栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:口唇の水疱/COPD増悪?/MF or S

祝日のない6月いかがお過ごしでしょうか。Q1のカリブ海行ってた野郎の金のネックレスに必要以上に食いつきすぎました。では始めます。

 

Q1

 35歳男性。1週間前にカリブ海へ旅行に行ってから唇が痛い。日焼けしており、背部、顔面、唇に有痛性水疱を伴っていた。日焼け部位は皮が剥けているが、口唇の水疱だけはよくなっていない。再発性の口唇ヘルペス以外の既往はない。薬は間欠的なアシクロビル内服のみ。バイタル正常。

Figure 13.

(MKSAPより)

 

問 診断は

A 光線性口唇炎

B 接触性皮膚炎

C コクサッキーウィルス感染症

D 単純ヘルペスウィルスの再活性化

 

①口唇の水疱

 口唇ヘルペスの再発である日光は口唇ヘルペスを惹起する重要な因子である。ヘルペスウイルスは三叉神経節に潜伏し、典型的には口唇の辺縁に水疱の集簇を引き起こす。水疱は24-48時間のうちに破裂、集簇を来し、7-10日で瘢痕なく消退する。紫外線の直接的な免疫抑制作用によって神経節内のHSV-1が活性化する。これはかなりありがちなことであり、予防的に経口抗ウィルス薬を用いたり、日光を避けるよう努めることで頻度や重症度が下がる。

②他の選択肢

 光線性口唇炎は外で過ごすことが多い人に起こる前癌病変である。下唇にできやすく、口唇の辺縁をまたいで痂皮や裂創、潰瘍形成等を来す。時間をかけて進展していく。

 日光による接触性皮膚炎が口唇に起こることはあるが、通常は痒くて煩わしいものである。

 コクサッキーウィルスは小児に手足口病を引き起こし、口腔内、手掌、足底に病変ができる。皮膚病変は丸い形で辺縁が明瞭な鮮やかな丘疹である。口腔内には小さなアフタもできる。発熱、咽頭痛がコモンな症状であり、口唇や歯肉はスペアされる。

 

POINT UVはヘルペス再発を誘発する

Ichihashi M, Nagai H, Matsunaga K. Sunlight is an important causative factor of recurrent herpes simplex. Cutis. 2004;74(5 suppl):14-18. PMID: 15603217

 

Q2

 82歳女性。1週間前から進行する倦怠感と息切れを主訴に救急外来を受診。独居で、家族は1ヶ月前から腰痛のため歩行が困難になってきていると言っており、アスピリンで対処していた。COPDの既往がありイプラトロピウムで治療中である。体温37.6℃、血圧146/82、脈拍86、呼吸数24、BMI 23。頻呼吸と呼吸努力が見られる。胸部レントゲンでは浸潤影や肺水腫はない。

Laboratory studies:

Blood urea nitrogen

42 mg/dL (15.0 mmol/L)

Serum creatinine

1.3 mg/dL (115 µmol/L)

Electrolytes

 

Sodium

138 meq/L (138 mmol/L)

Potassium

3.4 meq/L (3.4 mmol/L)

Chloride

106 meq/L (106 mmol/L)

Bicarbonate

18 meq/L (18 mmol/L)

Glucose

86 mg/dL (4.8 mmol/L)

Salicylate

62 mg/dL (4.5 mmol/L) (therapeutic range, 10-25 mg/dL [0.72-1.8 mmol/L])

Arterial blood gas studies (ambient air):

 

pH

7.42

PCO2

29 mm Hg (3.9 kPa)

PO2

68 mm Hg (9.0 kPa)

Urinalysis

Specific gravity 1.024; pH 5.2; no blood, protein, leukocyte esterase, ketones, or nitrites

 

問 適切な治療は

A アセタゾラミド

B 血液透析

C 人工呼吸

D 重炭酸ナトリウム投与

 

