栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:CHDの二次予防/癌家系/雷鳴頭痛

新年度一発目!プチ異動に伴いビデオ通話で問題解いてます。マウス握ってないと落ち着かないな。癌の家族歴のある方は要注意ですね。ではどうぞ。

 

Q1

 68歳女性の定期受診。虚血性心疾患、高血圧の既往があり、5年前にICDを留置した。耐容能は維持されており、制限なしに3ブロック歩ける。内服はリシノプリル、カルベジロール、アスピリン、プラバスタチン。発熱なし。血圧137/70、脈拍82、呼吸数18、BMI 23。身体所見は正常範囲。

Laboratory studies:

Hemoglobin A1c

6.9%

Total cholesterol

115 mg/dL (2.98 mmol/L)

LDL cholesterol

53 mg/dL (1.37 mmol/L)

HDL cholesterol

40 mg/dL (1.04 mmol/L)

Triglycerides

112 mg/dL (1.27 mmol/L)

 

問 心血管イベントの予防に最も重要な指標は?

A 血圧

B HbA1c

C LDLコレステロール

D トリグリセリド

 

①冠動脈疾患の二次予防

 心不全と高血圧のある患者で積極的に血圧を下げることは心血管イベントの減少につながる。AHAは冠動脈疾患や類縁疾患(頚動脈、末梢動脈疾患、腹部大動脈瘤)では血圧130/80を目標、EFが40%を切ったら120/80を目標としている。

②他の選択肢

 厳密な血糖コントロールは大血管イベントのアウトカムを変えない。ほとんどの患者で7%未満を目標としており、この患者では血圧の方が優先度が高い。

 心血管イベントの高リスク患者ではLDLコレステロールを100未満に下げる積極的治療が望まれ、より高いリスクがあれば70未満とする。最もリスクが高いのは、心血管疾患の既往があり複数の血管リスク(特に糖尿病)があったり、喫煙等のリスクがコントロールされていなかったり、メタボリック症候群や急性冠症候群の既往がある場合である。

 トリグリセリドは冠動脈疾患の予測因子であるが、まず是正すべきはLDLとHDLである。非HDLコレステロールが上昇している場合のみ200-499mg/dl程度に下げることが推奨される。非HDLコレステロールの目標はLDL+30程度である。

 

POINT 血管イベントの目標血圧は130/80

Rosendorff C, Black HR, Cannon CP, et al; American Heart Association Council for High Blood Pressure Research; American Heart Association Council on Clinical Cardiology; American Heart Association Council on Epidemiology and Prevention. Treatment of hypertension in the prevention and management of ischemic heart disease: a scientific statement from the American Heart Association Council for High Blood Pressure Research and the Councils on Clinical Cardiology and Epidemiology and Prevention [erratum in Circulation. 2007;116(5):e121]. Circulation. 2007;115(21):2761-2788. PMID: 17502569

 

Q2

 31歳女性。6ヶ月前から左乳房に触知可能なマス。未経産。アシュケナジー系ユダヤ人。既往なし。母は養子。父は72歳で前立腺癌の既往がある。伯母は48歳の時卵巣癌と診断。他の伯母は49歳で乳癌。父方の祖母は60歳の時乳癌の合併症で亡くなった。左乳房に4㎝の腫瘤を触れ、腋窩に1㎝のリンパ節を触れる。両方から生検したところ、中等度分化型のエストロゲン受容体陽性、プロゲステロン受容体陽性、HER2陰性の侵襲性乳管癌であった。CT、骨シンチでは転移巣は見られなかった。心機能は異常なし。術前化学療法の後手術の予定である。妊孕性に関してはカウンセリングが行われた。

 

問 手術の方針決定に最も有用なのは?

