栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:Retrocohort 医師の医療費使用のばらつきと患者アウトカム

医師の医療費使用のばらつきと患者アウトカム
Variation in Physician Spending and Association With Patient Outcomes

JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2017.0059 Published online March 13, 2017.

【背景】
 医療費使用が地域や病院毎に異なっていることはよく知られているが、臨床的な決定は究極的には医師が行っている。しかし、医師毎に医療費使用がどの程度異なるかについてはよく分かっていない。
【目的】
 医師毎の医療費使用のバリエーションを調査し患者アウトカムとの関連を評価する
【デザイン・セッティング・患者】
 後ろ向きデータ解析では、2011年1月-2014年12月末に、非待機的理由で内科疾患で入院し、総合内科医に治療された65歳以上のメディケア受給者のデータから20%ランダム抽出が行われた。メディケアPartB受給者を病院・診療医・患者による支出の変動を定量化した。また、医師の支出と患者アウトカムとの関連を調査し、患者・医師の特徴や病院固有の効果を調整した。同一医療機関内の別の医師を比較した。
 プライマリ分析は、病院総合医に焦点を絞り、医師の勤務スケジュールに基づいて、病院内で擬似ランダム化された。
 セカンダリ解析は、一般的な内科医全体で行われ、患者の重症度が医師の見積もりに影響しないように、2011-2012に医師の脂質水準を計算し、2013-2014年に患者の転帰を調査した。
【曝露】 
 2011-2012年のメディケアPart Bの医師毎調整医療費使用データ
【メインアウトカム】
 患者の30日死亡と2013-2014年の再入院率
【結果】
 医師間のばらつきの程度を評価するために、病院総合医セッティングでは、2837の急性期病院で21万9963人の医師によって治療された48万5016人のデータが解析された。また、一般内科医セッティングでは、3195施設で医師5万79人による治療を受けた83万9512人が解析された。

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(本文より引用)
 病院内の医師間のばらつきは病院間のばらつきよりも大きかった(病院総合医では、医師毎8.4%、病院毎 7.0%、一般内科医では、医師毎 10.5%、病院毎 6.2%)。医師毎の支出増加では、医師支出自体は30日死亡(OR 1.00:0.98-1.01)や再入院率(OR 1.00:0.99-1.01)と関連しなかった。これは病院総合医でも一般医でも同様だった。

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(本文より引用)
【結論】
 医療費使用は、施設毎の違いというよりは医師毎の違いが大きいことが明らかになった。医療費を多く使用している医師と入院患者の良いアウトカムとは関連しなかった。今回の結果から、病院だけで無く医師をターゲットにした無駄の多い診療行為への介入がより効果的であるかもしれないことが示唆された。

【批判的吟味】
・論文のPECOは
P:メディケア受給者で入院した65歳以上の患者
E/C:医療費を使用する医師毎に4群
O:①30日死亡、②再入院率
T:後ろ向き観察研究
・あくまで観察研究ではありますが、非常に興味深い結果です。米国でメディケア受給者という時点で、この結果をそのまま外挿して良いかといわれれば否です。
・医療費をかけてもアウトカムが変わらなかったということが、だから医療費かけてなくてよいのでは?という方向に話が行っていますが、医療費をかけなくてはいけない状況だったとも取れますし、それでアウトカム変わらないなら良かったねと思います。
・医師/患者の背景をザックリ眺めると、心不全の頻度は有意差がついて異なっていましたが、その他の疾患は概ね均等に割り付けられていました。
・そもそも医療費が何に使われたかの中身はよく分からないので、多い=無駄とも取れないかもしれません。
・今回は一般内科医ではなく病院総合医(Hospitalist)を対象にしていますが、これは医師によって重症度のばらつきが少ないのでは?という過程のもとで、患者要因によるアウトカムへの影響を最小限にしようとしている模様です。
【個人的な意見】
 色々コメントしてみましたが、この手の研究は大好きです。こういったものは本当は簡単に手に入って一年に一度自分自身に他者との比較という形でフィードバックがかかると抑止力になってくると思います。
 「ああ、おれカルバペネム使いすぎだな」とか、「造影CTやり過ぎ」とかね。こういった方面に興味のある事務さんと是非一緒に仕事したいなあ。

✓ 医療費使用は、施設毎の違いというよりは医師毎の違いが大きい