①サリチル酸中毒

 サリチル酸中毒には重炭酸ナトリウムの投与が有効である。サリチル酸中毒は典型的には酸塩基平衡を乱し、延髄呼吸中枢を刺激して呼吸性アルカローシスを引き起こす。より重症になると、サリチル酸だけでなく、乳酸やケトアシドーシスによるアニオンギャップ開大性代謝性アシドーシスを合併する。初期は耳鳴りや意識障害、頻呼吸、時に微熱を認める。直接的な胃粘膜障害はのちに嘔気・嘔吐を引き起こす。マネージメントは血中サリチル酸濃度、臨床症状、腎機能に依存する。動脈血のpHを7.5-7.6に保つことは細胞内へのサリチル酸取り込みを抑制し毒性を下げる。ハイドレーションと尿pH7.5-8.0はサリチル酸の排泄を促す。臨床的な改善が見られるまでは2時間毎にサリチル酸濃度、電解質、酸塩基平衡をフォローする。低カリウム血症は遠位尿細管でのサリチル酸再吸収を促進するので補正する。またサリチル酸は低血糖性脳症を惹起するので適宜グルコースを補う。

②他の選択肢

 アセタゾラミドは近位尿細管での重炭酸の再吸収を阻害しpHを上げるのでサリチル酸中毒では禁忌である。pHが上がるとサリチル酸の細胞内への取り込みが増し毒性が上がる。

 血液透析はサリチル酸濃度が80mg/dlを超えた時や意識障害、肺水腫、腎機能増悪時、薬物治療にも関わらず臨床的悪化を認めた時考慮する。

 人工呼吸は絶対適応出ない限り避けるべきで、pHが下がるのでサリチル酸中毒には向かない。

 

POINT まずメイロンなのね

Bora K, Aaron C. Pitfalls in salicylate toxicity. Am J Emerg Med. 2010;28(3):383-384. PMID: 20223401
 

Q3

 68歳女性。12年前からの乾燥して掻痒感のある紅斑。特に治療はしておらず、最近隆起し潰瘍化してきた。前年、抗菌薬が必要な副鼻腔・呼吸器感染症を繰り返し、食欲不振、体重減少を認める。既往は特になく、OTCの抗ヒスタミン薬を使用している。体温37.0℃、血圧110/60、脈拍75。両頚部リンパ節腫脹。びまん性の紅斑、丘疹があり、多くが潰瘍化している。他の表在リンパ節は触れず。腹部は肝脾腫を認める。末梢血のフローサイトメトリーは大きな異型のあるCD4細胞。CTでは横隔膜を隔てたリンパ節腫脹と肝脾腫。骨髄生検では、大きな異型のあるCD陽性細胞の浸潤があり、脳回様の核を有する。

Laboratory studies:

Hemoglobin

10 g/dL (100 g/L)

Leukocyte count

10,000/µL (10 × 109/L) with 70% neutrophils and 30% lymphocytes

Platelet count

90,000/µL (90 × 109/L)

Erythrocyte sedimentation rate

20 mm/h

Lactate dehydrogenase

300 units/L

β2-Microglobulin

4.1 mg/L (high)

 

問 適切なマネージメントは

A アレムツズマブ

B 外用コルチコステロイド

C 全身放射線照射

D 経過観察

 

①菌状息肉症またはセザリー症候群

 適切な治療はCD52に対するモノクローナル抗体であるアレムツズマブの投与である。菌状息肉症(皮膚のみ)及びセザリー症候群(皮膚+血液)は最もコモンな皮膚の非ホジキンリンパ腫である。菌状息肉症は限局する、乾燥、掻痒感を伴う紅斑で、経過観察されたり、ステロイドで治療されたりしていることが多い。全身に及ぶとリンパ節や皮膚、多臓器浸潤による臓器不全を引き起こす。脳回様の核を有するCD4陽性細胞が末梢血に浸潤しておりこの患者はセザリー症候群の状態である。進行すると免疫不全を起こし感染を繰り返す。皮膚以外に浸潤すればStageⅣとして治療を行う。アレムツズマブがいい適応である。

②他の選択肢

 限局している皮膚病変のみであれば外用ステロイドも有効である。

 放射線照射は同種幹細胞移植をする際行う。

 

POINT 治らない湿疹は要注意

Galper SL, Smith BD, Wilson LD. Diagnosis and management of mycosis fungoides. Oncology (Williston Park). 2010;24(6):491-501. PMID: 20568590