栃木県の総合内科医のブログ

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症例:BMJ 異常な骨盤レントゲン

case report。
今回はまたBMJから。

症例:95歳女性 異常な骨盤レントゲン

BMJ 2017;357:j2593 doi: 10.1136/bmj.j2593 (Published 2017 June 15)

 95歳女性が転倒して入院した。股関節骨折を起こしていた。既往として、Alzheimer病・高血圧・2型糖尿病があり、メトホルミンを内服していた。
 入院時の骨盤レントゲンは以下の通り。

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(本文より引用)

質問. 股関節骨折以外の診断は

 

回答:
診断:右股関節骨折+気腫性膀胱炎(偶発所見)

経過:

 骨盤のレントゲンでは、膀胱と思われる部位に、周囲リング状のガス像を認め、気腫性膀胱炎が示唆される。同時に右大腿骨頚部骨折も認められる。検査結果では、白血球数とCRPの上昇が見られた。尿培養では、Klebsiella pneumoniaeが検出され、血液培養は陰性だった。

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解説:

 気腫性膀胱炎は、膀胱壁および管腔内のガス産生を特徴とする稀な疾患である。ガス産性菌による膀胱感染によって生じる。発症リスクには糖尿病、神経因性膀胱、膀胱出口閉塞、再発性尿路感染症がある。
 気腫性膀胱炎の発生率は女性の方が高く、2007年のレビューでは全体の67%が女性だった。糖尿病で血糖コントロールが不良な患者の方が起こしやすい。気腫性膀胱炎患者ではしばしば排尿障害があるが、無症候の患者もいる。CT検査がもっとも感度が高い検査であり、壊死性膀胱炎、気腫性腎盂腎炎、瘻孔形成などの合併症の同定にも役立つ。
 ヨーロッパ泌尿器科学会では、抗菌薬投与は2週間を推奨しているが、治療期間は個別症例によって異なる可能性がある。この場合には既往歴や全身状態、年齢、人工物があるかなどを考慮し、4-6週の抗菌薬投与が推奨されることもある。
 患者は、通常尿道カテーテルによる尿ドレナージと適切な抗菌薬で症状は改善する。感染の改善に伴い、ガスは組織に急速に吸収され、外科的創面切除や膀胱摘除術も必要になることはほとんどない。
 気腫性膀胱炎の診断は時に難しく、特に高齢者や糖尿病、認知症がある患者では痛み自体も明確ではないため余計に難しい。