読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:アルコールと糖尿病/その血栓は新しいのか古いのか?/胃軸捻転

カンファまとめなり。
そして、ちょっくら出かけてきます!

アルコールと糖尿病 Alcohol and diabetes mellitus

 これもある意味気付きですが・・・意外とアルコールそのものが糖尿病に良くないのか?という命題には結論が出ていないようにも思っていました。というか、ちょっと害かな的な・・・

 実際には中等度のアルコール摂取は糖尿病発症率を減らすと言う観察研究が複数あるとのことで、2005年に出たメタ解析では、飲酒者の糖尿病発症の相対危険度は、
・毎日6-12g/日   RR 0.70(0.61-0.79)
毎日12-24g/日 RR 0.69(0.58-0.81)
毎日24-48g/日 RR 0.72(0.62-0.84)
毎日48g/日以上  RR 1.04(0.84-1.29)
とされています。アルコールを大量に摂取している人でも有意差がついていない結果で、少量飲む人はむしろリスクが下がる結果でした。

 アルコールそのものの抗酸化作用が注目されていて、冠動脈疾患の死亡率を下げることもあるようです。一方で、糖尿病性神経障害の悪化や重度の低血糖リスクなどが報告されています。あとは、何を飲むかなんでしょうかね・・・

 ✓ アルコール摂取は糖尿病には良い方向に働く


 

その血栓は新しいのか古いのか? Is this thrombosis new or old?

 画像診断で血栓が同定されることはしばしばありますが、その血栓が新しいのか古いのかは結構悩ましい所見です。もちろん、100%鑑別は困難ですが、いくつかの鑑別点があるとのことで、放射線科の先生からのご教授を頂いたので、ポイントを列挙しておきます。

・血栓の色:急性期の血栓はやや白色
・血管壁の造影効果:急性の場合目立つ、やや浮腫状
・血栓の位置:急性の場合は浮遊、慢性の場合は接している

 まあ、もちろん臨床経過が全てなのですが・・・CT検査で偶発所見が見つかることも増え、PTEのoverdiagosisの問題も顕著になってきていますね。単純CTで血栓のCT値が異なるという報告は複数あり、単純CTも重要です。参考までに、血栓のCT値は 30-60HUですが、新しい血栓だと70-90HUになるのだそうです。参考までに・・・

✓ 血栓の新旧のCT所見を整理しておこう

 

胃軸捻転 Stomach volvulus

 これはてっきり小児科領域の話題だと思っていました。成人領域でも報告がある様なのでまとめてみたいと思います。ある意味、某所で話題のニッチなやつですね笑

 基本的には、胃全体または一部が生理学的範囲を超えて捻転し、胃内容物の通過障害を来した形態異常を指しています。古くは1866年に剖検例が報告され、1897年には世界最初の手術例があります。分類として、Singletonの分類が有名だそうです。小児例がほとんどですが、成人例も報告があります

 Singleton分類では
①臓器軸(噴門と幽門を結んだ線)性と腸間膜軸(小彎と大彎を結んだ線)性とその複合型:捻転軸による分類
②完全型と部分型:捻転の程度
③前方型と後方型:捻転の方向
④原発性と続発性:原因
⑤急性型と慢性型:発症時期
 を軸に分類されています。

http://www.sajr.org.za/index.php/sajr/article/viewFile/206/224/390

http://www.sajr.org.za/index.php/sajr/article/viewFile/206/224/390より引用)

 54%が臓器軸方向への回転だそうです(Pediatics 2008;122:e752-e762)が、どちらも起こり得るという理解でしょうね。小児では原発性としての胃固定靱帯の固定不全や靱帯欠如などですが、成人症例では続発性が多く、横隔膜弛緩症や食道裂孔ヘルニア、強い腹圧が原因になる模様であり、意外と頻度は多いのかもしれません。
 
 症状についてはBorchardtの3徴がillness scriptを表しています。
①顕著な心窩部痛と心窩部拡張
②初期嘔吐に続く吐物のない強い嘔吐発作
③胃管の挿入困難あるいは不能
 通常急性腹症として精査が行われますが、その際のCT所見で疑うことが重要になります。対処は可能なら胃管などの減圧が第一選択ですが、捻転の程度によって壊死・穿孔から致死的経過を辿るので要注意です。

  ✓ 成人の胃軸捻転症例のillness scriptをたたき込んでおこう