栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:コカイン使用者/日光過敏/侵襲性肺アスペルギルス症

いざ訳してみると解いてる時解釈ミスってたなと気づくことがあり勉強になります。C先生と同意見ですがほんやくコンニャク欲しいですね笑

 

Q1

 27歳女性。1週間前から増悪する労作時胸部圧迫感。安静にすると軽快する。ニトログリセリンで症状が治まった30分後に来院した。7年前にホジキンリンパ腫に対し計90Gyの放射線治療を受けた。かつてコカインを使ったことがある。発熱、皮疹はなく、薬は飲んでいない。発熱なし。血圧110/50、脈拍98、呼吸数14。聴診上特記所見なし。薬物検査陰性。トロポニンI 0.01ng/ml。PT、APTT正常範囲。胸痛時の心電図ではV1-4でST下降。冠動脈主幹部に60%狭窄、前下行枝にも60%狭窄。

 

問 胸痛の原因は

A 抗リン脂質抗体症候群

B コカインによる冠動脈攣縮

C 冠動脈疾患

D 川崎病

 

①若年者の胸痛

 放射線治療後の冠動脈疾患を診断する。この若年女性の胸痛は不安定狭心症によるものだと考える。若年者の放射線治療は独立した危険因子である。典型的には冠動脈の近位部にできやすく、細胞外脂肪沈着を伴わない線維性増殖が起きている。心臓カテーテルによる介入は線維性変化には向いていない。

②他の選択肢

 抗リン脂質抗体症候群はAPTTやPTが延びるものである。この抗体の存在は動静脈血栓や流産の原因となる。

 コカイン誘発性の冠攣縮は病歴から妥当であるが、薬物検査は陰性であり、典型的にはSTは上昇する。

 川崎病では発熱、結膜充血、口腔内粘膜発赤、四肢の浮腫・紅斑、頚部リンパ節腫脹、冠動脈瘤、冠動脈内血栓・閉塞が小児期に起こりやすく、成人になると動脈瘤が残存する。この患者は冠動脈瘤がない。

 

POINT 放射線治療後の冠動脈狭窄に注意

Darby SC, Cutter DJ, Boerma M, et al. Radiation-related heart disease: current knowledge and future prospects. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2010;76(3):656-665. PMID: 20159360

 

Q2

 44歳男性。4週間前から無症状の日光誘発性の円形紅斑。病変は日光露光部に限局し持続している。4ヶ月前に高血圧の診断を受けアテノロールが始まった。2ヶ月前、血圧コントロール不良のためヒドロクロロサアザイドが追加された。バイタル正常。

Figure 67.

(MKSAPより)

病変は上腕、体幹にはなく、痂皮や関節の炎症所見、腱付着部炎、指炎はない。顔面には皮疹なく、眼窩周囲、頬骨部にもない。口腔内潰瘍、脱毛、筋力低下なし。KOH陰性。

Laboratory studies:

Antinuclear antibodies

Titer 1:160

Anti-Ro/SSA antibodies

Positive

Anti-La/SSB antibodies

Negative

Antihistone antibodies

Positive

Complete blood count

Normal

Comprehensive metabolic profile

Normal

Urinalysis

Normal

 

問 適切なマネージメントは

A メトトレキサート開始

B 外用テルビナフィン

C サイアザイド中止

D CKとアルドラーゼ測定

 

①日光過敏

 適切なマネージメントはサイアザイドをやめることである。薬歴から考えると薬剤誘発性の亜急性皮膚エリテマトーデス(SCLE)であり、サイアザイドは起こしやすい。全身症状を伴わない降圧薬追加後の皮疹があり、中止をまず検討する。古典的なプレゼンテーションは日光露光部に限局した境界明瞭な円形の多形紅斑である。SCLEの患者では抗核抗体の軽度上昇やSS-A/SS-B抗体陽性が日光過敏のある例でよく見られる。抗ヒストン抗体は非特異的ではあるが薬剤性ループスで見られることがある。

②他の選択肢

 SCLEの患者は全身症状をめったに伴わず、血算、生化学、尿検査は正常である。CKとアルドラーゼは筋肉の炎症マーカーであるがこの患者はそのような症状がない。皮膚筋炎では症状のない筋酵素上昇があるが、皮疹が典型的でない。ヘリオトロープ疹では眼窩周囲に対称性の紫斑が生じる。ゴットロン斑はわずかに隆起した紫斑がMCP関節やPIP関節、DIP関節の骨の出っ張った部分に生じる。

 メトトレキサートはSLEの治療で使われるが、この患者は全身症状がなく、SLEのファーストチョイスでもない。

 外用テルビナフィンは白癬の薬でKOHは陰性であった。

 

POINT 薬剤性ループスの特徴を理解せよ

Sontheimer RD, Henderson CL, Grau RH. Drug-induced subacute cutaneous lupus erythematosus: a paradigm for bedside-to-bench patient oriented translational clinical investigation. Arch Dermatol Res. 2009;301:65-70. PMID: 18797894 
 

Q3

 27歳女性。2日前からの発熱、血痰、胸痛。急性骨髄性白血病の診断を受け、2週間前に化学療法を終えた。経過中、重度の白血球減少、血小板減少、発熱がありセフェピムとバンコマイシンで治療された。体温38.9℃、血圧110/70、脈拍100、呼吸数20。左肺底部に胸膜摩擦音聴取。白血球100/μl、血清ガラクトマンナン抗体陽性で侵襲性肺アスペルギルス症と診断された。レントゲンでは左下肺野に結節影。

 

問 適切な治療は

A イトラコナゾール

B アムホテリシンB

C ミカファンギン

D ボリコナゾール

 

①侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)

 ボリコナゾールで治療するべきである。患者は侵襲性肺アスペルギルス症の可能性があり、白血病既往で白血球減少を伴っている。血管侵襲のある真菌感染症の特徴は、発熱、咳嗽、胸痛、血痰、胸部レントゲンでの結節影である。CTではハロサインが特徴的で、結節周囲の淡い濃度域で出血を反映しているが、血管侵襲の所見であり、アスペルギルス症に特異的ではない。大規模RCTでボリコナゾールの効果が示されており、診断には気管支肺胞洗浄液や生検(経皮針生検や胸腔鏡下生検)が用いられる。ガラクトマンナン抗体は非培養検査で、血液悪性腫瘍の患者では感度が高い。CTと組み合わせると治療開始の目安にはなる。

②他の選択肢

 アムホテリシンBやイトラコナゾール、ミカファンギン等のエキノキャンディン系薬は難治例では適切であるがファーストチョイスではない

 

POINT IPAの1st choiceはボリコナゾール

Walsh TJ, Anaissie EJ, Denning DW, et al; Infectious Diseases Society of America. Treatment of aspergillosis: clinical guidelines of the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2008;46(3):327-360. PMID: 18177225