:plain(本文より引用)

【結論】
 高齢のNLC患者では経口酸化マグネシウムはプラセボに比べて優位性は認めなかった。1週間のNLCの平均減少回数は、スクリーニング期から治療時期にかけて有意に減少しているが、これは恐らくプラセボ効果であろう。

【批判的吟味】
・論文のPICOは何か?
P:健常ボランティア94名、平均64.9歳
I:酸化マグネシウム
C:プラセボ
O:NLC回数/週
T:ランダム化比較試験
・ランダム割付けされているか?
 ランダム割付けで、中央割付け(website Randomization.com)となっている
・ランダム割付けが隠蔽化concealmentされているか?
 隠蔽化されている
・Baselineは同等か? 
 差がある(酸化マグネシウム群が、年齢若い、高血圧少ない、糖尿病多い、過去の使用歴)
・全ての患者の転帰がOutcomeに反映されているか?
 ITT解析である 
・マスキング(盲検化)されているか? マスキング(盲検化)されているのは誰か?
 二重盲検(患者・医療者)
症例数は十分か?
 不十分とlimitationで触れられている
・その他介入期間も短く、ボランティアで自分の意思で組み入れられており、選択バイアスはあります。
・また、そもそもベースラインのNLCが高すぎる気がします。しかも、プラセボ効果がありすぎる気がしますが・・・

【個人的な意見】
 この領域の基礎知識が不十分ではあるんですが、Introductionを見るとNLCは成人の60%に認められる様です。日本では芍薬甘草湯とかがよく使われています。重度で回数が多くなると、不眠の原因になったり、QOLを下げたりします。リスクとして、血液透析・電解質異常・神経/内分泌/代謝/血管・薬物関連などが指摘されている様です。
 エビデンスのある薬剤としてはキニーネがありますが、FDAは副作用リスクが高いことから、使用についての警告を発しています。今回検証されたマグネシウム製剤は、ラテンアメリカやヨーロッパで使用されているようですが、効果が得られているのは妊婦に対するRCTの結果なんだそうです。
 芍薬甘草湯のエビデンスは日本発のものはいくつかある模様ですね。日本東洋医学雑誌,2003;54:536-8(http://www.jsom.or.jp/medical/ebm/er/pdf/990008.pdf

✓ 高齢NLC患者では経口酸化マグネシウムはプラセボに比べて優位性を認めなかった