栃木県の総合内科医のブログ

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論文:RetroCohort 失神患者における肺塞栓症の頻度

失神患者における肺塞栓症の頻度
Prevalence of Pulmonary Embolism in Patients With Syncope

JAMA Internal Medicine Published online January 29, 2018 

【背景】
 失神患者における肺塞栓症の頻度については、まだ十分なデータがなく相反する研究結果が混在している状態である
【目的】
 救急外来に失神の評価目的に来院された患者において肺塞栓症の頻度を評価する。
【デザイン・セッティング・患者】
 後ろ向き観察研究を行い、4つの異なる国(カナダ・デンマーク・イタリア・アメリカ)の5つのデータベースから縦断的にデータベースの分析を行った。救急外来の退院時コードが失神だった全ての成人(18歳以上)のデータをスクリーニングした。データは2000年1月1日から2016年9月30日まで収集された。
【メインアウトカム】
 救急外来および退院時の肺塞栓症の頻度をICDコードを用いて調査し、これをプライマリアウトカムとした。2つの感度分析を行い、①フォローアップ90日目の肺塞栓症②深部静脈血栓症頻度も調査された。
【結果】
 失神で救急外来を受診した167万1944人の成人が組み入れられた。肺塞栓症の頻度は、全体では0.06-0.55%、入院患者では0.15-2.10%だった。
 90日後のフォローアップでは、全体で0.14-0.83%、入院患者では0.35-2.63%だった。
 90日後の深部静脈血栓症頻度は、全体で0.30-1.37%、入院患者では0.75-3.86%だった。

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(本文より引用)
【結論】
 失神患者においては肺塞栓症はほとんど見られなかった。全ての患者に肺塞栓症を考慮すべきではあるが、全例で評価すべきではない。

【批判的吟味】
・今回は過去最大規模の行政の病名コードデータベースに基づいた後ろ向き観察研究で、失神全体の外来受診患者では1%未満、入院患者では3%未満でした。
・そもそもが入院率がヘテロであり、医療機関・国毎に大きく異なることは考慮すべきですが、今回は外来受診患者と入院患者両方を検討しています。
・今回、90日後にもフォローされたので、見逃された肺塞栓症についても検討しているという形です。
・D-dimerや修正Wellsなどのアルゴリズムを使うと、リスクを高く見積もりがちで、Overdiagnosisに繋がるのでは?という意見もあります。
・今回の研究としては、ICDコードを利用しているので正確性という意味では多少問題があるかもしれません。
・米国のデータベースは重複しているものがあるようです。
【個人的な意見】
 Introでは肺塞栓症って生涯罹患率は4人に1人なんだそうです。結構多いです。もちろん、昨年大いに話題になった入院した失神患者の肺塞栓頻度を調査したPESIT研究を受けての研究であろうことは容易に想像できます。PESIT研究では罹患率が脅威の17%でしたからね・・・

tyabu7973.hatenablog.com

✓ 失神患者における肺塞栓症頻度は外来受診患者で1%未満、入院患者で3%未満だった