栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:前処置不良/家族の突然死/犯人は誰だ?

MKSAPあるある出したらコアなファンに受けそうだな。やはり選択肢にICD植え込みがあれば9割くらいそれですね笑

 

Q1

 53歳男性。下部消化管内視鏡の1週間後。第二親等までは大腸癌の家族歴はない。身体所見は正常範囲。盲腸までの内視鏡だったが、準備が不十分で所々に半固形のデブリが残っていたため観察が不十分であった。レポートでは、1㎝以上の病変は否定的で、直腸の3㎜に満たないか形成性ポリープは除去したと書いていた。

 

問 今後のマネージメントは

A 準備を十分に行って再検

B 3年後再検

C 5年後再検

D 10年後再検

 

①前処置不良

 十分な準備をしてもう一度内視鏡をすべきである。大腸癌のスクリーニング、サーベイランスのガイドラインでは十分なベースラインの評価を推奨している。十分なベースラインの評価とは、盲腸までの挿入、視野の確保された粘膜観察でデブリが最小限であること、引きの時間が6分以上であることとしている。American Society for Gastrointestinal Endoscopy/American College of Gastroenterology task force on quality in endoscopyは5㎜未満の小さなポリープがデブリで見えない程度は許容している。この患者は長期のサーベイランスプランに乗せる前に再検すべきである。

②他の選択肢

 3-10個の過形成性ポリープでない腺腫がある患者は3年後に再検。

 1-2個の1㎝未満の小さな腺腫のみで異型性が低い場合5年後に再検。

 ポリープがないか、小さな過形成性ポリープが直腸にあるのみだと10年後再検。

 

POINT 内視鏡の準備は十分にしましょう

Winawer SJ, Zauber AG, Fletcher RH, et al. Guidelines for colonoscopy surveillance after polypectomy: a consensus update by the US Multi-Society Task Force on Colorectal Cancer and the American Cancer Society. CA Cancer J Clin. 2006;56(3):143-159. PMID: 16737947

 

Q2

 19歳男性。最近、父が45歳で突然死した。胸痛、呼吸困難感、動悸、めまい、失神の病歴はない。煙草は吸わず、非合法薬物歴もなく、高血圧でもない。兄弟はおらず、内服もない。発熱なし。血圧120/60、脈拍60、呼吸数14。頚静脈の虚脱なく、バルサルバ手技で増強する収縮中期雑音を聴取する。頚静脈波の立ち上がりが早い。呼吸音は正常。心電図は洞調律で胸部誘導のQRSが高い。心臓超音波では非対称性の中隔肥大、拡張期終末の左室壁の厚さが36mm。left ventricular outflow tract gradientは50mmHg。

 

問 適切なマネージメントは

A アルコール中隔焼灼術

B 電気生理学的検査

C ICD植え込み

D アミオダロン開始

 

①家族の突然死

 ICDを植え込むべきである。心臓超音波でHCMの診断は付いている。患者は心臓突然死の主な危険因子を二つ有しており、一つは第一親等の若年突然死であり、もう一つは左室壁厚が30㎜以上であることである。無症状の患者の突然死の予防として、ICD植え込みが効果的である。

②他の選択肢

 薬物治療抵抗性の流出路狭窄や心不全症状がある患者の一部にアルコール中隔焼灼術が勧められる。

 電気生理学的検査はHCM患者の突然死リスクの評価には使えない。

 アミオダロンはHCM患者の突然死の一次予防で使用されているが効果は明らかではない。

 AHAの推奨では、ボーリングやゴルフ等の軽い運動は多分大丈夫、バスケットボールやボディビルディングはやめた方がいい、中等度のテニスは微妙、ウィイトリフティングは推奨しないとしている。The 36th Bethesda Conference on Recommendations for Determining Eligibility for Competition in Athletes with Cardiovascular Abnormalitiesはアスリートへの推奨を出版している。いずれにせよカウンセリングが必要である。

 

POINT HCMは辛いよ

Maron BJ, Chaitman BR, Ackerman MJ, et al; Working Groups of the American Heart Association Committee on Exercise, Cardiac Rehabilitation, and Prevention; Councils on Clinical Cardiology and Cardiovascular Disease in the Young. Recommendations for physical activity and recreational sports participation for young patients with genetic cardiovascular diseases. Circulation. 2004;109(22):2807-2816. PMID: 15184297
 

Q3

 56歳女性。8週間前からの乾性咳嗽。のどがくすぐられる感覚が先行して咳の発作が起きる。呼吸困難感、血痰、発熱、寒感、咽頭痛、筋肉痛、骨痛、喘鳴、鼻汁はない。3ヶ月前に2型糖尿病、高血圧を指摘され、メトホルミン、ヒドロクロロチアジド、リシノプリル、アトルバスタチンが開始された。10パックイヤーの喫煙者だったが5年前にやめた。バイタル正常。結膜充血、咽頭発赤、後壁の濾胞形成なし。胸部聴診、レントゲンも異常を認めない。

 

問 適切な治療は

A アルブテロール吸入

B リシノプリル中止

C ロラタジン内服

D オメプラゾール内服

 

①犯人は誰だ?

 乾性咳嗽があり、リシノプリルはやめてみるのが最適だろう。8週間以上続く慢性咳嗽では、病歴、身体診察を仔細に取り、コモンな原因を探しにいく。レントゲンは全例で撮り、次の評価に行く前に、少なくとも4週間は禁煙とACEI中止を行ってみる。ACEI内服患者のおよそ15%の患者は乾性咳嗽を起こし、ACEやプロスタグランジンで代謝されるブラジキニンやサブスタンスPが原因と考えられている。この患者は遅発性であり、症状改善に薬剤中止後4週間はかかるかもしれない。稀に3ヶ月かかることもある。咳嗽が軽度でも患者のQOLが下がっている場合は代替薬を検討する。ロサルタン等のARBはよいオプションであり、プラセボと比較して咳嗽誘発頻度は変わらない。糖尿病患者の腎保護効果も証明されている。

②他の選択肢

 8週間持続する咳嗽では慢性咳嗽を起こす疾患を鑑別するが、気管支喘息や後鼻漏、逆流性食道炎の病歴はない。ACEI中止後4週間経っても改善がなければ他の疾患の精査を進める

 

POINT 薬剤中止後4週間は待ちましょう

Dicpinigaitis PV. Angiotensin-converting enzyme inhibitor-induced cough: ACCP evidence-based clinical practice guidelines. Chest. 2006;129(1 suppl):169S-173S. PMID: 16428706