栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:怪しい胸痛/掌の皮疹/偶発性下垂体腫瘍

ども!Y先生からマウスが返納されました( ´∀` )頑張っていきましょう!

 

Q1

 59歳女性。心窩部痛で救急外来を受診。数時間前に漠然とした左前胸部痛として発症し増強してきた。痛みは45分後、一時的に落ち着いた。数時間は再発しなかったが、その後安静時に再発。呼吸促拍、嘔気、嘔吐、失神、胸痛の既往はなく、心疾患の既往や静脈血栓のリスクは今までなかった。既往は高血圧と脂質異常症。喫煙はしない。内服はシムバスタチン、アスピリン、リシノプリル、ヒドロクロロチアジド。発熱なし。血圧110/70、脈拍68、呼吸数22、BMI 28、SpO2 97%(RA)。予測される頚静脈圧は8cmH2O、頚部血管雑音なし。呼吸音は清。心尖部へ放散するLevine2/6の汎収縮期雑音を胸骨左縁で聴取。量下腿浮腫なし。レントゲンは正常範囲。

Figure 101.(MKSAPより)

 

問 初期のマネージメントは?

A アデノシンストレステスト

B CCUで管理

C 胸部造影CT

D イブプロフェン処方

 

①胸痛のマネージメント

 この患者はCCUで管理すべきである。胸痛臨床上よくある症状で非心原性の可能性もあるが、心原性の場合、適切な診断と治療が必要となる。危険因子、病歴、身体所見、レントゲンや心電図等の初期評価はすでに終わっている。患者の危険因子は年齢、高血圧、脂質異常症、胸痛の性状は心原性の中等度リスクである。心電図のST低下も合わせて考えると心筋虚血に矛盾なく、CCUでの管理が妥当である。

②他の選択肢

 心筋梗塞の危険性が低い患者では運動、薬物負荷をしてもよいが、急性冠症候群が疑われる患者では心筋虚血を助長し、致死的不整脈となる可能性がある

 胸部造影CTは肺塞栓が疑われる場合適応となるが、心電図からも急性冠症候群の可能性が高く肺塞栓は否定的である。

 NSAIDsは心外膜炎や筋骨格系の胸痛には有効である。心外膜炎の痛みは本来胸膜痛であり、心電図では広範な誘導でST上昇が見られる。

 

POINT 心筋虚血を疑えばCCU管理

Panju AA, Hemmelgarn BR, Guyatt GH, Simel DL. The rational clinical examination. Is this patient having a myocardial infarction? JAMA. 1998;280(14):1256-1263. PMID: 9786377

 

Q2

 22歳男性。口唇のびらんと手掌の皮疹。

Figure 16.

(MKSAPより)

 

問 病原体は

A 単純ヘルペスウィルス

B ヒトパルボB19ウィルス

C A群溶連菌

D 水痘ウィルス

 

①多型紅斑の鑑別

 この患者は多型紅斑があり、急性で粘膜のびらんを伴う場合、急性感染症、特に単純ヘルペスウイルスの感染を考える。また、特発性や薬剤関連も鑑別に上がる。ほとんどは20-40代であり、サイズは数ミリから数センチ、中心には円形の色素沈着がある。中心部が暗い色だと壊死を起こしたり、水疱や瘢痕を形成することもある。数日で数百もの病変となり、四肢伸側に多く、特に手や足にもできやすい。顔、体幹、大腿にはできにくい。粘膜病変は70%程度の患者に起こり、口唇、歯肉、舌側面も含む。痛みのあるびらんが多く、水疱は少ない。結膜、鼻粘膜、陰部にも生じうる。多型紅斑の極期には微熱が出ることもあり、1-2週でよくなる。色素沈着を残すかもしれない。ヘルペスだと繰り返す。治療は症状があればステロイド全身投与を行うこともあるが副作用も多い。抗ウィルス薬は罹病期間の短縮には寄与しないが、予防的な投与で再発を防げるかもしれない。二次感染を起こしていれば抗菌薬投与も妥当だが治療期間については研究に乏しい。薬剤性が疑われる場合は薬剤を中止する。

②他の選択肢

 溶連菌感染が多型紅斑を起こすことはないが、抗菌薬が引き起こすことはある。パルボや水痘は多型紅斑とはほとんど関連がない

 

POINT 多型紅斑の最たるものはHSV

Usatine RP, Sandy N. Dermatologic emergencies. Am Fam Physician. 2010;82(7):773-780. PMID: 20879700

 

Q3

 58歳男性。1週間前からの頭痛。交通外傷の後から起きている。意識消失はなかった。その時撮った頭部CTではトルコ鞍に腫瘤を認めた。2年前からの性機能低下。内服なし。血圧126/78、脈拍64、BMI 32。二次性徴は認めており、女性化乳房はない。IGF-1とコルチゾールは正常。MRIでは1.7cmの腫瘤がトルコ鞍上部へと伸びているが視交叉の圧迫はない。

 

問 診断のための検査は

A デキサメタゾン抑制試験

B GH刺激試験

C プロラクチン測定

D 血清Naと尿浸透圧測定

 

①偶発性下垂体腫瘍

 この患者は下垂体腫瘍が偶発的に見つかり、プロラクチン測定が初期評価となる。下垂体腫瘍では、末端肥大症やクッシング症候群、プロラクチノーマ等のホルモン過剰分泌を評価する。末端肥大症やクッシング症候群を示唆する所見はなくホルモン値も正常である。非機能性の可能性もあるが、プロラクチノーマはコモンであり、男性だと女性化乳房や乳汁分泌を伴わない例もある。性欲減退や勃起不全を伴うテストステロン欠損は高プロラクチン血症で起こりうる。診断がつけばドパミンアゴニストを投与しプロラクチン減少、腫瘍縮小が期待できる。さらに評価するなら下垂体機能低下症であろう。

②他の選択肢

 デキサメタゾン抑制試験はクッシング症候群の評価に用いるが示唆する所見がない。GH刺激試験はGH欠損症の評価に用いるが、内因性の成長ホルモンであるIGF-1は正常である。血清Naと尿浸透圧は下垂体後葉ホルモンであるADH欠損の評価に用いるが、下垂体腫瘍とほとんど関係なく、外傷や下垂体術後に起こることが多い

 

POINT 下垂体腫瘍の評価はPRLから

Freda PU, Beckers AM, Katznelson L, et al; Endocrine Society. Pituitary incidentaloma: an Endocrine Society clinical practice guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2011;96(4):894-904. PMID: 21474686