読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:VZV予防/ポリポーシス/高山病/胃術後

年度末感出てきてますね。花粉症が辛いですね。今回はたかやまびょうがありますよ(笑) 

 

Q1

 20歳男性。約2日前にVZV感染症になった親戚と会った。最近、急性骨髄性白血病の診断を受け、シタラビン、ダウノルビシンを標準量で1サイクル終了した。幼児期の水痘感染は記憶になくワクチンも打ったことがない。体温正常、血圧110/70、脈拍70、呼吸数12。皮疹なし。白血球600/μl、好中球200/μl。水痘のウィルス抗体は陰性。

 

問 適切なマネージメントは?

A アシクロビル

B 水痘ワクチン

C 水痘免疫グロブリン

D 介入不要

 

①免疫不全者のVZV予防

 この患者は水痘免疫グロブリン(VZIG)を打つべきである。極度の免疫不全であり、水痘ウィルス感染による合併症の高リスクである。しかし、VZIGは製造中止になっており、治験で水痘免疫グロブリン産生物(VariZIG)のみが使用可能である。VZIGが入手困難の際は、CDCは免疫グロブリンの投与を提案している。疑いのある免疫不全者には曝露から96時間以内にVZIGを投与すべきである。打った後は曝露から28日間、免疫がつくまで経過観察すべきである。

②他の選択肢

 免疫不全者の水痘ウィルス感染の曝露後予防的治療はあまり研究されていない。活動性の感染があれば治療すべきである。

 水痘ワクチンは生ワクチンであり免疫不全者には禁忌である。しかし罹患率減少に大いに効果があるため、白血病の寛解期など時期を選んで投与される。

 免疫不全者では水痘曝露により罹患率、死亡率共に上昇するため何もしないという選択肢は不適切である。

 

POINT 免疫不全者の水痘曝露後にはVZIG

Fisher JP, Bate J, Hambleton S. Preventing varicella in children with malignancies: what is the evidence? Curr Opin Infect Dis. 2011;24(3):203-211. PMID: 21455062

 

Q2

 38歳女性。12ヶ月前からの胸焼けと間欠的な嚥下困難感。付随する嘔気、腹痛、体重減少なし。既往歴は明らかではなく、エソメプラゾールを内服している。身体所見は腹部含め問題なく、BMI 23。内視鏡では食道下部にGERDが原因と思われる滑らかな表面の短い狭窄があり、胃には数百個の2-4mmのポリープが見られた。生検では異形成はなく胃底腺ポリープであった。

 

問 適切なマネージメントは?

A PPI中止3か月後の内視鏡再検

B APC遺伝子検査

C 下部消化管内視鏡

D ポリペクトミー

 

①ポリポーシスのマネージメント

 胃底腺ポリープは胃のポリープの半数を占め、上部消化管内視鏡で1-2%に見られる。典型的には多発し、小さく(<1cm)、透明感のある見た目で、胃体部、胃底部にできやすい。孤発性、PPI関連、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)症候群として起こることもある。前者2つは悪性であることはほとんどなく、後者でも稀である。孤発性は他の2つと比較して少数(<10個)である。ガイドラインでは40歳以下の多発性ポリープ(異形成の有無によらず)を見た場合、下部消化管内視鏡を推奨している。

②他の選択肢

 PPIを中止すると胃底腺ポリープは減るかもしれないが、このアプローチには諸説あり、3ヶ月以上の観察を必要かもしれない。この患者はGERDの症状があり、中止しづらい。

 APC遺伝子はFAPのスクリーニングや高リスク患者の鑑別に有用であるが、結果が陽性であれ陰性であれ、下部消化管内視鏡での表現型精査を行うべきである。

 悪性のリスクは低く、ポリペクトミーは推奨されず、またしばしば(全てを除去するのは)不可能であり、胃底腺ポリープは消退しない。1㎝以上の場合は考慮する。

 

POINT 若年のポリポーシスは内視鏡精査

Goddard AF, Badreldin R, Pritchard DM, Walker MM, Warren B; British Society of Gastroenterology. The management of gastric polyps. Gut. 2010;59(9):1270-1276. PMID: 20675692

 

Q3

 32歳女性。仕事関連のスキー旅行で標高3100mまで登るため高山病の予防がしたい。昨年も同様の旅行があり、2日間の呼吸困難感、頭痛、倦怠感、不眠を経験した。2日目までスキーはできず、4日目に改善した。既往歴なし。体温37.6、血圧126/74、脈拍82、呼吸数16、BMI 27。胸部は診察上異常なし。SpO2 97%(RA)。

 

問 予防内服薬は?