A カウンセリングと遺伝子検査

B ゲノミックプロファイルアッセイ

C PET

D 腫瘍マーカー

 

①乳癌の遺伝子検査適応

 カウンセリングと遺伝子検査が最も有用である。患者は若年で診断を受けており、父方の親戚に乳癌と卵巣癌の家族歴があり、アシュケナジー系ユダヤ人である。術前に乳癌の女性に多いBRCA1かBRCA2の遺伝子変異を調べるべきである。遺伝子変異が陽性であれば新たな原発性乳癌や卵巣癌発症のリスクが上がる。患者には二つの選択肢があり、一つは乳房温存手術を受け、その後密な定期検査を行うことであり、もう一つは両側乳房・卵管卵巣摘出を行い定期検査を不要とすることである。前者を選ぶと定期的に乳房はMRIとマンモグラフィーを、卵巣に関しては、RCTはないがCA125と経膣超音波を実施する。両側乳房切除は新たな乳癌発症を90%以上減らし、卵管卵巣摘出は乳癌を50%、卵巣癌を90%以上減らす。局所手術でも全身への転移には影響しない。

②他の選択肢

 ゲノミックプロファイルアッセイはリンパ節転移がなくホルモン受容体陽性の乳癌で再発リスクとアジュバント療法のメリットを知るために有用である。手術方針には影響しない。

 PETや腫瘍マーカーは転移精査に有用で集学的治療のメリットを知る上で役に立つ。

 

POINT 癌家系では遺伝子検査を考慮

Tirona MT, Sehgal R, Ballester O. Prevention of breast cancer (Part II): risk reduction strategies. Cancer Invest. 2010;28(10):1070-1077. PMID: 20932221

 

Q3

 32歳女性。第3子を合併症なく出産した翌日、頭部全体の爆発的な痛みを自覚。妊娠中に最初の頭痛が90分持続し、後遺症なく軽快した。翌朝頭痛で目が覚め、夕方3回目の頭痛があった。片頭痛の既往はあるが、今回は性状が違うと言う。内服はビタミン、鉄剤。体温37.5、血圧112/62、脈拍70、呼吸数14。神経所見含め身体所見で特記所見なし。頭部造影CTは異常なし。

Cerebrospinal fluid:

Erythrocytes

12/µL (12 × 106/L)

Leukocytes

2/µL (2 × 106/L)

Glucose

60 mg/dL (3.3 mmol/L)

Protein

40 mg/dL (400 mg/L)

Pressure (opening)

Normal

 

問 次にすべきことは?

A 頭部MRI

B 血管造影

C インドメタシン

D スマトリプタン

 

①雷鳴頭痛

 患者の雷鳴頭痛に対し血管造影が必要である。CTアンギオやMRAは従来の血管造影と比べ非侵襲的で有用性が高い。雷鳴頭痛とは60秒以内に頂点に達する爆発的な頭痛である。すべての雷鳴頭痛はくも膜下出血に代表される緊急疾患の精査をすぐに行う。30-80%には基礎疾患としての血管障害が発見される。この患者は再発性の頭痛であり、一次性と二次性を両方考える。可逆性脳血管攣縮症候群は繰り返す雷鳴頭痛の原因であり、局所的な脳血管の攣縮が起きる。数日から数週持続するバリアントがあり、血管奇形や臨床所見がないことが多い。画像や髄液所見はくも膜下出血を示唆せず、血管造影で局所的な血管攣縮を認める。妊娠中や産褥期に起こることがある。

②他の選択肢

 繰り返す雷鳴頭痛では脳実質より血管構造を調べるべきでありMRIより血管造影が必要である。

 インドメタシンは咳嗽・労作・性行為に伴って起きるような一次性頭痛には有効だが、まず二次性を否定すべきである。

 スマトリプタンは片頭痛発作に有効だが、原因不明の場合は推奨されない。

 

POINT 雷鳴頭痛の精査は血管>実質

Ducros A, Bousser MG. Reversible cerebral vasoconstriction syndrome. Pract Neurol. 2009;9(5):256-267. PMID: 19762885