栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:若年者の急性肝不全/若年女性の貧血/非複雑性腎盂腎炎

タイトルがめちゃ長い説。今週は若年女性ばかりでした。では張り切って!

 

Q1

 22歳女性。3日前からの暗い色の尿、腹部膨満感で救急外来を受診。既往歴は特になく、内服は経口避妊薬のみ。体温36.8℃、血圧100/62、脈拍88、呼吸数18、BMI 24。意識状態変化なし。眼球結膜黄染あり。心音、呼吸音正常。腹部膨満あるが腸雑音は正常。

Laboratory studies:

Hematocrit

26%

Leukocyte count

7200/µL (7.2 × 109/L)

Reticulocyte count

5%

Platelet count

138,000/µL (138 × 109/L)

INR

3.1 (normal range, 0.8-1.2)

Alkaline phosphatase

32 units/L

Alanine aminotransferase

109 units/L

Aspartate aminotransferase

225 units/L

Total bilirubin

13 mg/dL (222.3 µmol/L)

Direct bilirubin

4.5 mg/dL (77.0 µmol/L)

Hepatitis A virus IgG

Positive

Hepatitis B surface antigen

Negative

Antibody to hepatitis B surface antigen

Positive

Hepatitis C virus antibody

Negative

Urine drug screen

Negative

腹部超音波検査では、結節形成のある肝臓と脾腫、少量の腹水を認めた。

 

問 診断は

A アセトアミノフェン中毒

B 急性ウィルス性肝炎

C 原発性胆汁性肝硬変(PBC)

D ウィルソン病

 

①若年者の急性肝不全

 劇症型のウィルソン病を診断せよ。若年者の急性肝不全を見たら常にウィルソン病を考えるべきである。付随する状況として、網状赤血球上昇と間接型優位の溶血性貧血がありウィルソン病に特徴的である。また、亜鉛はアルカリホスファターゼ(ALP)産生の補因子であり、銅の過剰状態は亜鉛と競合してALP産生を阻害するためALPは低値となる。ウィルソン病と気づくことが重要であり、治療は肝移植である。肝不全に至ったウィルソン病で肝移植をしない場合、致死率は100%であり、移植しないと生存が望めない。

②他の選択肢

 アセトアミノフェン中毒は問診から予測でき、尿検査でその代謝物が引っかかる。この患者はアセトアミノフェンの使用歴がなく、尿検査も陰性である。アセトアミノフェン中毒は間接型優位の高ビリルビン血症や溶血は起こさない。

 急性ウィルス性肝炎(最もコモンなものはA・B型肝炎)は血清学的に否定的である。HBs抗体やA型肝炎ウィルスに対するIgG抗体は既感染かワクチンの影響である。

 PBCは急性肝不全は起こさず緩徐に進行する。またPBCによる高ビリルビン血症は直接型優位であり典型的にはALPは著明に上昇する。

 

POINT 若年発症急性肝不全には要注意

  • Moini M, Mistry P, Schilsky ML. Liver transplantation for inherited metabolic disorders of the liver. Curr Opin Organ Transplant. 2010;15(3):269-276. PMID: 20489626

 

Q2

 22歳女性。6ヶ月前からだんだん運動耐容能が下がり、体調不良の訴え、頭痛がある。生来健康で食事も普通。内服薬はない。体温36.7℃、血圧110/72、脈拍88、呼吸数16、BMI 22。眼瞼結膜貧血あり。心音、呼吸音正常。神経学的異常も認めない。脾腫なし。

Figure 61.

(MKSAPより)

 

問 効果的な治療は

A 鉄剤筋注

B 鉄剤静注

C 鉄剤内服

D 輸血

 

①若年女性の貧血

 適切な治療は鉄剤内服である。鉄欠乏の原因は出血か吸収障害か利用過剰である。妊娠可能年齢の女性は、子宮や消化管からの出血がなくても、正常月経のみで鉄欠乏性貧血を起こしうる。軽度の鉄欠乏では貧血が起こる前に、倦怠感、体調不良、いらいら、運動耐容能低下が見られることもある。この患者は月経による出血で鉄欠乏となっている可能性が高い。鉄欠乏性貧血の末梢血スメアは、小球性低色素性でanisopoikilocytosisというサイズと形の変化を認める。RDWは血球の大きさの違いを見るもので、上昇していれば、鉄、葉酸、ビタミンB12などの栄養障害を考える。鉄欠乏性貧血の患者では軽度の血小板増多が見られるが、鉄剤投与によって改善するため、ヒドロキシウレアのような血球を減少させる薬剤は不要である。ただの鉄欠乏性貧血の場合、費用と効果から経口鉄剤が最も理にかなっている。

②他の選択肢

 非経口の鉄剤は血液透析中や、吸収障害、忍容性のない患者に取っておく。

 輸血はひどい有症状の貧血で投与により心不全や心筋梗塞等の心血管合併症が防げる場合に使用する。

 

POINT 鉄欠乏性貧血はまず経口鉄剤

  • Killip S, Bennett JM, Chambers MD. Iron deficiency anemia. Am Fam Physician. 2007;75(5):671-678. PMID: 17375513
 

Q3

 32歳女性。2日前から尿量減少、尿意切迫感、頻尿があり、前日から発熱。嘔気、嘔吐なし。体温38.5℃、血圧120/70、脈拍90、呼吸数12。右側腹部に打診で痛みあり。尿中白血球≧20、細菌4+。妊娠反応陰性。

 

問 尿培養採取後のエンピリック治療は

A アンピシリン

B シプロフロキサシン

C ニトロフラントイン

D ST合剤

 

①非複雑性腎盂腎炎

 この患者は軽症の腎盂腎炎である。入院の希望がなければ、経口シプロフロキサシンを7日間投与する。初回シプロフロキサシン400mgを静注するかは状態で判断する。急性非複雑性腎盂腎炎の治療選択は重症度、地域のアンチバイオグラム、アレルギーによって変わる。耐性が10%未満であれば治療可能である。フルオロキノロンの耐性が10%を超えていれば、セフトリアキソンのような長時間作用型のβラクタムやアミノグリコシドを単回静注する。

②他の選択肢

 βラクタムは腎盂腎炎の治療には向いておらずアンピシリンは耐性率が高い。

 ニトロフラントインは腎臓への移行性が悪く使用しない。

 ある研究では、軽症から中等症の女性の腎盂腎炎の治療として、7日間のシプロフロキサシンと14日間のST合剤を比較しているが、シプロフロキサシンの方が臨床的にも微生物学的にも治癒率が高かった。原因微生物が判明すれば選択枝となる。

 

POINT 地域の耐性化率を必ずチェック

  • Gupta K, Hooton TM, Naber KG, et al; Infectious Diseases Society of America; European Society for Microbiology and Infectious Diseases. International clinical practice guidelines for the treatment of acute uncomplicated cystitis and pyelonephritis in women: a 2010 update by the Infectious Diseases Society of America and the European Society for Microbiology and Infectious Diseases. Clin Infect Dis. 2011;52(5):e103-e120. PMID: 21292654