栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

症例:BMJ 82歳男性 症状なし

case report今回もBMJから。
あるあるなシチュエーション。何で画像とった?みたいな。

症例:82歳男性 症状なし

 BMJ 2017;356:j1367 doi: 10.1136/bmj.j1367

 無症状の82歳男性が外来クリニックで胸部MRAを撮像したところ、下記の様な画像結果だった。

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(本文より引用)

質問. 診断及びマネージメントは

 

回答:
①診断:慢性大動脈解離(過去に修復)
②マネージメント:厳密な血圧管理+サーベイランス(手術は不要)

経過:

 右肺の葉間胸水に加えて、左下肺や右房近辺にも胸水を認めている。結果として、この胸部X線は、うっ血性心不全にMycoplasma pneumoniaeの肺炎による右下葉浸潤影を合併していた。診断は血液検査所見から。

解説:
 一見すると偽腔内血栓を伴う拡張した下行大動脈解離所見は緊急手術が必要ではないか?と危惧される。しかし、一方でその判断に反証するいくつかの所見もある。
 まず、患者は無症候性であり、急性大動脈解離が無症候であることは非常に稀である。また、MRAは安定した状況では診断の助けになることもあるが、一般的には緊急セッティングでは用いられない。実際、本患者は8年前に急性のtype Aの急性大動脈解離の既往があり、緊急大動脈修復および大動脈弁置換術を施行されている。
 大動脈弁の金属弁も実はよく観察すると撮像されている。MRIは高齢で腎機能も悪いため、非造影で施行した。追加検査では、偽腔内の血栓を伴う下行大動脈の解離は古典的な「テニスボールサイン」だった(Fig.2B)。
 血栓は壁内血腫と区別することはかなり難しく、後者は一般的には血腫で満たされた厚い大動脈壁を有するなめらかな内膜層が特徴である。本症例では、輪郭不整は低血流による内腔の血栓形成と思われる。

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(本文より引用)

 画像所見はかなり驚かされるが、この所見は数年にわたって変化が認められなかった。2012年に最大直径は62mm、2016年は63mmだった。再手術は高齢者にかなりリスクが高く、状態が安定していたため、厳格な血圧コントロールと画像サーベイランスによる保存的療法が選択された。

 リスクは残存していることは認識しておくべきである。大動脈解離は通常急性に発症し、緊急の外科的手術が必要になる。ただ、慢性期フォローを必要とする状態になることもあり、血圧管理と画像フォローが重要になる。