栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

症例:CCJM 64歳女性 顔が黒いんです

case report。
これで特殊メイクじゃないのです。
もちろん一発診断で!

症例:64歳女性 顔が黒いんです
Cleveland Clinic Journal of Medicine. 2016 December;83(12):876-877

 64歳女性。全身倦怠感、手が締め付けられる、顔の痺れ、関節のこわばり、寒い日に指が変色するという主訴で外来を受診された。採血では抗核抗体 320倍、抗Scl-70抗体 100U/mL、TSH 10.78mIU/Lだった。肺機能検査で拘束性障害があり。甲状腺機能低下症+Raynaud症状+強皮症と診断された。リウマチ科に紹介され、レボチロキシンとペニシラミンが科医師となった。その後も倦怠感が続き、彼女はテレビで見たから、と言って強皮症に対してミノサイクリンの治療を希望された。
 MINO 100mg×2回投与が開始され、2年間は症状は改善していたが、その後外来通院は内状態だった。彼女はプライマリケア医からペニシラミンとミノサイクリンの処方を継続してもらっていた
 9年後に再度外来を受診した時に、1年前から徐々に拡大傾向の顔・指・歯肉・歯・胸膜に青みがかった色調変化が出ているとのことで、外来を受診された。

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(本文より引用)

質問. 診断は?

 

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回答:ミノサイクリン誘発性色素沈着症

経過:
 ミノサイクリン誘発性色素沈着症を考え、皮膚科にコンサルト。ミノサイクリンは中止された。皮膚生検は希望されず施行出来なかったが、その後皮膚の色素沈着症状は改善しなかった。

解説:
 色素沈着症は、通常表皮・真皮にメラニン沈着が見られることによって起こる皮膚の色調変化である。色調は様々で、青・茶・黒(濃淡色々)など様々な程度で起こりうる。ただし、ヘモジデリンや鉄、重金属などによる内因性・外因性の色素沈着は稀。
 び漫性色素沈着症を診た時の鑑別診断は、Addison病・甲状腺機能亢進症・ヘモクロマトーシス・色素異常性固定紅斑・皮膚癌・日焼け・薬剤性色素沈着症である。薬剤性で一般的に多いのが、ミノサイクリン・アミオダロン・ブレオマイシン・プロスタグランジン・経口避妊薬・フェノチアジン系・抗マラリア薬である。

 Addison病の色素沈着は典型的にはび漫性で、露光部や手掌足底のしわ、擦過部などで目立つ。ヘモクロマトーシスによる青銅色変化は、ヘモジデリン沈着とメラニン色素増生の組み合わせ。色素異常性固定紅斑は茶色がかった楕円形の斑状疹で、初期病変は体幹に薄く隆起した紅斑性境界を有することが有り、その後頸部・上肢・顔面に拡がることがある。

 そもそも強皮症治療におけるミノサイクリンの役割が微妙で議論の余地はあるだろう。少なくとも少数の症例報告はあるものの大規模多施設研究では効果は実証されなていない(Mayes MD,et al. Minocycline is not effective in systemic sclerosis: results of an open-label multicenter trial. Arthritis Rheum 2004; 50:553–557.)

ここからはだいぶマニアックになります・・・
 ミノサイクリン誘発性色素沈着症には3つのサブタイプがあります。
・タイプ1:顔の炎症部位に起こる青灰色の色素沈着
・タイプ2:脛骨部や前腕の正常皮膚に生じる青灰色の色素沈着
・タイプ3:本症例の様な日光曝露部位に茶色〜青灰色のび漫性の色素沈着(基も珍しい)
 ミノサイクリン誘発性色素沈着の有病率は報告にもよりますが、2.4-41%とされ関節リウマチ患者で最も多いとされています。タイプ1は治療期間や総投与量とは関連なく、タイプ2・3は長期使用と関連しています。タイプ3の色調変化は非特異的で、基底膜の角膜細胞におけるメラニン増加などの機序があります。タイプ1・2は緩徐に改善しますが、タイプ3は改善しません
 
治療:
 早期診断・薬物中止・日光曝露の回避が重要。レーザー治療が有望視されている

✓ ミノサイクリン長期投与は皮膚の色素沈着に気をつける