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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

症例:Lancet 84歳男性 膝関節腫脹・疼痛

case report今回はLancet infectious diseaseです。
これも色々勉強になりました。

症例:84歳男性 膝関節腫脹・疼痛

 Lancet Infect Dis 2016; 16: 506

 2012年に、84歳の中国人男性が進行性・慢性経過・非外傷性の左膝関節腫張・疼痛を主訴に受診された。既往歴は1951年に中国で肺結核として治療され、2006年に関節リウマチと診断された。関節痛は、DMARDsやステロイド関節注射にも関わらず悪化した。TNFα阻害薬は結核の再活性化が危惧され使用されなかった。
 身体診察では、有痛性歩行、膝関節液貯留、こわばり、関節裂隙の圧痛を認めた。検査結果では、ESR 88mm/時、CRP 20.5mg/dL。X線写真は膝3分画部分の重度の変形性関節炎を認め、2012年8月には人口膝関節置換術が施行された。

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(本文より引用)

滑膜炎が認められ、病理検査では肉芽腫性炎症が認められた。

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 (本文より引用)

滑膜組織培養およびPCR検査は陰性だった。膝関節の症状は当初改善したが、膝関節の人工骨頭置換術後5か月目に、膝切開部から浸出液が出るようになった。

質問. 診断は

 

回答:結核性膝人工関節炎

経過:

 膝関節内洗浄およびデブリドマンが行われ、ポリエチレン製の脛骨ドレーンチューブが留置された。初期の滑液組織液培養は陰性だったが、滑膜組織および関節液由来の培養検査で結核菌が培養された。喀痰培養は陰性で肺結核は否定的だった。2013年2月に、リファンピシン・イソニアジド・ピラジナミド・エタンブトールなどの抗結核薬治療を開始した。2段階での切除・再建による関節形成術が推奨されたが、患者は手術を拒否し、インプラント温存戦略が行われた。
 2014年2月には12ヶ月間の抗結核薬治療を完了した。長期抑制療法目的にリファンピシンとイソニアジドの治療を継続した。結核性人工関節感染症の初期診断から2年後のフォローアップでは、創部は臨床症状無く治癒しており、膝は0-95°で疼痛のない可動域を達成していた。

解説:
 結核性関節炎は、結核患者の1-5%を占めている。結核性人工関節感染の最適治療のためのデータは限られている。本症例では、結核菌の稀な再活性化の結果として、関節置換手術後に肺外結核を引き起こした。抗結核療法の迅速な開始によって人工物保持を可能に出来るかもしれないが、抑制療法の継続が必要になるかもしれない。
 国際化と免疫調節療法の増加、人工関節置換術が増加している現在、本例の様な、関節培養陰性の人工関節感染症を経験した場合には、鑑別診断の早期に結核を考える必要性を示している。