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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:若年のCOPD/非アルコール性肝障害/排尿障害

急に暖かくなりました。今年は3問ペースになりそうです。よろしくお願いします。

 

Q1

 38歳男性。1年前からの咳嗽と粘性痰。6ヶ月前から徐々に呼吸困難感が増悪。12パックイヤーの喫煙者で、喘息、アレルギー、皮膚疾患、肝疾患の既往はない。バイタル正常範囲。聴診で両側呼吸音減弱。wheezeなし。採血では血算、生化学で異常なし。SpO2 97%(RA)。胸部CTでは肺底部に気管支拡張を伴わない輝度上昇あり。呼吸機能検査ではFEV1 53%、FEV1/FVC 64%、DLCO 67%。気管支拡張薬による改善は認めなかった。

 

問 次の一手は?

A α1アンチトリプシン測定

B ステロイド吸入

C 汗のクロール検査

D α1アンチトリプシンアリルに対するZとSのゲノタイピング

 

①若年のCOPD

 適切なアプローチはα1アンチトリプシン(AAT)測定である。この患者の症状とスパイロメトリーの結果はCOPDを示唆する。若年でありAAT欠損症が疑われる。AATは蛋白分解酵素であり、好中球エラスターゼを中和する。欠損すると肺に大量の好中球エラスターゼが集積しエラスチンを破壊する。その結果、若年でも閉塞性障害が起こり、典型的には肺底部優位の肺気腫となる。一部の患者は皮膚や肝臓に異常が出る。特異的な治療のためには疑わしい患者でAAT測定が必要である。45歳未満で閉塞性障害、非喫煙者の肺気腫、肺底部優位の肺疾患、慢性の肝疾患の場合は考慮すべきである。

②他の選択肢

 吸入ステロイドは長時間作用型の気管支拡張薬に加えて使用することはあるが、どのステージのCOPDにも単独で使うことはない。

 汗のクロール測定は嚢胞性線維症の診断に有用である。気管支拡張と膿性痰はこの疾患の特徴である。この患者はCTで気管支拡張がなく膿性痰もない。

 ゲノタイピングは診断がついてから行う。

 

POINT AAT欠損は肺、肝、皮膚を見よ

Silverman EK, Sandhaus RA. Clinical practice. Alpha1-antitrypsin deficiency. N Engl J Med. 2009;360(26):2749-2757. PMID: 19553648

 

Q2

 48歳男性。肝機能のフォローのため受診。無症状。6年前から2型糖尿病、脂質異常症、高血圧。内服はメトホルミン、シムバスタチン、リシノプリル。飲酒はしない。体温37℃、血圧130/74、脈拍82、呼吸数14、BMI 32。軽度肝腫大、腸蠕動音亢進あり。腹部超音波では脂肪変性を伴う肝臓の輝度上昇。形態的な異常はない。

Laboratory studies:

Alkaline phosphatase

90 units/L

Alanine aminotransferase

120 units/L

Aspartate aminotransferase

85 units/L

Total bilirubin

1.1 mg/dL (18.8 µmol/L)

LDL cholesterol

100 mg/dL (2.59 mmol/L)

Hemoglobin A1c

7.2%

Iron

75 µg/dL (13 µmol/L)

Total iron-binding capacity

300 µg/dL (54 µmol/L)

Hepatitis B surface antigen

Negative

Antibody to hepatitis B surface antigen

Positive

Hepatitis C virus antibody

Negative

 

問 減量に加えてすべきアプローチは

A シムバスタチン中止

B エンテカビル開始

C 瀉血

D 肝機能フォロー

 

①NASHのマネージメント

 適切なマネージメントは減量と生活習慣改善に加えて肝機能をフォローすることである。NASHの特異的治療はなく背景にある基礎疾患のコントロールが重要である。減量、運動、生活習慣病のコントロールが柱となる。西欧諸国ではC型肝炎、アルコール性肝障害に並ぶ肝障害の原因である。この患者のように脂肪肝に炎症を伴い、肝酵素上昇があればNASHと診断される。メタボリック症候群との関連があり、体重過多の患者が多いが、正常BMIでも起こりうる。肝機能のフォローは減量による効果が出ているか確認する上で重要である。

②他の選択肢

 シムバスタチンは中止すべきではない。スタチンによる肝障害があっても治療のメリットの方が大きい。

 B型肝炎の検査結果はワクチンの影響である。

 鉄の貯留はなくTIBCは45%未満である瀉血は不要。

 

POINT NASHはまず減量から

Perlemuter G, Bigorgne A, Cassard-Doulcier AM, Naveau S. Nonalcoholic fatty liver disease: from pathogenesis to patient care. Nat Clin Pract Endocrinol Metab. 2007;3(6):458-469. PMID: 17515890

 

Q3

 80歳男性。1年前から進行する泌尿器症状に悩まされている。流速低下、排尿遅延、毎晩4回の夜間頻尿。冠動脈疾患と心不全の既往がある。内服はリシノプリル、硝酸イソソルビド、アスピリン、メトプロロール。バイタル正常。恥骨上部に軽度圧痛。結節や圧痛を伴わない対称性に肥大した前立腺を触知。

 

問 次にすべき検査は

A 残尿測定

B 血糖測定

C PSA測定

D 尿検査

 

①排尿障害のマネージメント

 次にするのは尿検査である。前立腺肥大症(BPH)は男性の下部尿路症状の最も一般的な原因である。症状は前立腺が大きくなるほど強くなる。The American Urological Association(AUA)はAUA症状スコアをつけて治療必要性の評価を推奨している。BPHの診断プロセスには感染症の除外が含まれる。この患者は感染症を示唆する所見に乏しいが、残尿は感染症を、感染症は尿路症状をより悪化されるためまず尿検査はすべきである。

②他の選択肢

 残尿測定はBPHでルーチンとなっているが、溢流性尿失禁や神経因性膀胱の評価に用いる。

 高血糖は浸透圧利尿により夜間頻尿となりうるが排尿困難とはならない。糖尿病で神経因性膀胱となるのは相当進行してからである。

 The U.S. Preventive Services Task Forceはリスクのないいかなる年齢の男性への前立腺癌スクリーニングは有害だと結論付けた。AUAなどの他のガイドラインでは50歳以上で10年以上の予後が見込める場合推奨している。

 鉄の貯留はなくTIBCは45%未満である瀉血は不要。

 

POINT BPH評価は尿検査から

McVary KT, Roehrborn CG, Avins AL, et al. Update on AUA guideline on the management of benign prostatic hyperplasia. J Urol. 2011;185(5):1793-1803. PMID: 21420124