栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

ACG question:進行性の嚥下障害

NEJMのKnowledge+にちょっと問題が発生したので(笑)、今週からはちょっと違った問題に手をつけたいと思います!
とりあえずACG Questionで消化器に強くなろう!引用少なく主従分明確にですな〜。

Q1. 30歳女性 進行性の嚥下障害

 30歳女性で生来健康。進行性の嚥下障害があり、固形物・液体が飲み込めない。バリウム検査ではアカラシアが示唆され、内視鏡では、胃食道接合部(EGJ)が狭く、腫瘤や胃・食道逆流は認めない。マノメトリー検査が施行され、EGJの弛緩不全と積算弛緩圧(integrated relaxation pressure:IRP)の高値を認め、蠕動は全く認めなかった。

 この高解像度マノメトリー検査では10回中6回は全食道内圧上昇を認めた。

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質問. 診断は?

  1.   Ⅰ型アカラシア
  2.   Ⅱ型アカラシア
  3.   Ⅲ型アカラシア
  4.   EGJ通過障害
  5.   それ以外

 (以上本文より引用)

答 B. Ⅱ型アカラシア

解説:

 初っぱなからマニアックな問題が出てきましたね。アカラシア患者で20%以上が全食道収縮になっているのはⅡ型食道アカラシアというのだそうです。

 そもそもアカラシアの分類で今回の設問であれ?っと思った方は相当マニアックな方です。一般的には食道アカラシアの分類は、バリウム造影検査によって拡張型と拡張度に応じて分類されていました。拡張型分類は、直線型(St型)、シグモイド型(Sg型)、進行シグモイド型(aSg型)に分類しており、これは角度によって決まるのでした。更に拡張度分類では3.5cm未満でⅠ度、3.5-6.0cmでⅡ度、6cm以上でⅢ度と言われています。
 
 一方、今回のtypeⅠ〜Ⅲの分類は新シカゴ分類というやつで、高感度のマノメトリー(HRM)を用いた分類方法で、

・type Ⅰ:IRP>15mmHgで正常なLES弛緩がなく一次蠕動波の消失が明らかなもの
・typeⅡ:typeⅠ+食道蠕動波の20%以上に全食道内圧上昇があるもの
・typeⅢ:typeⅠ+食道蠕動波の20%以上に部分的蠕動や痙攣性収縮があるもの

と定義されています。ここに来て何故新分類を提示する必要があるのか?

 実は診断能においては、HRMの方が食道造影と比較して圧倒的に良かったという報告されており、実は古くて新しい問題の様です。例えば、とある研究ではHRMで食道アカラシアと診断した症例のうち食道造影で診断できたのは約半数強だったという報告があります。

 この辺りは、疾患のGold standardを何にするか?といういつもの議論はつきまとい、overdiagosisの問題と疾患概念の変遷の問題があり、診断の集中と拡散の議論を呼ぶ部分ではありますが、臨床的に疑った場合に、違った角度から検査を検討することになっても良いのかもしれません。

Citations

  1. Chicago classification criteria of esophageal motility disorders defined in high resolution esophageal pressure topography. Bredenoord AJ, Fox M, Kahrilas PJ, Pandolfino JE, Schwizer W, Smout AJ; International High Resolution Manometry Working Group. Neurogastroenterol Motil. 2012 Mar;24 Suppl 1:57-65.
  2. The Chicago Classification of esophageal motility disorders, v3.0. Kahrilas PJ, Bredenoord AJ, Fox M, Gyawali CP, Roman S, Smout AJ, Pandolfino JE; International High Resolution Manometry Working Group. Neurogastroenterol Motil. 2015 Feb;27(2):160-74.