栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

症例:BMJ 高齢者の軽度嚥下障害と咽喉頭異常感

case reportなり〜。
Globus sensationを球感覚と訳すか咽喉頭異常感と訳すかでしょうかねえ。
それにしても初めて知った病気。

症例:72歳男性 軽度嚥下障害と咽喉頭異常感

BMJ 2017;357:j2106

 72歳男性。3-4か月前から非進行性の嚥下障害と頸胸椎レベルの異常感覚(球感覚)を主訴に外来を受診された。鼻腔内視鏡は正常で胸部レントゲンは以下の通り。

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(本文より引用)

質問. 診断は

 

回答:
診断:血管輪による圧排

解答:
 レントゲンでは大動脈弓が右側に認められや上行大動脈による圧排が疑われる。

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(本文より引用)

解説:

 血管輪などの大動脈弓の異常は、乳幼児期・小児期に診断されるが、成人発症は珍しい。血管輪は様々なバリエーションがあり、およそ半分の症例は大動脈弓が重複、次に多いのが右側大動脈弓である。気管および食道はこの縦隔の血管構造物に取り囲まれ、圧迫されることで諸症状を来す。
 血管輪の頻度は年間0.2%程度で、成人では更に発症頻度が低い。成人の有症状症例は弧発例のみで、さらに高齢者では稀である。成人では、嚥下障害が最もよくある症状で、成人症例で症状をきたすのは、動脈硬化や高血圧、亀背、食道蠕動運動低下などの加齢性変化が関与している。
 バリウム造影は、非進行性の嚥下障害、蠕動関連問題、内視鏡検査に耐えられないもしくは安全には出来ない場合に用いられる。食道悪性腫瘍のRed flag signがある場合、上部消化管内視鏡検査を行うべきである。内視鏡では、食道の壁外圧迫が認められないもしくは診断されない可能性があり、検査正常でも症状が持続する場合にはバリウム検査を考慮する必要がある。症状が軽度の場合には、保存的に経過が見られることが多く、症状が重度の場合には手術を考慮する。縦隔の詳細な評価のためには造影CT検査が必要である。

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(本文より引用)

Learning Points:

 バリウム造影検査の非典型的な所見を診たら、臨床医は稀な病態を想起するべきである。高齢者であっても、咽喉頭異常感症や軽度の嚥下障害は稀な予測外の大動脈の先天性異常などの病因であることもある。
 壁外性食道圧迫は内視鏡では同定できない可能性がある。バリウム検査は上部消化管精査のために役割が残っており、高齢者で蠕動運動の問題があったり、内視鏡正常でも症状が持続する場合には検査を検討する。