栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

身体所見:Kernig徴候

身体所見シリーズ。今週は"K"で行ってみます。
マニアックなやつだけじゃなくて、比較的メジャーなものの秘話的なものも探してみますね。

Kernig sign ケルニッヒ徴候

【方法】 患者を仰臥位にし、股関節と膝関節を90度に屈曲させ、その後膝を押さえながら他動的に膝関節を135度前後まで伸展させる
【判定法】伸展制限がある場合に陽性、疼痛は必須ではない

https://i2.wp.com/medisavvy.com/wp-content/uploads/2013/05/Kernigs-Test-for-Meningitis.jpg?resize=750%2C666&ssl=1

https://i2.wp.com/medisavvy.com/wp-content/uploads/2013/05/Kernigs-Test-for-Meningitis.jpg?resize=750%2C666&ssl=1より引用)【疾患・病態】
 随膜刺激症状を示唆する所見です。髄膜炎やくも膜下出血などによって坐骨神経付近の神経根に炎症が起こることで、坐骨神経による支配筋であるハムストリングが過敏な状態になっています。この状態で膝関節を伸展させようとすると支配筋であるハムストリングが攣縮することで、伸展制限が生じると考えられています。
 通常両側性に見られますが、片麻痺患者では片側性になる事があります。原著では座ったままの姿勢で所見が取られており、疼痛は必須とはされていませんでした。
 ちなみに類似した身体所見として、SLR(Straight Leg Raising)テストがあります。これは膝を伸展したまま、下肢全体を挙上させ、坐骨神経の疼痛を誘発する試験です。これは別名ラセーグテストとも言いますね。
【発見者と契機】
 Waldemar Kernig先生は1840年ラトビア生まれのロシアの神経内科医で、多くの髄膜炎患者の診察を経て、この所見に気付いたとしています。
 以下、Kernigの言葉を抜粋しておきます。

“I have observed for a number of years in cases of meningitis a symptom which is apparently rarely recognized although, in my opinion, it is of significant practical value.
 I am referring to the occurrence of flexion contracture in the legs or occasionally also in the arms which becomes evident only after the patient sits up; the stiffness of neck and back will ordinarily become much more severe and only now will a flexion contracture occur in the knee and occasionally also in the elbow joints.
 If one attempts to extend the patient’s knees one will succeed only to an angle of approximately 135°. In cases in which the phenomenon is very pronounced the angle may even remain 90°.”

”私は、何年も髄膜炎患者を診察してきた。この徴候は滅多に見られないが、私の意見では診断的価値があると思う。
 これは脚の屈曲拘縮の所見だが、時折肘関節にも出ることがあり、座った場合に明らかになる。頸部や背部の硬さはより重症例に起こり、(軽症例では)膝関節や肘関節における屈曲拘縮が起こる
 患者の膝を伸展しようとすると、約135度の角度を超えることはできず、症状が強ければ角度は90度のままということもあり得る”
                 (Arch Neurol. 1969 Aug;21(2):215-8.より引用)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/84/Woldemar_Kernig_%28ca._1910%29.jpg/451px-Woldemar_Kernig_%28ca._1910%29.jpg
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/84/Woldemar_Kernig_%28ca._1910%29.jpg/451px-Woldemar_Kernig_%28ca._1910%29.jpgより引用

【所見のエビデンス】
 髄膜炎を診断する身体診察の正確性を評価した研究(Clin Neurol Neurosurg. 2010 Nov;112(9):752-7. )によれば、Kernig徴候は感度 14%、特異度 92%と報告され、陽性尤度比 1.84(0.77-4.35)、陰性尤度比 0.93(0.84-1.03)と有用性は低い結果でした。
 少なくとも除外には使いにくい診察所見であることは覚えておきましょう。