栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:静注ドラッグの恐怖/tPA後の評価/マルファン症候群

皆様、PC学会お疲れ様でした。Y先生は高松でもブログを更新してましたが…ワーカホリックですね笑 

 

Q1

 35歳男性。急性発症の両下肢の麻痺で救急外来を受診。経静脈麻薬使用歴あり。5日前まで元気だったが、激しい腰痛が始まり、温熱療法やイブプロフェンで改善しなかった。来院日は歩行できず救急車で搬送された。体温37.8、血圧120/74、脈拍98、呼吸数14。両下肢のMMTは0で臍以下の感覚障害がある。緊急MRIではT10の下半分とT11の上半分の椎体に骨髄炎の所見と髄核炎の所見があり、硬膜外のマスが脊髄を圧迫している。血液培養が採取された。

 

問 次の一手は

A 抗菌薬投与

B CTガイド下骨生検

C 緊急放射線療法

D 緊急除圧術

 

①静注ドラッグの恐怖

 この患者は硬膜外膿瘍が脊髄を圧迫しており、緊急で除圧術をする必要がある。手術は発症から24-36時間以内に行うべきであり、完全な麻痺や神経学的後遺症を避けるのが目的である。

②他の選択肢

 抗菌薬は培養検体が取れ次第、術中に投与すべきである。局所の痛みや根症状のみの場合は薬物治療のみとすることもあるが、慎重な経過観察が必要であり、神経所見を繰り返し取り、MRIで膿瘍が消失するのを確認する。

 骨生検は検体は取れるが除圧にはならない。

 放射線療法は診断の確定していない例や細菌性膿瘍では行わず、この患者は悪性腫瘍が疑われない。

 

POINT 脊髄圧迫は緊急除圧の適応

Darouiche RO. Spinal epidural abscess. N Engl J Med. 2006;355(19):2012-2020. PMID: 17093252

 

Q2

 71歳女性。90分前発症の左半身の筋力低下と構音障害で救急外来を受診。2型糖尿病の既往があり、グリブリドとメトホルミンを飲んでいる。血圧178/80、脈拍60、呼吸数16。頚動脈雑音なし。左顔面、上下肢の筋力低下あり。上肢が下肢より症状が強い。頭部単純CTは正常。

Laboratory studies:

Activated partial thromboplastin time

36 s

Platelet count

410,000/µL (410 × 109/L)

INR

0.9

Creatinine

1.1 mg/dL (97.2 µmol/L)

rtPA静注6時間後、血圧190/90、脈拍68。不安が増したが、神経所見の改善なし。

 

問 次の一手は

A アスピリン

B クレオプレシピテート

C ジアゼパム

D ニカルジピン

 

①tPA後の評価

 この患者にはニカルジピン投与が適切である。90分前発症の脳梗塞で初期段階では血圧が185/110を超えていなかったためtPA投与は妥当であった。tPA後の最も重大な合併症は頭蓋内出血であり、高血圧はその危険因子である。ガイドラインでは血圧を180/105以下に保つように推奨している。ニカルジピンやラベタロールが治療選択となる。

②他の選択肢

 アスピリンは少なくともtPA24時間後から開始すべきである。

 tPA後に頭蓋内出血が起きると、頭痛、嘔気・嘔吐、神経所見の悪化が見られる。疑う所見があればtPAを中止し、CTを繰り返し撮るべきである。出血があるという証拠があればクレオプレシピテートのような凝固因子の補充を行う。

 不安が高血圧の要因だとしても降圧を優先して行うべきである。また、ベンゾジアゼピンは急性期脳梗塞における神経障害回復を妨げる。

 

POINT tPA後も血圧管理が大事

Cumbler E, Glasheen J. Management of blood pressure after acute ischemic stroke: an evidence-based guide for the hospitalist. J Hosp Med. 2007;2(4):261-267. PMID: 17705177
 

Q3

 21歳男子学生。身体測定で心雑音を指摘された。無症状であり、既往・内服はない。発熱なし。血圧117/86、脈拍68、呼吸数14、BMI 18。近視で矯正レンズをしている。軽度の側弯あり。長い手指であり、漏斗胸である。身長188㎝、両手を広げると200㎝。呼気で胸骨左縁に漸減していく早期収縮期雑音を聴取。座位や前傾姿勢で強くなる。経胸エコーで大動脈基部が6.2㎝に拡大していた。

 

問 適切なマネージメントは

A 入院してメトプロロールとニトロプルシド投与

B ロサルタンとメトプロロール投与

C 手術の準備

D 半年後エコー再検

 

①マルファン症候群

 エコー上、径6.2㎝の胸部大動脈瘤があり手術が必要である。患者は複数のマルファン症候群の表現型があり、骨格、眼、心臓に及んでいる。長身、痩せ型であり、両手の長さが身長より長い。また、長い手指や側弯症、漏斗胸も特徴的である。近視はマルファン症候群で多いが、水晶体脱臼ほど特異的ではない。大動脈基部の拡大も特徴的であり、身体所見上は大動脈弁閉鎖不全が見られる。この患者は致死的な大動脈解離を防ぐために手術の準備をする必要がある。

②他の選択肢

 現在無症状であり、緊急入院や緊急手術、降圧は勧められない。

 降圧薬は大動脈瘤が小さい場合は治療戦略となるが、手術までのつなぎにしかならない。

 大動脈径は5㎝を超えており、半年後のフォローは待てない。

 

POINT 大きな動脈瘤は無症状でも手術

Stout M. The Marfan syndrome: implications for athletes and their echocardiographic assessment. Echocardiography. 2009;26(9):1075-1081. PMID: 19840071