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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:血が止まらない/リスクありの背部痛/ハッチンソン徴候

もうすぐGWですね。これが一世を風靡したハッチンソン徴候の末路か。ではどうぞ。

 

Q1

 34歳男性。関節鏡の手術を受けて24時間後右膝のひどい出血を主訴に救急外来を受診。患者は1年前にネイルガンによる貫通性の外傷を受けた。この1年のうち少なくとも8回の関節内出血のエピソードがあり関節穿刺を要した。子供の頃、左前腕のコンパートメント症候群も経験している。8人の兄弟のうち2人は鼻出血と外傷後血腫の既往がある。内服薬はナプロキセンのみ。発熱なし。血圧100/55、脈拍120、呼吸数22。膝のドレッシング部位からは血液が滲み出している。

Laboratory studies:

Hemoglobin

8.4 g/dL (84 g/L) compared with 15.6 g/dL (156 g/L) preoperatively

Platelet count

Normal

Prothrombin time

11.0 s

Activated partial thromboplastin time (aPTT)

60 s

aPTT mixing study

23 s (Normal range: 25-35 s)

 

問 診断は?

A 後天性第Ⅷ因子インヒビター

B 第Ⅴ因子欠損症

C 第Ⅸ因子欠損症

D 第Ⅻ因子欠損症

 

①血が止まらない

 この患者は血友病B(第Ⅸ因子欠損症)が疑われる。病歴からは先天性の伴性遺伝が考えられ、特に成人になってからの病歴は血友病Bらしい。ただ血友病AとBは検査結果からは区別できない。この疾患ではPT正常、APTT延長があり、クロスミキシングテストで補正されるのが特徴である。より軽症の血友病Bだと成人になるまで診断されないこともあり、外傷後や術後の出血がひどい。コンパートメント症候群の既往はその影響を反映している。血友病A/Bは伴性遺伝であり、出血のエピソードは膝に多い。軟部組織の出血もコモンである。凝固因子の補充が治療の選択肢となり、治療せずに出血を繰り返すと関節の変性を起こすこともある。頭蓋内出血は危険であり、死因の一つとなっている。アスピリンやNSAIDsは禁忌である。

②他の選択肢

 第Ⅷ因子のインヒビターがあればミキシングテストでの補正はない。

 第Ⅴ因子欠損症ではPT、APTTともに延びる。

 第Ⅻ因子欠損症でもPT正常、APTT延長を来すが出血で来ることは稀である。

 

POINT 凝固検査のパターンから診断へ

Stine KC, Becton DL. Bleeding disorders: when is normal bleeding not normal? J Ark Med Soc. 2009;106(2):40-42. PMID: 19715248

 

Q2

 36歳女性。2週間前からまあまあひどい背部痛。外傷なし。痛みに波はなく、背部中央の痛みで放散を伴わない。歩いたり物を持ち上げたりすると痛みが増す。17年前にSLEの診断を受け、15年前から腎炎。シクロホスファミドと高用量のプレドニンで治療されていたが、テーパー中で少量のプレドニンは関節炎と皮疹のために使用している。他の薬剤はヒドロキシクロロキン、カルシウム、ビタミンDである。体温36.8℃、血圧116/72、脈拍82、呼吸数18。感覚と筋力は正常。胸椎と傍脊柱筋の圧痛があり、屈曲したり捻ったりすると痛い。神経所見正常。レントゲンでは骨折を認めなかった。

 

問 適切なマネージメントは

A シクロベンザプリン追加

B 1週間の安静

C 胸椎CT

D 理学療法

 

①リスクありの背部痛

 胸椎のCTを撮るべきである。SLE患者では骨粗鬆症関連の骨折リスクが上がる。SLE患者の25%に骨粗鬆症が見られ、ステロイド使用、SLEの病勢、活動性低下、日光回避が理由となっている。SLEの女性は年齢調整をしても閉経前に5倍の骨折リスクがある。この患者は突然発症の非放散性中央背部痛で波がなくレントゲンで骨折はなかった。最初のレントゲンでは圧迫骨折が映らない可能性もあるため胸椎CT検査は妥当である。

②他の選択肢

 シクロベンザプリンは急性腰痛症には有効であるが、沈静がかかり依存を誘発する。アセトアミノフェンやNSAIDsが骨粗鬆症による圧迫骨折の第一選択である。カルシトニンはより早く鎮痛が図れるというエビデンスがいくつかある。

 患者は安静にすべきでなく可能であれば普段通りに過ごした方がよい。臥床は床上期間を延長する。

 理学療法は後々必要になるが、まずは骨折を確認し除痛を図るところからである。長期のリハビリが骨密度にはよい。

 

POINT 骨折はまず診断と除痛

Mendoza-Pinto C, Garcia-Carrasco M, Sandoval-Cruz H, et al. Risk factors of vertebral fractures in women with systemic lupus erythematosus. Clin Rheumatol. 2009;28(5):579-585. PMID: 19224131

 

Q3

 65歳女性。鼻先のプロドロームがあり、右眼窩周囲に痛みとびらんが生じてきた。バイタルは正常。鼻先と右眼の周りに水疱が集簇し発赤している。

 

問 適切なマネージメントは

A 温熱圧迫

B ステロイド塗布

C バラシクロビルを投与して眼科コンサルト

D 細菌培養を取りセファレキシン投与

 

①顔面の帯状疱疹

 患者は帯状疱疹であり抗ウィルス療法を行い眼科にコンサルトする。眼窩領域の帯状疱疹は即座に治療を始めないと失明する恐れがある。帯状疱疹は水痘ウィルスの再活性化であり90%の患者で痛みや圧痛、痒み、異常感覚が先行する。水疱の範囲は一つのデルマドロームのことが大半で正中線を越えることはほとんどない。後ろ向き研究ではレッドアイと滑車上神経領域の皮疹は臨床的に眼病変を示唆しており、100%の患者が中等症から重症の眼病変へ発展する。逆にハッチンソン徴候(鼻先の皮疹)では眼病変を予測できない。診断は病歴と診察で行う。蛍光抗体法やPCRでの診断もできるが、臨床的に治療を始めることが多い。

②他の選択肢

 温熱圧迫と細菌培養、抗菌薬投与はウィルス性疾患では不適切であり抗ウィルス薬の治療が遅れると失明しかねない。

 ステロイド軟膏は抗ウィルス薬と併用することはあるが、単独では使用しない

 

POINT 顔面帯状疱疹は眼科コンサルト

Adam RS, Vale N, Bona MD, Hasanee K, Farrokhyar F. Triaging herpes zoster ophthalmicus patients in the emergency department: do all patients require referral? Acad Emerg Med. 2010;17(11):1183-1188. PMID: 21175516