栃木県の総合内科医のブログ

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論文:高齢股関節骨折患者のポリファーマシーの適正化介入:観察研究

高齢股関節骨折患者のポリファーマシーに対する処方適正化介入:観察研究
Intervention to improve the appropriate use of polypharmacy for older patients with hip fractures: an observational study

BMC Geriatrics (2017) 17:288

【背景】
 股関節骨折患者においてポリファーマシーはよくある問題であり、股関節リスク上昇に関連している。股関節リスクであるにも関わらず、股関節骨折治療後も同じようにポリファーマシーの状態が続いていることが多い。本研究の目的は、股関節骨折で入院した高齢者に対するポリファーマシー介入効果を評価することである。
【方法】
 我々はポリファーマシーに対する介入を受けた群(ポリファーマシー外来群)(n=32)と通常ケア群(n=132)との結果を比較するために後ろ向き観察研究を行った。2015年1月から2016年12月までに入院した65歳以上の股関節骨折患者で、5種類以上の内服薬を処方されていた全ての患者を組み入れた。
 介入は、当院内科医によるポリファーマシーの適切性評価と入院期間中の不必要な処方の減薬とした。
 プライマリ複合アウトカムは、死亡もしくは新規骨折の発症とした。
 介入群と通常ケア群を二項ロジスティック回帰分析を用いて比較した。
【結果】
 合計164人の患者が研究に組み入れられた。平均年齢は84.8歳、入院時の処方薬は8.0剤、入院時の潜在的な不適切処方(PIMs)は1.3剤だった。平均フォローアップ期間は8.0か月。
 プライマリ複合アウトカムは、35人(21.3%)で発生した。退院時のPIMsは介入群では通常ケア群と比較して有意に低かった(介入群 0.8±0.8 vs 通常ケア群 1.1±1.0,p=0.03)。しかし、プライマリ複合アウトカムは、介入群と通常ケア群では有意差を認めなかった(介入群 7人 vs 通常ケア群 28人,OR 1.04:95%CI 0.41-2.65,p=1.00)。

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(本文より引用)

【結論】
 ポリファーマシーに対する処方適正化介入は、PIMs減少と関連したが臨床アウトカムを改善できなかった。ポリファーマシーのみに焦点を当てたこの介入は、高齢者の股関節骨折患者の予後に対する効果的な改善は得られない可能性がある。

【批判的吟味】
当院ポリファーマシー外来の介入症例のデータで、股関節骨折患者の臨床アウトカムを検証した結果ということになります。
・まず、そもそも当院で開始したポリファーマシー外来は包括的な介入のつもりでしたが、2年間316人の股関節骨折の入院患者のうち、ポリファーマシー外来介入が提供されたのは32人と、全体の10%に過ぎない形でした。もちろん、5種類以上内服していて65歳以上などという要件を考慮すると母数は164人になりますが、それでもアプローチできているのは46/164人と全体の28%に過ぎないものでした。
・そして、本題ですがPIMsは減るが真のアウトカムは減らないという結果でした。見方によっては、減らしても予後が変わらなかったとポジティブに捉えることも可能ですが、基本的には過去のCochrane Reviewでも報告されたものと同様の結果でした。異なる介入をしているつもりで同じ轍を踏んだ形ですね。
・今回、ポリファーマシーのみに焦点をあてた介入でしたが、おそらくCGAなどの高齢者に対する包括的アプローチも取り入れた形での介入が望ましいのだと考えられます。
・今回PIMsは有意に減ったものの患者との話し合いによる結果として減薬を行ったため、結果的に睡眠薬やPPIなどの転倒や骨折と関連するような薬剤が退院時にも飲まれていたことも関連するのかもしれません。
・基本的にはRCTではないため交絡因子の影響は否定できません。また、単一施設の研究であることも限界があるでしょう。そもそも、6ヶ月後のフォローアップ率もそれほど高くないため、十分なイベント追跡ができていない可能性がありそうです。
・サンプルサイズの問題、長期的なアウトカムへの影響、過小処方についての検討も不十分といったところです。
【個人的な意見】
 当院のポリファーマシー外来のデータを後輩医師がまとめてくれました。ポリファーマシー介入の患者予後への効果を検証した日本初の研究と自負しております。こうやったあらためて見てみるとやや脱力します。結局何もやっていないのと一緒だったとも言えますね。まあ、でも先行研究と一緒であったということでもあるので、これに懲りずに次の方法を検討していくのが良いかなと思っています。
 まずは、股関節骨折患者だけではなく、ポリファーマシー外来全体の効果を適切なアウトカム設定で検証したいと思います。そこを元にして、介入方法の再吟味は必要になりますね。

✓ ポリファーマシーに対する処方適正化介入は、PIMs減少と関連したが臨床アウトカムを改善できなかった