栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:アルコール依存症/骨粗鬆症/心不全治療

先週は三宅島代診のためお休みしてました。南の島も梅雨でしたね。では張り切ってHere we go!

 

Q1

 56歳男性。意識がないところを妻が発見し、救急要請。アルコール依存症の既往あり。現着時、一時的な全般性の痙攣発作を認めたが治まった。ロラゼパム、チアミンが投与され、5%ブドウ糖液、生理食塩水で計1Lの輸液が施された。患者は痩せてだらしがなく傾眠傾向。体温35.8℃、血圧100/50、脈拍110、呼吸数18。来院30分後に診察すると、意識は回復してきており、筋力も正常だった。

Laboratory studies:

 

Initial

30 Minutes Later

Blood urea nitrogen

56 mg/dL (20 mmol/L)

42 mg/dL (15 mmol/L)

Serum creatinine

1.6 mg/dL (141 µmol/L)

1.5 mg/dL (133 µmol/L)

Electrolytes

   

Sodium

133 meq/L (133 mmol/L)

135 meq/L (135 mmol/L)

Potassium

3.5 meq/L (3.5 mmol/L)

3.4 meq/L (3.4 mmol/L)

Chloride

92 meq/L (92 mmol/L)

97 meq/L (97 mmol/L)

Bicarbonate

16 meq/L (16 mmol/L)

20 meq/L (20 mmol/L)

Ethanol

88 mg/dL (19 mmol/L)

-

Glucose

90 mg/dL (5.0 mmol/L)

102 mg/dL (5.7 mmol/L)

Osmolality

320 mosm/kg H2O

-

Arterial blood gas studies (ambient air):

   

pH

7.15

7.30

PCO2

40 mm Hg (5.3 kPa)

37 mm Hg (4.9 kPa)

PO2

86 mm Hg (11.4 kPa)

92 mm Hg (12.2 kPa)

Urinalysis

pH 5.4; trace protein; 1+ ketones; few hyaline casts

-

 

問 適切なマネージメントは

A ホメピゾール

B 血液透析

C 重炭酸ナトリウム

D 保存療法

 

①アルコール依存症

 この患者はアルコール離脱痙攣に酸塩基平衡異常を合併している。アニオンギャップ開大性代謝性アシドーシスがあり、呼吸性代償ができておらず呼吸性アシドーシスも合併している。アニオンギャップ開大の理由として最も考えられるのは痙攣に伴う乳酸アシドーシスにアルコール性ケトアシドーシスを合併していることである。十分な補液とブドウ糖補充で酸塩基平衡が補正されるかどうかが診断に寄与する。呼吸性アシドーシスは痙攣後状態とアルコール多飲で説明できる。痙攣関連の乳酸アシドーシスの治療目標は十分な補液を行いつつ、痙攣再発を予防することである。

②他の選択肢

 ホメピゾールはアルコールデヒドロゲナーゼの阻害薬でありメタノールやエチレングリコールが毒性物質に代謝されるのを最小限に抑える作用がある。両者が投与されると浸透圧ギャップが開大する。

Osmolal Gap = Measured Plasma Osmolality - Calculated Plasma Osmolality, where,

Plasma Osmolality (mosm/kg H2O) = 2 × Serum Sodium (meq/L) + Plasma Glucose (mg/dL)/18 + Blood Urea Nitrogen (mg/dL)/2.8 (+ Ethanol [mg/dL]/3.7, if present)

この患者の浸透圧ギャップはエタノールの影響を差し引くと10未満であり、ホメピゾールは不要である。

 血液透析はエチレングリコール、メタノール、プロピレングリコール、イソプロピルアルコールの重篤な中毒で使用する。この患者は補液で改善してきており不要である。シュウ酸カルシウム結晶がないこともエチレングリコール中毒の可能性を下げる。

 重炭酸ナトリウムの投与はpH<7.15のアシドーシスでは推奨されるがこの患者はすでに補正されている。

 

POINT 浸透圧ギャップからわかること

Rachoin JS, Weisberg LS, McFadden CB. Treatment of lactic acidosis: appropriate confusion. J Hosp Med. 2010;5(4):E1-E7. PMID: 20394011

 

Q2

 66歳女性。健康診断でDEXAのスクリーニングを行い骨粗鬆症を指摘された。骨折の既往なく、副甲状腺疾患や骨塩異常の家族歴はない。高血圧でリシノプリルを内服しており、他の薬剤はサプリメント含め飲んでいない。バイタル正常、BMI 22。歯並びはよく、少し後弯があるのみで他に特記所見なし。

