栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

身体所見:Ewart'sign

さて、人の名前がついている身体所見シリーズ。
今週は"E"いってみます!だいぶ伝わって来ましたでしょうか?笑

Ewart's sign エワート徴候 別名”Pin's syndrome”

【方法】左肩甲骨下角部分の打診および聴診、声音振盪の確認。
【判定法】打診では濁音、山羊音(egophony)、気管支呼吸音の増強が診られれば陽性
 部位としては下記のInferior anfgle of scapulaの辺りです。

https://web.duke.edu/anatomy/Lab01/images/Lab1_step2.jpg

https://web.duke.edu/anatomy/Lab01/images/Lab1_step2.jpgより引用)【疾患・病態】
 心嚢液貯留が著明で左下肺が圧排されることで上記所見が出てきます。気管支呼吸音の亢進は先日のJPCでも話題になっていましたが、肺実質の含気量低下によって、肺実質の音の伝播が亢進することで、本来は肺胞呼吸音が聴取されるべき部分に気管支呼吸音が聴視されるという現象です。胸水や無気肺、肺炎などでも起こる所見であり、覚えておくと良いです。

【発見者と契機】
 命名の由来となったWilliam Ewart先生は、英国ロンドンの内科医師でした。Ewart先生はこの所見を1896年にBMJに報告((1)))しています。
 Ewart先生は病院で働く家庭医だった模様で、身体所見の素晴らしいスキルを持っていました。特に聴診・打診に造形が深かった模様で、その業績の一つがこのEwart徴候だった様です。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/1f/William_Ewart_b1848.jpg

William Ewart (physician) - Wikipedia


【エビデンス】
 PubmedでEwart's sugnを検索すると、心筋梗塞や結核性心膜炎、リウマチ熱による心嚢液貯留での症例報告((2,3)))がありました。更にいくと左室肥大でも同様の所見が得られる模様で特異度は高くなさそうです。ちなみにこの徴候も、実はEwart先生よりはオーストリアのPin先生が先に見つけたのではないか?という噂もあり、Pin's sign((4)))と呼ばれることもあります。


1)W. Ewart: Practical aids in the diagnosis of pericardial effusion, in connection with the question as to surgical treatment. British Medical Journal, London, 1896, 1: 717-721.
2)Smedema JP, et al.Ewart's sign in tuberculous pericarditis.S Afr Med J. 2000 Nov;90(11):1115. PMID:11196032
3)Burch GE.Of Ewart's sign and myocardial infarction.Am Heart J. 1977 Dec;94(6):809. PMID:920591
4)Pins E.A New symptom of pericarditis.Wien med.Wehnschr,34:209,1889