栃木県の総合内科医のブログ

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症例:JAMA surg 50代女性 悪化する腹痛

case reportです。
実はまだこのタイプは診たことないです。

症例:50代女性 腹痛

JAMA Surgery Published online October 18, 2017

 50代女性。SLE、うっ血性心不全、2型糖尿病既往あり。腹痛症状で前回入院していたが、退院して翌日に腹痛が増悪してきたとのことで、救急外来を受診された。
 病歴では、4日前から徐々に悪化する腹痛と下痢があり、発熱・悪寒・戦慄・発汗はなく、過去に同様の症状をきたしたことも無かった。診察では、腹部は膨満していたが、腹痛は症状の訴えの割には軽度の圧痛だった。検査所見異常なし。
 初回入院時のCTと再入院時の腹部造影CTは以下。

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(本文より引用)

質問. 診断は

 

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診断:ループス腸炎

経過:
 患者は集中治療室に入院し、リウマチ科依頼となり、1g/日メチルプレドニゾロンパルスを4日投与された。腹痛はステロイド投与後8時間以内に改善し、第2病日には固形物も摂取できるようになった。

解説:
 SLEは自己免疫性慢性炎症性疾患で、全ての臓器に影響を及ぼす可能性があります。特に血液系、腎臓系、中枢神経系に影響を及ぼしやすく、また、その症状は多彩ですね。
 ループス腸炎は、SLEの合併症としては稀ですが、典型的には腸間膜虚血と同様の症状や徴候を呈し、症状と身体所見の解離があることが多いのだそうです。また、研究結果も一致せず、ある研究では、ループス腸炎ではSLE患者の腹痛では最も多い原因と言われたりする一方、別の研究では稀と指摘されたりと、本疾患に関する知見の集積が十分ではないことが予測されます。検査所見は非特異的で通常炎症反応のみ陽性となる程度かもしれません。

 CT検査では重度の腸管壁の肥厚(ターゲットサイン)を認め、腸間膜脂肪織や腸間膜血管も認められます。また、膀胱壁の肥厚や中等度の腹水もよく見られる所見です。これらのCT所見を考慮すると、ループス腸炎は腸間膜虚血に類似していますが、一方で大血管の血栓や閉塞は認められません。速やかにループス腸炎を認識することは、その後の穿孔・閉塞・壊死を予防するために重要です。

 ループス腸炎のマネージメントは迅速な免疫抑制剤開始で、通常はステロイドパルスになります。臨床医の中には、シクロホスファミドなどの代替的免疫抑制療法の効果を報告していますが、これは、ステロイド治療が奏功しないもしくは禁忌の場合の第2選択です。通常は、ループス腸炎患者は本例の様に免疫抑制療法に速やかに反応し、時間単位で完全に改善します。外科的視点で注意深く経過観察することは悪化を早期に発見することが出来ます。

 ループス腸炎についての文献が少ないのですが、腸管壊死や穿孔などの絶対的外科的介入適応が無い場合には、内科的管理での初期治療が行われることが主流になってきています。ループス腸炎の再発は、初期の腸管壁肥厚、尿路の閉塞が関係していると言われています。リンパ球減少、Amy上昇、低アルブミン血症は予後不良因子です。
 
 結論として、ループス腸炎は比較的稀ですが、SLE患者で重度の腹痛を認める場合には、重要な鑑別診断の一つです。CT検査の所見を考えれば、コンサルとした外科医が治療方針を決めることにはなるでしょう。一方で、適切な免疫抑制療法は潜在的な合併症を予防することができるかもしれません。