A アセタゾラミド

B デキサメタゾン

C フロセミド

D ゾルピデム

 

①高山病予防

 この患者は急性高山病(AMS)であり、アセタゾラミドが適切な予防薬である。鍵となる症状は頭痛、嘔気、倦怠感、不眠(周期性の高山性呼吸(HAPB)と呼吸状態変化による)である。最も効果的な対処はゆっくり登ることである。難しい場合は、アセタゾラミドを登山の24-48時間前に開始するとAMS、HAPBの予防になる。アセタゾラミドは様々な機序で作用し、呼吸を安定化させ、酸素化を改善し、水分貯留を緩和し、緩やかな代謝性アシドーシスを引き起こす。その全てが慣れを促進し、高度による急性症状を和らげる。高山病の既往があったり、心肺疾患がある患者では予防内服すべきである。

②他の選択肢

 デキサメタゾンは罹患した高山病や脳浮腫では治療の選択肢となる。しかし副作用の観点から予防では使わない。

 HAPB予防としてのアセタゾラミドの効果は利尿作用とは関係なく、フロセミドでは予防できない。

 ゾルピデムは旅行に伴う不眠には効くがHAPBは予防できない。

 

POINT 高山病予防はアセタゾラミド

Teppema LJ, Balanos GM, Steinback CD, et al. Effects of acetazolamide on ventilatory, cerebrovascular, and pulmonary vascular responses to hypoxia. Am J Respir Crit Care Med. 2007;175(3):277-281. PMID: 17095745

 

Q4

 47歳女性。生命保険の審査のため採血をした。治療中の疾患はなく、10年前に肥満手術で胃をRoux-en-Y法でバイパスし体重は減少した。その後7年以上内科にはかかっていない。血液疾患や大腸癌の家族歴はない。血圧124/80、脈拍78、BMI 24。胸部、神経所見異常なく甲状腺腫大もない。手術痕はきれい。便潜血陰性。

Laboratory studies:

Leukocyte count

4200/µL (4.2 × 109/L)

Hemoglobin

10.9 g/dL (109 g/L)

Mean corpuscular volume

107 fL

Platelet count

122,000/µL (122 × 109/L)

Reticulocyte count

1.5%

 

問 診断のための検査は?

A 骨髄生検

B 下部消化管内視鏡

C TSH測定

D ビタミンB12測定

 

①胃術後の貧血

 ビタミンB12を測定すべきである。巨赤芽球性貧血、血小板減少、好中球減少、不適切に低い網状赤血球はビタミンB12欠乏症の血液学的パターンである。ビタミンB12欠乏症はRoux-en-Y法の手術に関連しない合併症の最たるものである。これは胃粘膜から分泌される内因子の欠乏から起こっている。Roux-en-Y法後はビタミンB12をモニターし補充を続けなければならない。補充量は内服では500-1000μg/日、筋注では1000μg/月。最近のガイドラインではビタミンB12の他にフェリチン、葉酸、ビタミンD、カルシウムの測定を推奨しており、最初の2年は年2回、その後は年1回の測定をする。

②他の選択肢

 骨髄生検は比較的侵襲性も高くコストもかかる。説明できない貧血、白血球減少、血小板減少、汎血球減少ではしてもいい。この患者はビタミンB12欠乏症の可能性が高く検査結果も矛盾がないため先にビタミンB12を測定する。

 胃腸症状なく、大腸癌の家族歴もなく、腹部所見に乏しく、便潜血も陰性、血液検査からも他の消化管悪性腫瘍の可能性は低く下部消化管内視鏡は現時点では不適切である。

 甲状腺疾患を疑う所見がない。甲状腺機能低下症は巨赤芽球性貧血を引き起こすが、好中球減少、血小板減少は説明できない。

 

POINT 胃術後はビタミンB12のフォロー

Buchwald H, Ikramuddin S, Dorman RB, Schone JL, Dixon JB. Management of the metabolic/bariatric surgery patient. Am J Med. 2011;124(12):1099-1105. PMID: 22014789