栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:リスクのない胸痛/SLEの診断特異性/抗凝固の選択

今日はiphoneが壊れて大変でした。暑くなってきましたがばてずに頑張りましょう! 

 

Q1

 24歳男性。6ヶ月前から胸痛のエピソードを繰り返している。胸痛は動悸と発汗を伴っており、週に7回起き、死の恐怖を感じる。大体30分程度で治まる。制酸薬では軽快せず、安静時労作時体位に関わらず起きる。誘因は特にない。煙草は吸わず、健康診断で脂質異常症も指摘されていない。心血管疾患、糖尿病、脂質異常症、高血圧の既往や家族歴はなく内服もない。バイタル正常。心雑音なし。腹部圧痛なし。血算、TSH、心電図異常なし。

 

問 適切なマネージメントは

A 心血管イベントをモニター

B 運動負荷試験

C PPI

D SSRI

 

①リスクのない胸痛

 この患者はパニック障害であり、SSRIの処方が適切である。パニック障害は身体症状を伴うパニック発作が特徴的であり、胸痛、動悸、発汗、嘔気、めまい、呼吸困難感、しびれが含まれる。症状は5-60分持続し、50%の患者は広場恐怖(逃げるのが難しい場所や雑踏への恐怖)が見られる。臨床診断だが、心血管疾患や甲状腺機能障害、褐色細胞腫等の基礎疾患にも注意する。しかし、ほとんどの患者は病歴、身体所見、初期の血液検査から更なる検索の必要はない。治療は内服薬と精神療法で行う。認知行動療法(CBT)は最も効果が高いと比較対照試験で証明されている。SSRIやSNRIが有効だが、精神療法との併用がそれぞれ単独による治療より効果がある。

②他の選択肢

 この患者は心血管リスクが低く初期評価で心血管疾患は疑われないため更なる検査は必要ない。また、症状はGERDとしても非典型的でありPPIの意義は乏しい

 

POINT パニック障害にはCBTとSSRI

Work Group on Panic Disorder; American Psychiatric Association; Practice guideline for the treatment of patients with panic disorder. Am J Psychiatry. 1998;155(5 suppl):1-34. PMID: 9585731

 

Q2

 52歳女性。3ヶ月前から倦怠感、日光過敏、朝のこわばりのあ手の痛み。既往歴、家族歴なし。内服なし。バイタル正常。硬口蓋に5㎜の潰瘍、両膝に網状皮斑、MCP、PIP関節の圧痛。腫脹はない。他、特記所見なし。血算、ESR、尿検査正常。抗核抗体160倍。

 

問 診断に特異的な検査は

A 抗dsDNA抗体

B 抗SSA/SSB抗体

C 抗RNP抗体

D 抗PR3抗体

 

①SLEの診断特異性

 この患者はSLEの病歴があり、抗dsDNA抗体が最も特異度の高い検査である。診断基準では抗核抗体、関節炎、口内炎、日光過敏を満たす。網状皮斑は抗リン脂質抗体症候群を示唆する。血算やESR、尿検査も施行し、確率の高い患者では補体やより特異度の高い抗体を測る。抗dsDNA抗体はSLE患者の50-70%で陽性となり、他の自己免疫性疾患では陽性となりにくい。抗dsDNA抗体はSLE腎障害と関連しており、高いとフレアの前兆であることがある。新規で診断したSLEでは抗リン脂質抗体やカルジオリピン抗体を測定する。

②他の選択肢

 抗SSA/SSB抗体はSLE患者の10-60%で陽性となるが、抗dsDNA抗体より特異性は低く、関節リウマチや強皮症、シェーグレン症候群でも陽性となる。

 RNP抗体はMCTDで陽性となり、皮膚筋炎、強皮症、SLEの臨床症状を有する。他の抗体が陽性となることは少ない。SLEの30-40%で陽性となる。

 PR3-ANCAは肉芽腫性多発血管炎で陽性となり、肺や腎臓が侵される。

 

POINT dsDNAが特異度ナンバーワン

D’Cruz DP, Khamashta MA, Hughes GR. Systemic lupus erythematosus. Lancet. 2007;369(9561):587-596. PMID: 17307106
 

Q3

 58歳女性。8時間前発症の急性の呼吸困難感と片側の胸膜痛。高血圧と4期のCKDがあり、アテノロール、アトルバスタチンを飲んでいる。見た目、中等度の呼吸困難感。体温37.6℃、血圧148/90、脈拍88、呼吸数22。左肺に胸膜摩擦音と吸気時ラ音聴取。心尖部にS4ギャロップ。両下腿浮腫なし。直腸疹で痔核なし。BUN30、Cre2.8。血算、凝固、心筋マーカーは正常。酸素3LでSpO2 94%。心電図、エコーでは左室肥大で心機能は正常、右室拡大なし。造影CTでは両側の肺塞栓。

 

問 適切な治療は

A アルテプラーゼ

B アルガトロバン+ワーファリン

C フォンダパリヌクス+ワーファリン

D 未分画ヘパリン+ワーファリン

 

①ヘパリンの種類

 この患者はCKDのある肺塞栓症のため未分画ヘパリンが選択される。血行動態的に安定しているため抗凝固を始めるが、腎機能障害があり未分画ヘパリンを用いる。同時にワーファリンを始める。

②他の選択肢

 血栓溶解療法は血圧90未満、普段より40以上下がっている患者で用いるが、出血のリスクが高く、血行動態が安定している患者では有効性が証明されていない。

 アルガトロバンはヘパリン誘発性血小板減少症では用いる。肝代謝であり腎臓には影響を及ぼさない。しかしINRも延びてしまうためワーファリンの評価に影響する。

 低分子ヘパリンやフォンダパリヌクスのようなXa阻害薬は腎機能障害のある患者には禁忌である。

 

POINT 腎機能障害時は未分画ヘパリン

Guyatt GH, Akl EA, Crowther M, Gutterman DD, Schuünemann HJ; American College of Chest Physicians Antithrombotic Therapy and Prevention of Thrombosis Panel. Executive summary: Antithrombotic Therapy and Prevention of Thrombosis, 9th ed: American College of Chest Physicians Evidence-Based Clinical Practice Guidelines. Chest. 2012;141(2 suppl):7S-47S. PMID: 22315257