栃木県の総合内科医のブログ

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論文:RetroCohort 患者とのトラブルが多い外科医は術後合併症が多い

患者とのトラブルが多い外科医は術後合併症が多い
Use of Unsolicited Patient Observations to Identify Surgeons With Increased Risk for Postoperative Complications

JAMA Surg. doi:10.1001/jamasurg.2016.5703 Published online February 15, 2017.

【背景】
 患者とのトラブルを抱えていることは、医療過誤訴訟リスクと関連している。医師患者関係に緊張がある状態に予期しない重大な悪影響が生じることが訴訟リスクとなる。ただ、医師側の患者不満を生む行動が、患者の有害なアウトカム発生に関連するかどうかは疑問が残る
【目的】
 患者とのトラブルの数が多い医師の方が、少ない医師よりも術後合併症リスクが高いかどうかを調査する
【デザイン・セッティング・患者】
 この後ろ向き観察研究は、National Surgical Quality Improvement Program(NSQIP)とVanderbilt Patient Advocacy Reporting Systemに参加している7カ所の教育病院センターの、2011年1月1日〜2013年12月31日までのデータが抽出された。
 NSQIPに含まれた18歳以上の患者で、試験期間中に入院もしくは外来手術を行われた患者が組み入れられた。
 Vanderbilt Patient Advocacy Reporting Systemを用いて、手術日前のデータが24個月未満の患者は除外された。データ解析は2015年6月1日から2016年10月20日まで行われた。
【曝露】
 手術施行24か月以内に抱えていた患者とのトラブル数
【メインアウトカム】
NSQIPで定義された30日以内の外科的もしくは内科的術後合併症
【結果】
 コホート全体は3万2125人(男性 1万3230人、女性 1万8895人、平均年齢 55.8歳)で、3501人(10.9%)が合併症を起こし、1754人(5.5%)が外科的、2422人(7.5%)が内科的だった。
 トラブル患者を抱えていることは、患者の合併症リスク(OR 1.0063:1.0004-1.0123)、外科的合併症(OR 1.0104:1.0022-1.0186)、内科的合併症(OR 1.0079:1.0009-1.0148)、再入院(OR 1.0088:1.0024-1.0151)を増加させた。
 抱えている患者とのトラブル数が最も高いグループは最も低いグループと比較して、13.9%合併症の調整発症率が高かった。

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(本文より引用)

【結論】
 外科医が手術の24か月以内に患者とのトラブルを抱えていることは、外科的・内科的合併症のリスクを増加させた。礼儀正しく効果的に患者や他の医療従事者とコミュニケーション取る能力に焦点を当てて、患者安全を促進し、医療訴訟リスクに取り組む努力は継続すべきである。
【批判的吟味】
・いつも通り論文のPECOから
P:NSQIPに組み込まれた患者
E/C:24か月以内の患者とのトラブルの割合(4分割で比較)
O:術後合併症頻度(外科的・内科的)
T:後ろ向き観察研究
・平均55.8歳、男性 41.2%
・トラブル患者の数として、2年間で0-4人がquartile1、5-9人がquartile 2、10-13人がquartile 3、14-60人がquartile4と分けています。結構多いデスね・・・
トラブルの具体的な内容が掲載されていましたが、何だかちょっと悲しくなる感じで・・・

"私はDr Yに「手術にどれくらいの時間がかかるか?」と尋ねました。
すると彼は、「あなたの妻はこの手術なしでは死んでしまう。 あなたが私の手術に同意するのではなく、質問したいのであれば、私は家に帰るだけで手術はしないですよ。」

"X医師は約束時間を直ぐに破った。彼女はなぜ他の治療アプローチよりもこの治療法を推奨している理由を説明しなかった。

・NSQIPが全ての経験を反映していない可能性もあるので、全貌が明らかになったとは言えないかもしれません。
交絡因子は十分除外できておらず、例えば医師によっては積極的にリスクの高い患者の手術をしたりする場合には、それだけトラブルを抱えるリスクが高くなります。
・あくまで教育医療機関のデータなのでどこまで適用して良いかは悩ましいところ。
【個人的な意見】
 いやあ、こんなの調査できるんですね。このディフィカルトラーナーについて、患者アウトカムと関連してしまうのは結構衝撃でした。で、あとはこれを改善するための手法は何か?というのが次のテーマでしょうね。勉強になりました。

✓ 患者とのトラブルが多い外科医は手術合併症が多い