栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:生検部位/手湿疹/副作用評価

フィンゴリモドって何だ?と思ったのは僕だけですか?いまどきK志郎は言ってるのかな。では始めます。

 

Q1

 23歳女性。3週間前から咳嗽と痒みを伴う鼻汁。甲状腺機能低下症の既往あり。家族歴なし。内服はレボチロキシンのみ。体温37.9℃、血圧140/86、脈拍90、呼吸数18。膿性鼻汁があり血液も混ざっている。聴診上、び漫性にrhonchi聴取。皮疹、脱毛、関節腫脹なし。神経所見正常。喀痰培養とツベルクリン反応は陰性。グラム染色も陰性。胸部レントゲンでは肺結節影。副鼻腔のCTでは上顎洞、篩状洞に液面形成がある。

Laboratory studies:

Hematocrit

32%

Leukocyte count

12,000/µL (12 × 109/L)

Platelet count

440,000/µL (440 × 109/L)

Serum creatinine

Normal

Antinuclear antibodies

Positive

p-ANCA

Positive

Antimyeloperoxidase antibodies

Positive

Urinalysis

Normal

 

問 診断に寄与する検査は

A 腎生検

B 鼻粘膜生検

C 胸腔鏡下生検

D 気管支鏡下生検

 

①tissue is issue

 血痰の出る肺の結節影は肺の血管炎であることをかなり示唆する。診断には侵襲性を最小限にした胸腔鏡下肺生検が必要である。p-ANCA陽性(MPO-ANCA陽性)は顕微鏡的多発血管炎を示唆し、急速進行性糸球体腎炎や肺出血、発熱、関節痛、紫斑、多発性単神経炎を引き起こす。この患者は甲状腺疾患の既往があり、抗核抗体も陽性なのでANCAは偽陽性となりやすい。特にTPO抗体陽性の患者ではMPO-ANCAが偽陽性となる。ANCAの特異性を差し引いてもこの患者の診断には肺生検が必要である。

②他の選択肢

 ANCA関連血管炎による糸球体腎炎の診断には腎生検が必要だが、この患者は血尿、蛋白尿がない。

 鼻粘膜生検はより非侵襲的だが、診断の寄与する可能性は低い。

 肺の血管炎診断には気管支鏡下生検は不十分である。

 

POINT 目には目を肺には肺を

Ramsey J, Amari M, Kantrow SP. Pulmonary vasculitis: clinical presentation, differential diagnosis, and management. Curr Rheumatol Rep. 2010;12(6):420-428. PMID: 20882372

 

Q2

 40歳女性。6週間前からの手の皮疹。この皮疹は長年出たり消えたりを繰り返しているが、今回が最もひどい。また、体も痒い。幼少期に湿疹の既往があり、最近は季節性アレルギーである。他に既往はなく、薬も飲んでいない。バイタル正常。体幹・四肢は乾燥肌。手は特にひどく、かさかさで発赤があり、手背には裂創もある。足にはない。

 

問 診断は

A アトピー性皮膚炎

B 膿漏性角皮症

C 疥癬

D 白癬

 

①手湿疹

 アトピー性皮膚炎の既往のある患者の手の皮膚炎である。アトピー性皮膚炎は幼少期に始まる慢性の掻痒を伴う皮膚状態である。間欠的なフレアはあるが、一般的には年とともに和らいでいく。成人例では湿疹は消退傾向になるが、手の皮膚炎に移行しやすい。成人の表現型は敏感肌、手の皮膚炎、持続性湿疹である。職業的な増悪もあり、休業や転職となることもある。水仕事をする職業で手の皮膚炎の頻度が高い。診断は難しく皮膚生検は非特異的である。真菌、カンジダ、疥癬の診断にはKOH法が必要である。

②他の選択肢

 膿漏性角皮症は脊椎関節症に見られる手掌足底の過角化状態であり、ライター症候群の症状として知られている。

 疥癬は激しい痒みを伴う丘疹、水疱ができる。疥癬トンネルが観察でき、部位は指間、手関節屈側、ペニス、腋窩、乳頭、臍部、陰嚢、臀部が特徴的である。接触歴が重要である。

 白癬による皮膚感染症は頻度が高い。真皮表層、角質層に感染し、煩わしい痒みを引き起こす。部位は片手と両足のパターンが多く、乾いた痂皮があり、慢性化すると爪にも進展する。

 

POINT 成人のADは手にくる

Bikowski JB. Hand eczema: diagnosis and management. Cutis. 2008;82(4 suppl):9-15. PMID: 19202671
 

Q3

 29歳女性。繰り返す多発性硬化症の治療について相談。診断されたのは最近で、それまで2回の視神経炎を繰り返した。内服はない。血圧120/55、脈拍80、BMI 31。身体診察上特記所見なし。相談の結果、インターフェロンβ-1bを開始することとなった。

 

問 副作用のスクリーニングとして最適なのは

A 年1回の頭部MRI

B 年1回の眼科受診

C 6ヶ月毎に肝機能

D 6ヶ月毎にBUN、Cre

 

①副作用評価

 この患者は6ヶ月毎に肝機能を評価すべきである。インターフェロンβは様々な副作用を起こし、静注後のインフルエンザ様症状や肝機能障害、リンパ球減少、背景にある痙縮やうつ病、片頭痛の増悪を引き起こす。6ヶ月毎に肝機能をフォローし、必要があれば治療内容を見直す。一過性の肝酵素上昇はコモンだが、持続する場合は一時的に半分に減量したり、休薬後再開したりする。

②他の選択肢

 MRIは治療効果判定には有用だが副作用評価にはならない。

 眼科受診も多発性硬化症のフォローにはよいが副作用はわからない。フィンゴリモドを治療として使用する際は黄斑浮腫を起こすことがあるので眼科には定期受診する。

 インターフェロン治療は腎機能障害とは関連がない。

 

POINT IFNの副作用は肝機能障害

Goodin DS, Frohman EM, Garmany GP Jr, et al; Therapeutics and Technology Assessment Subcommittee of the American Academy of Neurology and the MS Council for Clinical Practice Guidelines. Disease modifying therapies in multiple sclerosis: report of the Therapeutics and Technology Assessment Subcommittee of the American Academy of Neurology and the MS Council for Clinical Practice Guidelines. Neurology. 2002;58(2):169-178. PMID: 11805241