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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:Retrocohort 外来高齢患者の引き継ぎにおいて、不要な薬剤が申し送られている頻度

外来高齢患者の引き継ぎにおいて、不要な薬剤の申し送られている頻度
Prevalence of inadequately justified medications transferred during outpatient handoffs of elderly patients

Geriatr Gerontol Int. 2017 Feb;17(2):355-357. doi: 10.1111/ggi.12877.

【背景】
 効果的な医師間の引き継ぎは外来ケアの適正化には重要であり、特に高齢者で合併症が多く、ポリファーマシーになりやすい患者では尚更である。残念なことに、病院セッティングでは外来引き継ぎにあまり注意が払われていない。先行研究では、外来患者の引き継ぎに必要な重要情報がしばしば含まれていないことが問題視されている。
 特に薬剤についての情報引き継ぎの頻度については、あまり過去にも調査されておらず、不十分な引き継ぎが患者アウトカムに与える影響も分かっていない。引き継ぎ不足はポリファーマシーの重要な寄与因子であり、高齢患者の害に繋がるという先行研究もある。
 本研究では外来高齢患者の引き継ぎにおいて、不要な薬剤が申し送られている頻度と患者にとって有害なアウトカムとの関係を調査した
【方法】
 栃木医療センター内科において、2014年9月から2016年1月まで後ろ向きに観察研究を行った。
 患者組み入れ基準として、65歳以上で少なくとも1回は担当医変更に伴う申し送りを経験した患者を連続的に組み入れた。年齢・性別・CCI・薬剤と引き継ぎ情報を電子カルテから抽出した。
 プライマリアウトカムは、前医の引き継ぎ情報を元にしても処方適応が不明な薬剤の割合。一応引き継ぎ情報以外に電子カルテ上の記載も参考にし、適応があるかを判断した(例:PPIであればGERDや消化性潰瘍予防等)。オフラベルユーズの薬剤でも適応が記載されていれば不明とはしなかった。
 他のアウトカムは、AGS Beers 2015で定義されたPIMs(潜在的不適切薬剤)や引き継ぎで処方適応だった薬剤の中でのPIMs。患者アウトカムとしては、引き継ぎ後1年以内の予定外入院とした。
 8人の内科医(5名レジデント・3名スタッフ医師)がこの期間に引き継ぎを行った。243回の高齢者の引き継ぎが行われた。51件が組み入れ基準を満たさず、192件/177人の患者が最終解析に組み入れられた。192件の引き継ぎの結果が以下。平均年齢 75.6歳、56.3%が男性だった。平均CCIは1.4、平均薬剤数は4.7剤だった。

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(本文より引用)
【結果】
 192件の引き継ぎ時に、550薬剤が申し送られた。申し送られた薬剤の25.1%が適応不明薬剤だった。適応明確薬剤と比較すると、適応不明薬剤の方が有意にPIMsが多かった(OR 2.8:1.5-5.2)。最も多かった薬剤は、消化器系薬 42.8%、ベンゾジアゼピン系薬剤 12.3%、循環器系薬剤 10.9%。
 適応不明な薬剤 PIMs 22件のうち13件がPPI、7件がベンゾ、2件が抗コリン薬だった。適応不明薬剤のおよそ3/4が次に担当した医師も処方継続しており、80%の薬剤が引き継ぎ後の医師からの評価を受けていなかった。
 予定外入院は両群で有意差はつかなかった(OR 2.0:0.8-4.7)
【結論】
 適応不明薬剤の割合は全体の25.1%と多く、適応不明薬剤の方がPIMsが有意に多かった。
【批判的吟味】
・まず論文のPECOから
P:栃木医療センターで医師同士で引き継ぎされた処方薬剤
E:適切な引き継ぎ情報があった薬剤
C:適切な引き継ぎ情報がなかった薬剤
O:PIMsの割合、1年以内の予定外入院
T:後ろ向き観察研究
・単一施設の後ろ向き観察研究のデータなので質が高いとは言えないです。
適応不明薬剤=適切に情報が吟味されていないということでもあります。この群は、有意に薬剤数が多く、CCIも高い傾向でした。
・ちなみに手前味噌ですが、PIMsの割合は平均75歳の高齢者の割には18.8%と非常に少ないです。更に適切な情報提供がされているPIMsは9.7%。これは平均よりかなり低い数ですね。
【個人的な意見】
 これは当院の駒ヶ嶺先生の行った後ろ向き観察研究です。なんだか自施設のデータをこうやって論文上で振り返るというのがすごく新鮮ですね。こういった自院のデータをどんどん出していきたいというのが今後の目標です。
 それにしても当院短期研修の先生方に是非読んで欲しいですねえ笑。そして、これの責任は外来カンファレンスを主に担当している私にもあるのです、すいません・・・引き続き頑張ります!

✓ 医師が交替になる場合の引き継ぎで適応不明薬剤があり、それらはPIMsと関連する