栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:RCT 高齢者の心血管一次予防に対するスタチン治療と通常ケアの効果

高齢者の心血管一次予防に対するスタチン治療と通常ケアの効果
Effect of Statin Treatment vs Usual Care on Primary Cardiovascular Prevention Among Older Adults
The ALLHAT-LLT Randomized Clinical Trial

JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2017.1442 Published online May 22, 2017.

【背景】
 心血管疾患の一次予防としてのスタチン治療は心血管合併症を減らしたが、一方で全死亡に対する効果は様々である。また、75歳以上の高齢者に対するスタチンの一次予防の効果エビデンスも十分ではない
【目的】
 ALLHAT-LLT(Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack trial)研究の脂質低下治療部分を用いて、スタチンの心血管疾患に対する一次予防効果を65-74歳と75歳以上の高齢者において評価した。
【デザイン・セッティング・患者】
 RCTの事後(post hoc)解析で二次解析が、心血管疾患既往のない65歳以上の高齢者に対して行われ、2867人の成人高血圧患者が組み入れられた。ALLHAT-LLT研究は1994年2月から2002年3月まで513カ所で行われていた。
【介入】
 プラバスタチンナトリウム 40mg/日 vs 通常ケア
【メインアウトカム】
 ALLHAT-LLT研究のプライマリアウトカムは全死亡。セカンダリアウトカムは疾患特異的死亡・非致死的心筋梗塞・致死的冠動脈疾患の複合アウトカム。
【結果】
 1467人(平均 71.3歳、48.0%女性)がプラバスタチン群、1400人(平均71.2歳、50.8%女性)が通常ケア群に割り付けられた。ベースラインのLDLコレステロールはプラバスタチン群 147.7mg/dL、通常ケア群 147.6mg/dLだった。6年後までにプラバスタチン群 109.1mg/dL、通常ケア群 128.8mg/dLだった。6年経過時点でプラバスタチン群は42/253(16.6%)がスタチンを内服しておらず、通常ケア群は71.0%がスタチンを内服していなかった。
 全死亡に対してプラバスタチン群 vs プラセボ群のHRを算出すると、65-74歳の高齢者ではHR 1.18(0.97-1.42)と有意差なし。75歳以上ではHR 1.34(0.98-1.84)とこちらも有意差を認めなかった。心血管イベントの発症率は両群で有意差なく、多変量解析でも両群差は認めず、治療群や年齢での交互作用も認めなかった。

f:id:tyabu7973:20170615010846j:plain(本文より引用)


【結論】
 脂質異常症・高血圧を合併した高齢者に対するプラバスタチンの一次予防効果は有意では無く、75歳以上の高齢者でも変わらなかった。

【批判的吟味】
・まずは論文のPICOから
P:ALLHAT研究に組み入れられていた高血圧患者で心血管イベントの既往がない患者
I:プラバスタチン40mg群
C:通常ケア群
O:全死亡
T:RCTの二次解析
・研究としてはRCTの事後的二次分析であることに中が必要
・副作用情報の報告がない
・オープンラベル研究でバイアスリスクは高い
・通常ケアの質がコントロールされていないので、食事・運動療法の内容に差が出ている可能性がある
・経過中にクロスオーバーがおき、スタチン群がスタチンを止めたり、通常ケア群がスタチンを内服したりはしています
・今回使用されたスタチンは古い世代なのでいわゆるストロングスタチンではありません。
過去の先行研究では高齢者においてもスタチンの一次予防効果はある程度証明されていますが、今回の結果は高齢者の一次予防では死亡に対する影響は余り期待できないかも?という結果。
【個人的な意見】
 こうやってスペシフィックにこの群には効きませんよ〜というエビデンスも今後重要になってきます。とはいえ、質の高いリアルワールドデータが必要ですね

✓ 高齢者に対するプラバスタチンは通常ケアと比較して全死亡を減らさない