栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:軍隊上がりの頭痛/C型肝炎×紫斑/短腸症候群

MKSAP難しいですね。知識不足を実感。したたかに積み重ねていきましょう。

 

Q1

 28歳男性。持続性、びまん性、帯状の頭痛が軽度あり、光過敏はあるが、音過敏や嘔気はない。最近、戦地での10年間の軍務が終了した。戦闘で外傷を負い、戦車内で爆発に伴う一過性の聴力障害を経験した。それ以来、間欠的なめまい、耳鳴、集中力低下、いらいら感を自覚している。悪夢はなく眠れており、トラウマやフラッシュバックは認めていない。身体所見、神経学的所見に異常なく、血液検査でも異常はない。

 

問 診断は

A メニエール病

B 片頭痛

C 脳震盪後症候群

D 外傷後ストレス障害(PTSD)

 

①軍隊上がりの頭痛

 最も考えられるのは脳震盪後症候群(postconcussion syndrome)であり、脳震盪後に身体症状、神経症状、精神症状が混合して出現する。コモンな症状は頭痛、倦怠感、不眠症、集中力・記憶力低下、抑うつ、不安、いらいら感であり、めまいや耳鳴もよく見られる。軍務従事者の10-20%に脳震盪の経験があり、そのうち5%程度が脳震盪後症候群になる。注意力、言語理解、理論家能力、情報処理能力を評価する障害スコアが対照群よりも落ちていることがわかっている。また、PETやCTによる機能的な画像検査での異常も報告されている。病態生理学は未だ不明な点が多い。

②他の選択肢

 メニエール病はめまい、耳鳴、感音性難聴を伴うがこの患者の精神症状が説明できない。

 光過敏以外、片頭痛の診断基準は満たしていない。

 PTSDは記憶障害やいらいら感等の精神症状を引き起こすが、この患者はトラウマやフラッシュバックがない。

 

POINT PCSの多彩な症状に注目

  • Evans RW. Persistent post-traumatic headache, postconcussion syndrome, and whiplash injuries: the evidence for a non-traumatic basis with an historical review. Headache. 2010;50(4):716-724. PMID: 20456159

 

Q2

 44歳男性。両下肢痛で救急外来を受診。1週間前に両足に紅斑が出現し、ここ数日で範囲が拡がり悪化してきた。足関節と膝関節の痛みもあり、両下腿に浮腫を認める。6年前にC型肝炎の指摘があったが、それ以外の既往はない。血圧155/92、他のバイタルは正常。びまん性で触知可能な枝分かれのない紫色丘疹を両側下腿に認める。膝から下に1+の両側浮腫。滑膜炎所見なし。

Laboratory studies:

Complement

 

C3

12 mg/dL (120 mg/L)

C4

34 mg/dL (340 mg/L) (normal range, 13-38 mg/dL [130-380 mg/L])

Hepatitis C viral load

>1,000,000 copies/mL

Rheumatoid factor

>20 units/mL (20 kU/L)

Urinalysis

2+ protein; 2+ blood; 20 erythrocytes/hpf; 10 leukocytes/hpf

 

問 診断は

A クリオグロブリン血症性血管炎

B ヘノッホ・シェーンライン紫斑病

C 壊死性肢端紅痛症

D 晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)

 

①C型肝炎×紫斑

 この患者はクリオグロブリン血症性血管炎による紫斑が出現している。C型肝炎の50%でクリオグロブリン血症が起きており、クリオグロブリン血症の90%にC型肝炎の合併を見る。診断は血清クリオグロブリンの測定である。他にも低補体血症やリウマチ因子の上昇が認められる。皮膚生検は白血球破砕性血管炎の所見である。クリオグロブリンは寒冷凝集する免疫グロブリンであるため、四肢末梢に起こりやすい。原発性マクログロブリン血症や多発性骨髄腫、結合組織疾患、HCV感染に関連している。筋力低下や関節痛、末梢神経障害、糸球体腎炎を引き起こすこともある。

②他の選択肢

 ヘノッホ・シェーンライン紫斑病は皮膚の小血管に白血球破砕性血管炎を引き起こす。小児や若年成人に起こりやすく、しばしば溶連菌感染後に起こる。時に腹痛や腸重積、腎障害を起こすこともある。咽頭痛、発熱はなく、HCV感染も考えると可能性は低い。

 壊死性肢端紅痛症はC型肝炎患者の下肢に痂皮、びらんを伴う色素沈着性紅斑を生じる。報告された症例は全例C型肝炎に罹患しているが、亜鉛欠乏の関連もあるとされる。全身症状は出ない。

 PCTは露光部に水疱やブラを伴い、顔面、手背、頭皮に起こりやすい。PCTの50%にHCV感染がある。この患者は水疱がない。

 

POINT HCV患者関連の皮膚疾患を復習

  • Charles ED, Dustin LB. Hepatitis C virus-induced cryoglobulinemia. Kidney Int. 2009;76:818-824. PMID: 19606079
 

Q3

 58歳男性。入院4日前から重度の急性腹痛があり、腸間膜の虚血が見つかった。大量の小腸切除が行われ180㎝が残存、結腸は残された。術後4日目から経腸栄養が開始され徐々に量が増えてきた。夜起きてしまうくらいの重度の下痢がある。発熱はなく、腹痛の再発や増悪はない。使用薬剤は低分子ヘパリン、シプロフロキサシン、メトロニダゾール。ロペラミドを1日4回飲んでいる。体温36.2℃、血圧118/60、脈拍68、呼吸数12、BMI 25。腹部には手術痕があり治癒傾向。腸蠕動音は亢進し、腹部全体に圧痛を認めるが、術後として了解可能であった。採血では、電解質、血糖、TSHは正常。便培養、PCRでCDは陰性であった。

 

問 適切なマネージメントは

A 経腸栄養から脂質を減らす

B ロペラミド増量

C コレスチラミン開始

D オメプラゾール開始

E 経口摂取中止

 

①短腸症候群

 オメプラゾールのようなPPIを開始すべきである。小腸を大量に切除して、短腸状態の患者では、術後、胃酸が著しく過多になる。胃酸は膵リパーゼを不活化し、重度の下痢と残腸の潰瘍形成を引き起こすしたがって、小腸大量切除後の患者はPPIを内服すべきである。

②他の選択肢

 胆汁酸塩の欠乏により長鎖脂肪酸が処理できず下痢が起きているので、経腸栄養の脂質を減らすと症状が少しはよくなるかもしれない。

 ロペラミドを増量すると下痢はコントロールできるかもしれないが、病態生理学的な改善ではなく、過酸による潰瘍を予防できない。

 大量の小腸切除により腸肝循環が障害されている患者にコレスチラミンを投与すると、残された胆汁酸塩に結合し下痢を悪化させる。

 経口摂取を中止すれば下痢は止まるが、経口摂取困難となった場合の選択肢であり、長期管理を考えると推奨されない。

 

POINT 短腸症候群にはPPIを

  • Donohoe CL, Reynolds JV. Short bowel syndrome. Surgeon. 2010;8(5):270-279. PMID: 20709285