栃木県の総合内科医のブログ

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症例:Lancet 76歳女性 皮膚に多発する小丘疹

case report紹介です。
これはなかなか知らないなあ。
皮膚科むずかし笑

症例:76歳女性 皮膚に多発する小丘疹

Lancet 2017; 389: 1549

 76歳女性。2型糖尿病、COPD、心筋梗塞、治療終了した直腸癌の既往がある方が2016年1月に2年前から続く皮膚変化を主訴に皮膚科外来を受診した。身体診察では、全ての指の伸側表面および両耳の背面、鼻唇溝に直線状に並んだ2-3mm程度の丘疹が認められ、無症候性対称性だった。爪床は毛細血管性変化は認めず、嚥下障害やRaynaud症状なし。6週間後に再診し、最近3週間に渡って指の腫脹が徐々に悪化していると報告した。

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(本文より引用)

 皮膚生検の病理学的検討では、ムチン・線維芽細胞増殖・繊維の間質性沈着を示した。

質問. 診断は

 

回答:
診断:硬化性粘液水腫

経過:
 この病理組織検査からは、粘液水腫性苔癬または硬化性粘液水腫が最も疑われる。両者を鑑別するために、甲状腺機能検査とモノクローナルなガンマグロブリン血症についての検査が行われ、TSH 0.3mIU/L、血清免疫電気泳動でλ鎖を有するIgG型モノクローナルガンマグロブリン血症が検出され、硬化性粘液水腫(Scleromyxoedema)の診断となった。
 モノクローナル蛋白が存在しない場合には、粘液水腫性苔癬や丘疹性ムチン沈着症を疑う必要がある。これらは強皮症や全身性症状、甲状腺疾患とは関連しない。

解説:

 強皮症は進行するにつれてムチンが増え、皮膚肥厚が顕著になり運動性が低下する。全身性症状の徴候として、嚥下障害、食道運動性低下、筋力低下が含まれている。心肺または中枢神経疾患としては、心不全・呼吸不全(最多は誤嚥性肺炎)・脳症・痙攣・昏睡などがある。

 硬化性粘液水腫は稀な病態で正確な疫学情報も不明、通常は中年に発症する。頭部、頸部、手および胴体の線形で対称パターンの平坦丘疹が特徴的である。病因は不明で、モノクローナル蛋白の存在が診断に必要だが、その役割はよく分かっておらず、骨髄腫への進展も稀である。いくつかの研究では、強皮症患者の血清線維芽細胞の増殖が誘導されるかもしれないという仮説が立てられている。

 硬化性粘液水腫の治療は、シクロホスファミド・メトトレキセート・サリドマイド・プレドニゾロン・局所コルチコステロイド・UV治療などの様々な治療法が報告されているものの、残念ながら絶対的な治療は確立されていない。メルファラン・ボルテゾミブ・自己幹細胞移植などのモノクローナルなガンマグロブリン血症を標的とした治療が臨床的寛解を誘導する可能性が示されている。また、硬化性粘液水腫は一般的には経静脈的免疫グロブリンによく反応する。

 本症例では年齢や合併症を考慮し、化学療法や幹細胞移植は行われず、対症療法で経過観察としている。皮膚症状が悪化したり、全身症状を合併する場合には経静脈的免疫グロブリン投与が検討されている。