栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:Prospective cohort 授乳歴と子宮内膜症リスク

授乳歴と子宮内膜症リスク
History of breast feeding and risk of incident endometriosis: prospective cohort study

BMJ 2017;358:j3778

【目的】
 生涯における授乳歴や完全母乳、産後無月経と子宮内膜症との関係を調査する
【デザイン】
 前向き観察研究
【セッティング】
 Nurse Health Study Ⅱで1989-2011年
【患者】
 7万2394人の1人以上の妊娠が少なくとも6か月持続した女性のうち、3296人が腹腔鏡で子宮内膜症と確定診断されていた。それぞれの妊娠において、授乳期間や完全母乳、産後無月経を評価した。
【メインアウトカム】
 自己申告の腹腔鏡診断で診断された子宮内膜症(96%はカルテ上でも確認された)の経妊女性。多変量解析で子宮内膜症リスクについてのハザード比と95%信頼区間が算出された。
【結果】
 授乳期間および完全母乳は子宮内膜症リスクの低下と有意に関連していた。

 ✓ 生涯授乳期間が1か月未満の女性では子宮内膜症の頻度が10万人辺り453人
 ✓ 生涯授乳期間が36か月以上の女性では、子宮内膜症の頻度が10万人辺り184人

 3か月授乳期間が増えるにつれて、子宮内膜症リスクが8%減ると言う結果(HR 0.92:0.90-0.94)だった。また、完全母乳期間を3か月増やすと子宮内膜症リスクは14%減少(HR 0.86:0.81-0.90)だった。
 授乳歴のない女性と比較すると、生涯授乳期間が36か月以上の女性は、子宮内膜症リスクが40%減少(HR 0.60:0.50-0.72)だった。
 産後無月経の影響は部分的だった。
【結論】
 少なくとも6ヶ月以上の授乳歴がある女性では子宮内膜症リスクの軽減が見られた。産後無月経との関係は部分的であり、授乳による子宮内膜症リスク低減のメカニズムの一部の可能性が考えられた。
 子宮内膜症は慢性経過で治療が難しい病態であり、妊娠した女性においては修正可能な適応行動として授乳を検討していく必要があるかもしれない。

【批判的吟味】
 ・基本的には観察研究なので交絡因子の可能性、そしていつものNurse cohortなので集団の特徴はあります。
 ・レポートバイアスの可能性もありますが、この点はカルテでも確認しているようです。
 ・子宮内膜症の診断は腹腔鏡で確定されておりある程度確かさは担保されている模様です。一方で子宮内膜症と未診断だが症状で苦しんでいる方は含まれない可能性があります。今回のコホート内での子宮内膜症頻度は一般で報告されている頻度より低いので、実際の子宮内膜症との関連と言えるかは悩ましい所です。
 ・用量依存関係が見られているのでより確かさが増していると言えるかもしれません。
【個人的な意見】
 授乳→産後無月経→子宮内膜症リスク↓という関係が考えられているんですねえ。知らなかった。エストロゲンと子宮内膜症は密接に関わりますから、こんなことも検証されるわけですねえ。興味深いです。
 生理学的には、オキシトシンとプロラクチンによる影響も検討されている模様です。ただ、過去に十分検証されていなかったので今回の大規模調査に関連した模様です。

✓ 授乳期間は子宮内膜症リスク低減と関連する

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