栃木県の総合内科医のブログ

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論文:Prospective cohort 2型糖尿病患者におけるピオグリタゾンと疾患特異的死亡原因:ヨーロッパのマルチデータベース観察研究

2型糖尿病患者におけるピオグリタゾンと疾患特異的死亡原因:ヨーロッパのマルチデータベース観察研究
Pioglitazone and cause-specific risk of mortality in patients with type 2 diabetes: extended analysis from a European multidatabase cohort study

BMJ Open Diab Res Care 2018;6:e000481. doi:10.1136/bmjdrc-2017-000481

【目的】
 病期が同程度の2型糖尿病患者において、ピオグリタゾンを含む血糖降下治療と含まない治療を比較して心血管関連および非心血管関連の死亡を比較・記述する
【研究デザイン/方法】
 欧州3ヵ国(フィンランド・スウェーデン・イギリス)の健康と死亡データをプールした観察研究のデータベースをリンクした観察研究。プロペンシティスコアで補正して、2型糖尿病で2000-2011年までに初めてピオグリタゾンが処方された3万1133人とピオグリタゾンが処方されていない3万1133人を比較した。糖尿病の病期・罹患歴・合併症・心血管疾患・コホートのエントリー年などの変数はマッチされた。平均フォローアップ期間はピオグリタゾン群 2.60年、非ピオグリタゾン群 2.69年だった。原因特異的な粗死亡率が確認された。
 ピオグリタゾン使用との関係は、Coxハザードモデルで国・年齢・性別・プロペンシティスコアなどを用いて調整して推定した。その他の交絡因子は明らかにならなかった。
【結果】
 粗死亡率は、ピオグリタゾン曝露群では非曝露群よりも低く、心血管死亡も非心血管死亡ともに低かった。調整ハザード比は、心血管死亡が HR 0.58(0.52-0.63)、非心血管死亡 HR 0.63(0.58-0.68)だった。ピオグリタゾンの予防効果は心血管疾患のどの原因でも認められた。

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(本文より引用)
【結論】
 今回の分析では、ピオグリタゾンが心血管死亡と非心血管死亡の両方の減少と関連していることを示唆している。ただし、今回の結果は探索的研究でもあり、交絡因子がある可能性も含めて注意深く解釈すべきである。
 今後、ピオグリタゾン使用と患者中心のアウトカムとの関連を調べるために更なる追加治療が望まれる。

【批判的吟味】
・ある意味でピオグリタゾンの再評価という意味合いの研究です。
・もちろん観察研究なのでRCTと比較すると交絡因子を考慮すべきにはなりますが、これくらい大規模なデータの蓄積は例え後ろ向きとはいえ無視はできなそうです。
・事実として、最近行われた9つのRCTのメタ解析(BMJ Open 2017;7:e013927.)でも、糖尿病患者における心血管関連の複合アウトカムを減らす結果でした。このメタ解析ではピオグリタゾンは心不全リスクは増大しますが、一方今回の研究では心不全死亡も減っているという矛盾があります。

・まあ、これらのデータの多くは問題のあるPROActive研究とIRIS研究からのものですが・・・
・実は膀胱癌との関係を指摘された研究においても、他の糖尿病薬との関係も否定できていないこと、実はその研究で全死亡率が有意に33%低下していたという事実はあまり着目されていません。
【個人的な意見】
 結構衝撃でした。後向き研究とはいえかなり大規模な観察研究でなおかつ、臨床研究では一歩も二歩も先にいっているフィンランド・スウェーデン・イギリスのデータですからね。
 もちろん、治療効果についての検証なのでRCTが一番ですし、過去の前向きRCTの研究の質が微妙なのは事実なので、これ一発で「さ〜ピオグリタゾン」をどんどん使いましょう!とはなりませんけどね。ただ、何となく”ダメだ” というレッテルを貼るとなかなかはがせないのも問題かもしれません。

✓ ピオグリタゾン使用は実臨床では死亡率低下をもたらしてくれるかもしれない