栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:RCT 電子カルテのコスト表示がオーダーに影響するか?

電子カルテのコスト表示がオーダーに影響するか?
Effect of a Price Transparency Intervention in the Electronic Health Record on Clinician Ordering of Inpatient Laboratory Tests

JAMA Intern Med. 2017;177(7):939-945.

【背景】
 多くのヘルスケアシステムではオーダー時に費用の透明性を高めることを検討している。しかし、臨床医のオーダーに及ぼす影響は一貫しておらず、現時点では単一の短期間の評価しかなされていない。
【目的】
 メディケア入院患者において、1年間、臨床医が検査オーダー時に費用を表示することの効果を検証した。
【デザイン・セッティング・患者】
 Pragmatic Randomized Introduction of Cost data through the electronic helth record(PRICE)研究というプラグマティック(実際的)RCTが行われ、1年間の介入前期間と1年間の介入期間とが比較され、患者要因などは調整された。
 フィラデルフィアの3病院で2014年4月から2016年4月までに入院した患者が組み入れられ、介入前期間9万8529人、介入期間14万2921入院だった。
【介入】
 入院の検査オーダー時に、電子カルテの検査項目をランダムに費用表示群(30介入)、非表示群(30非介入)に割り付けた。
 ちなみに表示されたのは、①血算±分画、②一般電解質+腎機能、③肝機能
【メインアウトカム】
 プライマリアウトカムは、患者人日あたりの検査オーダー数とした。セカンダリでは検査オーダー数+医療費用とした。
【結果】
 全部で14万2921入院が対象であり、51.9%(7万4165人)が白人で、38.9%(5万5526人)が黒人、女性が56.9%(8万1291人)、平均年齢は54.7歳だった。
 介入前期間では、介入群とコントロール群のオーダー数は同等だった。調整した解析では、介入群とコントロール群でオーダー数は変化がなかった。オーダー数の変化 0.05検査/人年(-0.002 to 0.009)、費用変化 0.24$/人年(-0.42 to 0.91$)。

f:id:tyabu7973:20170910171434j:plain(本文より引用)

 サブ解析ではICU入院中の患者では、検査数に有意差が出ており、 -0.16検査/人年(-0.31 to -0.01)だった。一方、非ICUでは 0.13検査/人年(0.08-0.17)で、費用に対する影響も有意差が出ていた。
 介入群では時間経過とともに、少ないが統計学的には有意に検査数が増加している結果で、0.08検査/人年(0.03-0.12)だった。
【結論】
 入院患者の診療において、検査オーダー時に医療費用を電子カルテ上で表示することは、臨床医のオーダーやそれに関連した医療費に影響を及ぼさなかった
【批判的吟味】
 いつも通り論文のPICOから
P:入院患者でオーダーされる検査
I:電子カルテ上で医療費用表示
C:電子カルテ上で医療費用は表示せず
O:検査オーダー数、
T:ランダム化比較試験
・主語が検査なのが興味深いです。もちろんオーダーしているのは医師ですが・・・
・今回フィラデルフィアの病院のデータなので、外的にこれを適応して良いか(外的妥当性)は要検討です。
・今回電子カルテの問題で、ランダム化が検査毎に行われているので、同じ電子カルテでも医療費用が出ている検査項目と出ていない検査項目があり、介入群には波及効果(spillover effect)が出た可能性があるようです。
・今回メディケアの一部のデータなので他の検査も見る必要があります。
【個人的な意見】
 何にせよ、結果が出なかったのは残念。個人的には費用知りたいですけどねえ。先行研究等ではオーダーされている検査の30%が無駄ではないか?という考察があったり、検査数減ったよという非ランダム化比較試験はあった様なのですが・・・
 本来は、オーダーする時に、値段がでてこれでよろしいでしょうか?っていうやり取りはあっても良い様な気がします。少なくとも透明性は担保したいですね。

✓ 電子カルテで検査オーダー時の費用表示は検査オーダー数や費用を減らさなかった