栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

症例:Lancet 32歳 難治性潰瘍を伴う爪周囲炎

case reportなり〜。
これ潰瘍性大腸炎の合併症のひとつみたいですねえ。

症例:32歳男性 難治性潰瘍を伴う爪周囲炎

Lancet 2017; 389: 1740

 14年経過した潰瘍性大腸炎の既往のある32歳男性が、2014年12月に2か月程続く右拇指の軽い痛みを伴う膿性爪周囲病変を主訴に皮膚科クリニックを受診した。当初は高次医療機関で緑膿菌およびEnterobacter cloacaeの細菌性爪周囲炎の診断されていた。
 しかし、数週間にわたる広域全身性抗菌薬投与を繰り返したにも関わらず、症状は改善せず、培養では細菌も真菌も陰性で、皮膚病変は悪化し潰瘍化した。

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(本文より引用)

 潰瘍性大腸炎はプレドニゾロンによって症状コントロールされていた。過去2年間アダリムマブを投与され、繰り返す皮膚粘膜症状のために中止となったが、最終的に皮膚病変に対する確定診断はついていなかった。当院受診1か月前に代替としてのTNF-α阻害薬のインフリキシマブの投与を受けた。
 拇指病変の進行は、プレドニゾロンの漸減と関連していると考えられた。拇指の潰瘍出現後3か月経過したあたりでプレドニゾロンが中止され、インフリキシマブは3回目投与がなされた。拇指病変は更に悪化し、鼠径部に無症候膿疱性病変、硬口蓋に有痛性のびらんを認め、CDIによる下痢・腹痛症状も出現し、抗菌薬投与で治療された。
 診察では、右拇指全周性潰瘍性病変と大腿内側・陰嚢・会陰部にプラークを認めた。硬口蓋腹側と鼻孔、下口唇に波打つような浅いびらんを認めた。また、ごくわずかな特徴的なカタツムリの様なパターンを呈した膿疱が歯肉に認められた。

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(本文より引用)

 口腔粘膜、拇指、会陰部から生検がなされ、全ての病理組織が高度好酸球浸潤を認め、末梢好酸球増多も伴っていた。

質問. 診断は

 

回答:
診断:Pyodermatitis-pyostomatitis vegetans

解答:
 当初天疱瘡(増殖性天疱瘡またはIgA天疱瘡)が疑われたが、直接免疫蛍光検査では免疫グロブリン・補体・フィブリノーゲン沈着は認められなかった。末梢血好酸球増多と粘膜膿疱のカタツムリ(蝸牛)パターンから、pyodermatitis-pyostomatitis vegetansと診断した。

解説:

 pyodermatitis-pyostomatitis vegetansは、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患に合併した良性病変である。皮膚症状の特徴として、膿疱性、増殖性、潰瘍性病変を来す。末梢血好酸球と歯肉の特徴的なカタツムリ(蝸牛)パターンがポイントである。
 pyodermatitis-pyostomatitis vegetansはプレドニゾロン治療に良好な反応を示す。本患者では高力価のステロイド軟膏で速やかに改善したが、通常は全身性のステロイド投与が必要である。典型的・特徴的な皮膚病変の認識は、不適切な検査・治療を避けることに繋がる