栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:フェンタニルによる呼吸困難への効果/小腸出血の鑑別/潰瘍性大腸炎とANCA

カンファまとめです
まあ、備忘録兼ねてですね。
メンバーへの裏メッセージも笑

フェンタニルによる呼吸困難への効果 Effect if Fentanyl  for dyspnea

 カンファレンスで話題になっておりましたが、どんなもんかなともう一度確認しておきます。
 一般的に終末期の呼吸困難感の緩和にはモルヒネ製剤を使用しています。今回重症患者さんにおいて、フェンタニル持続が呼吸困難への効果があるのかについて少しまとめておきます。


①モルヒネ全身投与 Uptodateでは第一選択、Grade1Aで推奨になっています。ちなみにPEACEプロジェクトでも推奨
 多くの場合には30mg/日未満で改善するため、それ以上を超える場合には、方法を再考する必要あり。実は過去の多くの研究は非癌患者に対しての使用が主だったりします。
J Clin Oncol. 2008;26(14):2396. (PMID 18467732)
Nat Clin Pract Oncol. 2008;5(2):90. (PMID 18235441)
Support Care Cancer. 2008;16(4):329. (PMID 18214551)

②フェンタニル Uptodateでは有用性は明らかではないとされています。効くという報告と効かないという報告が混在しています。PEACEプロジェクトでは、有効性に根拠がないとされています。
J Palliat Med. 2008;11(4):643. (PMID 18454622)
J Pain Symptom Manage. 2014;47(2):209. Epub 2013 Jul 3. (PMID 23830530)

Am J Hosp Palliat Care. 2015;32(3):298. Epub 2013 Nov 20. (PMID 24259406)

 むしろ、ベンゾ併用が上乗せ効果があるとかも言われています。一方で酸素投与は死期が近い場合にルーチンの投与はあまり効果がないことも言われていますね。重要なのは非薬物的アプローチと言われており、

 

 ✓ 呼吸困難感へのフェンタニル効果は不明
 

小腸出血の鑑別 DDx for intestinal bleeding

 なかなかレアな状況ではありましたが、なかなかヘビーでした。小腸精査は近年できるようになってきたので、ある程度精通しておきたいところです。今回ひとまず知っておきたいのは、その鑑別です。

 以下、基本事項から。まず消化管出血患者のうち5-10%が通常の内視鏡や画像検査で出血源が判明せず、それらの患者のうち75%の原因は小腸だったと報告されています。
 小腸出血の原疾患は以下になります。

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 この中でなかなか難しいのがMeckel憩室である。Meckel憩室の疫学的頻度は実は研究によって様々だが、一般的な人口では2%前後とも言われており、比較的コモンなものではある。Natural historyとしては、症状発現頻度はかなり低いと言われています。Meckel憩室と同定された患者さんを41年間追った前向き観察研究によると、80歳までに手術を要する患者の累積発生率は6.4%とされています。

 Meckel憩室を疑う特徴として
・50歳未満          OR 3.5(2.6-4.8)
・男性             OR 1.8(1.3-2.4)
・憩室長径>2cm   OR 2.2(1.1-4.4)
・組織異常組織の存在 OR 13.9(9.9-19.6)

などがあります。
 

✓ 小腸出血の鑑別は多彩

 

潰瘍性大腸炎とANCA UC and ANCA

 興味深い症例の 中での学び。潰瘍性大腸炎患者さんが不明熱化するとなかなか悩ましいですね。原病のフレアなのか、日和見感染なのか、薬剤熱の可能性は?、関節外症状はどうか・・・更にその中で血管炎の合併はどうか?という話題が出てくることがあります。

 報告はMPO-ANCA陽性が多い様ですが、中にはPR3-ANCAの報告があります。例えば潰瘍性大腸炎では60-80%がANCA陽性だったという報告もあり、かなりの高値です。クローン病の方が陽性率は低い模様で10-27%という報告があります。ただし、結腸切除後にANCAは低下しなかったという報告もあり、病勢との関連もない模様です。結局検査に振り回されず、臨床症状で考えよ!という良い教訓になりますね。

 更に、ANCA上昇は薬剤と関連しており、例えば有名どころでは、プロピオチオウラシル、メチマゾールですが、それ以外に、ヒドララジン、ミノサイクリン、アロプリノール、ペニシラミン、プロカインアミド、クロザピン、フェニトイン、リファンピシン、セフォタキシム、イソニアジド、インドメタシンなどの報告があります。ちなみに、UCでよく使用されるメサラジンでも報告があるので要注意です。ああ、難しい・・・

  ✓ 潰瘍性大腸炎ではANCAは上昇します!