Laboratory studies:

Albumin

4.0 g/dL (40 g/L)

Calcium

8.7 mg/dL (2.2 mmol/L)

Creatinine

0.7 mg/dL (61.9 µmol/L)

Phosphorus

2.9 mg/dL (0.94 mmol/L)

Parathyroid hormone

176 pg/mL (176 ng/L)

DEXA結果は腰椎、大腿骨頚部、股関節のTスコアはそれぞれ-2.1、-3.0、-2.5であった。

 

問 適切なマネージメントは

A 1,25(OH)ビタミンD測定

B 25(OH)ビタミンD測定

C 副甲状腺摘出術

D 1年後DEXA再検

 

①骨粗鬆症

 25(OH)ビタミンDを測定すべきである。最近の骨塩定量で股関節の骨粗鬆症があり、採血ではPTH高値、カルシウムとリンが低値である。二次性の副甲状腺機能亢進症のパターンであり、腎機能正常のため、高齢者ではビタミンD欠乏が疑われる。よって25(OH)ビタミンD測定が妥当である。

②他の選択肢

 ビタミンD欠乏症では血清カルシウムが下がり、代わりに上がったPTHが25(OH)ビタミンDから1,25(OH)ビタミンDへの変換を亢進するため25(OH)ビタミンDの方がより情報が大きい。1,25(OH)ビタミンDが正常でもビタミンD欠乏症は否定できない。

 PTHは生理的に正常反応をしているので摘出術は不適切である。

 骨粗鬆症の診断はついており、精査・治療の必要があるため、1年後の再検は推奨されない。

 

POINT 低Ca血症の評価は慎重に

Holick MF, Binkley NC, Bischoff-Ferrari HA, et al; Endocrine Society. Evaluation, treatment, and prevention of vitamin D deficiency: an Endocrine Society clinical practice guideline [erratum in J Clin Endocrinol Metab. 2011;96(12):3908]. J Clin Endocrinol Metab. 2011;96(7):1911-1930. PMID: 21646368
 

Q3

 70歳男性。1週間前に急性の非代償性心不全で入院した。近頃は、病院周囲を200ヤード歩くと倦怠感と息切れで休んでしまう。非虚血性心筋症の既往があり、1年前にICDを植え込んでいる。他にStageⅠのCOPDがあり、内服薬はリシノプリル、ブメタニド、ジゴキシン、スピロノラクトンで、必要時アルブテロール吸入を使用している。血圧90/70、脈拍80。胸骨左縁にLevine2/6の汎収縮期雑音を聴取し、心尖部へ放散している。経静脈の虚脱はなく、呼吸音は正常。Ⅲ音、浮腫なし。心電図ではQRS間隔は110msecの洞調律。心臓超音波ではEF20%、左室肥大、中等度の僧房弁逆流があるが解剖学的な異常はない(1年前と同様の所見)。

 

問 治療は

A 僧房弁置換術

B スピロノラクトンをエプレレノンに変更

C コハク酸メトプロロール開始

D ペースメーカー機能を追加

 

①心不全治療

 収縮不全の治療。この患者は長時間作用型のメトプロロールであるコハク酸メトプロロールかカルベジロールを開始すべきである。β遮断薬は収縮不全の心不全では症状に関わりなく(無症状や軽度の症状を含む)投与するが、非代償性の急性期で体液量過多や心拍出量低下のある時点では始めない。重度の心不全患者でさえ、臨床的なベネフィットがあり忍容性が高い。呼吸器疾患のある患者でもβ1選択性のメトプロロールやビソプロロールは副作用が少ない。始めるタイミングは退院前の状態が安定した時期である。

②他の選択肢

 この患者は心筋症に伴う左室肥大により二次的に僧房弁逆流症となっているが、外科的な治療が予後を改善したというエビデンスは現時点ではない。

 エプレレノンは心筋梗塞後の心不全や高血圧の治療として使われる。スピロノラクトンの代替薬となるが、女性化乳房の副作用がある時に選択肢となる。

 ペースメーカー機能の追加は、NYHAⅢ-Ⅳの重度の心不全があり、EFが35%を切り、QRS幅が120msecを超えるような伝導障害が内服治療により改善しない時に適応となる。

 

POINT HFrEFの治療はβ遮断薬

Sirak TE, Jelic S, Le Jemtel TH. Therapeutic update: non-selective beta- and alpha-adrenergic blockade in patients with coexistent chronic obstructive pulmonary disease and chronic heart failure. J Am Coll Cardiol. 2004;44(3):497-502. PMID: 15358010