栃木県の総合内科医のブログ

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症例:JAMA surg 50代男性 急性腹症

case reportです。
レアものではありますが知っておくべし。

症例:50代男性 急性腹症

JAMA Surgery Published online September 20, 2017

 喫煙歴と高血圧の既往のある50代男性が、36時間前からの上腹部痛、嘔気、嘔吐で入院した。過去の手術歴や外傷歴なし。
 BP 109/70mmHg、Pulse 100bpm。身体診察では中等度の上腹部圧痛あり、反跳痛と筋性防御あり。
 採血では、WBC 13970/μL、Hb 8.4g/dL、Cr 1.67mg/dL、Amy 57U/L、TG 282.42mg/dLで、凝固異常はなかった。
 造影CTを施行した。

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(本文より引用)

質問. 診断は

 

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診断:空腸動脈瘤破裂

経過:
 血行力学的不安定性および腹膜炎や臨床的に悪化するような急性腹症患者では、腹腔内の異常として、腹部動脈瘤破裂、腸閉塞、消化管穿孔や消化性潰瘍の穿孔や敗血症などが原因であることが多い。診断は常に画像評価が重要であり、臨床的に悪化した患者では、CT検査が迅速かつ鋭敏で特異的な結果を提供する。
 本患者では肝臓および脾臓周囲に液体貯溜を認め、CT値34HUと高値だった。加えて突然発症の腹痛と貧血があることからは腹腔内出血の診断が最も疑われる。血清Amy値は正常で、臨床症状や画像結果からも急性膵炎や消化性潰瘍の穿孔は考えにくい。
 造影CT結果では、血管の高濃度領域が存在し、膵周囲の大きな血腫からも活動性出血が疑われた。CTで活動性出血を疑う所見があることは、血管内治療もしくは外科的治療が必要なことを意味する。

 選択的上腸間膜動脈造影によって動脈硬化および空腸動脈遠位枝に7mmの動脈瘤が明らかになった。

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(本文より引用)

解説:
 空腸動脈瘤は稀な疾患で、破裂リスクは30%程度、死亡率は20%程度と報告されている。多くの空腸動脈瘤は弧発性で、高齢者で多く、破裂後に診断されることがほとんどである。破裂は最も重症な合併症だが機序は不明である。系統的解析では、重喫煙、高血圧、脂質異常は直接的または間接的に破裂に寄与している可能性がある。動脈瘤破裂によって管腔内および腹腔内の出血を起こし得る。現状破裂動脈瘤の対処についてはサーベイランスや介入についてのガイドラインはない。治療選択肢としては、外科的手術および血管内治療であり、外科医の好み、患者の特徴、動脈瘤径、位置、形態的特徴に基づいて決定される。現在は、経カテーテル塞栓術が第1選択ではある。

 本患者では、腹腔鏡手術が選択され、腹腔内の腸間膜根部に1500ml以上の巨大な血腫が存在し、横隔膜および膵周囲まで及んでいた。

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(本文より引用)

動脈瘤内の血管内塞栓術を施行され、回復は順調だった。血行動態が不安定な急性腹症患者では空腸動脈瘤も鑑別になる。