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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:糖尿病患者の皮膚/COPD患者の手術/肛門管癌の治療/HIV患者の肺病変

最近1時間で4問から5問へとスピードアップしました。N先生がいなくなると辛くなるか。そしてタイトルが長い。

 

Q1

 34歳男性。頚部と腋窩の皮膚が分厚くなってきた。皮膚の変化は左右非対称で、美容的に心配になってきた。2型糖尿病、高血圧、脂質異常症の既往があり、メトホルミン、リシノプリル、シムバスタチン内服中。発熱なし。血圧132/78、BMI32。爪の変化なし。

Figure 15.

(MKSAPより)

 

問 診断は?

A 黒色表

B 接触性皮膚炎

C 逆乾癬

D 白癬

 

①糖尿病患者の皮膚

 この患者は黒色表皮症であり、典型例はビロード様で色素沈着があり、皮膚が肥厚する。腋窩のような間擦部位に起こりやすく、頚部にも好発する。スキンタグで知られる線維上皮性ポリープに発展することもしばしばである。悪性腫瘍と関連のない黒色表皮症はインスリン抵抗性と関連している。減量と高インスリン血症の管理が必要である。

②他の選択肢

 接触性皮膚炎はほとんど全例で掻痒感を伴う。また、典型的には境界明瞭な発赤があり、刺激物が接触した部位に一致している。

 逆乾癬は非典型的な部位に起こり、古典的な肘や膝より間擦部位に起こりやすい。病変は生々しく湿潤し皮膚のひだに限局している。

 この患者は糖尿病があり、白癬の高リスクであるが、白癬は一般的に発赤、かさかさした円形の斑を呈する。

 

POINT 糖尿病の黒い皮膚は黒色表皮症

Ahmed I, Goldstein B. Diabetes mellitus. Clin Dermatol. 2006;24:237-246. PMID: 16828404

 

Q2

 60歳男性。鼠径ヘルニアで翌週手術を控えている。中等度COPDの既往があり、咳嗽、喀痰、呼吸困難感が3日前から増悪している。6ヶ月前に急性増悪があり、その時から禁煙している。毎日のチオトロピウムとアルブテロールを1日4回吸入している。体温37.2℃。血圧128/78。脈拍96。呼吸数20。聴診で呼気wheezes聴取。SpO2 92%(RA)。FEV1 55%、FEV1/FVC 60%。

 

問 急性増悪の治療後のマネージメントは?

A 手術延期

B 呼吸機能検査再検

C ロフルミラスト開始

D 介入不要

 

①COPD患者の手術

 手術を延期し急性増悪の治療をすべきである。治療には気管支拡張薬や抗コリン薬の常用が望ましい。重症度に応じてコルチコステロイドや抗菌薬も追加する。術前に症状のあるCOPD急性増悪の患者は術後合併症が予想されるため、状態がベースラインに戻るまで手術を延期する。感染症、無気肺、気道閉塞を契機とした急性呼吸不全に陥りかねないため、術前の状態を最適化しておく。胸腹部の手術は特に術後肺合併症のリスクを上げる。喫煙、年齢、不健康、COPDの重症度は危険因子である。早期離床、深呼吸、スパイロメトリー訓練はリスクを下げる。

②他の選択肢

 4ヶ月前に呼吸機能は検査しCOPDの診断はされているため繰り返す意味はない。

 ロフルミラストに代表されるPDE4阻害薬は重症例や増悪を繰り返す例で慢性期管理に使用されるが、急性期には用いない。

 

POINT 手術は増悪のコントロール後

Global Strategy for Diagnosis, Management, and Prevention of COPD. December 2011. Available at: www.goldcopd.org. Accessed July 27, 2012.

 

Q3

 59歳男性、4ヶ月前からの肛門と直腸の疼痛と出血で来院。HIV陽性患者であり、抗レトロウイルス薬と疼痛に対してイブプロフェン内服中。体温37.4 °C、血圧120/75 mmHg、脈拍68/分、呼吸12/分、柔らかい3cm大の腫瘤を肛門に触知、腹部は膨隆や臓器腫大なし。直腸鏡はその他の腫瘤なし、生検では扁平上皮癌、超音波では3.2cmの腫瘤であり、周囲のリンパ節腫大なし、胸腹骨盤CTでは、腫大リンパ節や転移もなし。

 

問 適切な治療は?

A 放射線治療

B 放射線治療後手術

C 化学放射線療法

D 化学放射線療法後手術

 

①肛門管癌の治療

 最適な治療は化学放射線療法である。この患者は局所浸潤型の肛門管癌で、大きさ2 〜5 cm、転移したリンパ節なく、T2N0M0 (stage II) である。治療には5-FUとミトマイシンの併用が望ましい。ランダム化試験では放射線療法単独より化学放射線療法が成績がよく、5-FUとミトマイシンの併用が5-FUより成績がよいが、毒性も高く出る。

②他の選択肢

 術療法のみだと広いマージンが必要であり、腹会陰式直腸切断術となるため、括約筋切除を行い永久ストーマとなる。1960sまでは手術が標準治療であったが、最近は、手術なしでもstages I, II, IIIは潜在的に化学放射線療法で治癒できる可能性がある。従って再発や局所進展がない限り手術は温存する。一方直腸癌は腺癌であり外科的切除が必要となる。

 

POINT 肛門管癌はまず放射線化学療法

Meyer J, Willett C, Czito B. Current and emerging treatment strategies for anal cancer. Curr Oncol Rep. 2010;12(3):168-174. PMID: 20425076

 

Q4

 28歳男性。3週間前からの労作時の呼吸困難や乾性咳嗽、胸膜痛と発熱で来院。以前は不特定多数の性交渉の相手がおり、ここ3年は特定の男性一人しかいない。体温38.6 °C、血圧110/66 mm Hg、脈拍112/分、呼吸24/分。口腔内に白苔があり、両側肺でラ音を聴取。血液ガスでは、pH 7.48、PCO2 30 mmHg、PO2 62 mmHg、HIV検査陽性。喀痰培養では、好中球は少なく、偽菌糸や複数の細菌が陽性であった。胸部レントゲンでは、両側浸潤影を認めた。

 

問 診断は?

A サイトメガロウィルス肺炎

B MAC感染症

C ニューモシスチス肺炎

D 肺カンジダ症

 

①HIV患者の肺病変

 診断はニューモシスチス肺炎(PCP)である。危険因子のある患者でのHIV迅速検査陽性はウェスタンブロットを待つべきではあるが、かなりHIV感染症らしい。亜急性の経過の咳嗽、呼吸困難感とレントゲンのびまん性間質影はAIDS患者のPCPに典型的である。予防内服をしていない患者にとっては最も起こりやすい日和見感染症である。気管支肺胞洗浄液の特殊な染色で診断を確定する。この患者はpO2が70を切っており、コルチコステロイドとST合剤を併用する。

②他の選択肢

 AIDS患者ではCMVによる肺炎は一般的ではなく、CD4細胞が50未満となれば網膜炎や腸炎を起こしうる。
 MACはAIDS患者で発熱、体重減少、盗汗の症状があるCD4細胞50未満となれば、肺以外の肝臓、脾臓、リンパ節に病変をきたす。
 カンジダ肺炎は免疫抑制状態の患者でも稀である。口腔内に白苔があるこの患者では、肺ではなく口腔内にカンジダがいる証拠である。

 

POINT PCPは最もコモンな日和見感染症

Carmona EM, Limper AH. Update on the diagnosis and treatment of Pneumocystis pneumonia. Ther Adv Respir Dis. 2011;5(1):41-59. PMID: 20736243