栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:Retrocohort MSSA菌血症に対するナフシリンまたはセファゾリンとバンコマイシンの効果比較

MSSA菌血症に対するナフシリンまたはセファゾリンとバンコマイシンの効果比較
Comparative effectiveness of nafcillin or cefazolin versus vancomycin in methicillin-susceptible Staphylococcus aureus bacteremia

BMC Infectious Diseases 2011, 11:279

【背景】
 MRSAの頻度が増えてきて、ブドウ球菌感染症が疑われる状況では、エンピリカル治療でバンコマイシンなどのMRSAをカバーした抗菌薬を使用する臨床医が増えている。臨床医は、培養検査で菌種がMSSAと判明してもVCMを継続使用する傾向がある。しかし、バンコマイシンは腎毒性や持続菌血症、治療失敗などのアウトカムと関連することが知られている。
 本研究の目的は、MSSA菌血症患者に対するバンコマイシンとベータラクタム系抗菌薬(ナフシリン・セファゾリン)の効果を比較することである。アウトカムは、30日の院内死亡とした。
【方法】
 この後ろ向き観察研究は、2003年1月から2007年6月までに三次医療機関に入院した成人患者で、血液培養でMSSAが陽性となって、ナフシリン・セファゾリン・バンコマイシンの治療を受けた患者を組み入れた。Coxハザードモデルを用いて、ナフシリンまたはセファゾリンとバンコマイシンを比較して、独立した死亡リスクを評価した。同様の方法を用いて、バンコマイシンからナフシリンまたはセファゾリンへの切り換えによる生存利益を評価した。
 各モデルにおいてプロペンシティ・マッチスコアを用いて、多因子を補正した。
【結果】
 267人の患者が組み入れられた。14%(38/267人)がナフシリンまたはセファゾリン治療を受けており、51%(135/267人)がバンコマイシンとナフシリンまたはセファゾリンの両方の治療を受け、35%(94/267人)がバンコマイシンのみの治療を受けていた。30人(11%)が30日以内に死亡した。
 ナフシリンまたはセファゾリンを投与された患者では、バンコマイシン単独群と比較して、79%死亡率が低かった(HR 0.21:0.09-0.47)。エンピリカルにバンコマイシンが初期投与された122人のうち、ナフシリンまたはセファゾリンにスイッチされた群(66/122人)はバンコマイシン継続群よりも、69%死亡率が低かった(HR 0.31:0.10-0.95)

f:id:tyabu7973:20170528232242j:plain(本文より引用)

【結論】
 ナフシリンまたはセファゾリン投与されている患者では、バンコマイシンと比較して死亡率が低く、MSSAの培養結果が明らかになって変更してからもその効果は持続した。バンコマイシンが安易に使用されているが、MSSA菌血症の治療には、ナフシリンやセファゾリンによるメリットが大きい。

【批判的吟味】
・いつも通り論文のPECOから
P:MSSA菌血症患者
E:ナフシリンまたはセファゾリン治療群
C:バンコマイシン治療群
O:30日以内の院内死亡率
T:後ろ向き観察研究
・まずは観察研究レベルであること、プロペンシティマッチスコアを用いているとは言え、未知の交絡因子の補正は出来ていないと思います。
・本来はRCTで検証すべき内容です
・調整はされていますが、より重症の患者にVCMが経験的に使用されているかもしれません。

【個人的な意見】
 だいぶ古い文献ですが、ちょっと古典的なメルクマールになりそうな文献はまとめて載っけていこうと思います。今回はVCMダラダラだめだぜ、MSSAだったらしっかりCEZでね!というメッセージはありますね。また、CEZとナフシリンの比較では効果は同等で、副作用はCEZが少ないという報告(Antimicrob Agents Chemother. 2011 Nov;55(11):5122-6.)はいくつかありますね。まあ、おさらいでした。

✓ MSSA菌血症の治療では、ナフシリンまたはセファゾリンはバンコマイシンよりも効果的である