栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:Retrocohort ジクロフェナクの使用は心血管疾患のリスクである

NSAIDsの心臓・腎臓に対する影響は過去にも多数報告されています。
ただ、NSAIDsのクラス毎の違いはそれほどは検証されていなかったかもしれません。
ジクロフェナク(ボルタレンⓇ)は、日本でも非常によく使用されており、坐剤も内服薬もあります。

実はジクロフェナクの環境問題というものがあるようで、インドのハゲワシがその一例です。
ジクロフェナクは全世界的には低所得国でも購入できるNSAIDsでなおかつOTCでもあります。
インドでは、牛が神聖なものとされているため、高齢化した牛が痛みを訴えると、ジクロフェナクが使用されるのだそうです。
そのジクロフェナクに曝露された家畜を食べることで10年間で数千万羽のハゲワシが死んだという報告があります。

今回は、心血管イベントに対する影響を検討した観察研究です。
その結果やいかに??

ジクロフェナクの使用は心血管疾患のリスクである
Diclofenac use and cardiovascular risks: series of nationwide cohort studies

BMJ 2018;362:k3426
【目的】
 ジクロフェナク開始と心血管リスクとの関係を、その他の古典的NSAIDs、アセトアミノフェン、治療無しと比較した
【デザイン】
 252の国民全体のコホート研究のシリーズで、それぞれが臨床試験の厳格なデザイン基準を満たしている
【セッティング】
 デンマークの国民全体のレジストリを使用
【患者】
 組み入れ基準は、悪性腫瘍・統合失調症・認知症・心血管疾患・腎疾患・肝疾患・消化性潰瘍がない患者で、リスクは低い患者だった
 患者はジクロフェナクを開始した137万832人、イブプロフェン 387万8454人、ナプロキセン 29万1490人、アセトアミノフェン 76万4781人、治療なし 130万3209人を傾向スコアマッチングで調整した。
【メインアウトカム】
 Cox比例ハザード回帰を用いて、開始から30日以内の主要な心血管イベントのハザード比を求めた。ITT解析あり。
【結果】
 ジクロフェナク開始群の有害事象は、内服なし群と比較して50%増加していた(IRR 1.5:1.4-1.7)。アセトアミノフェン・イブプロフェンと比較するとIRR 1.2(1.1-1.3)と増加し、ナプロキセンでは、IRR 1.3(1.1-1.5)だった。
 ジクロフェナク群の各アウトカムを見ると、内服なし群と比較して、
・心房細動・粗動 IRR 1.2(1.1-1.4)
・虚血性脳卒中IRR 1.6(1.3-2.0)
・心不全 IRR 1.7(1.4-2.0)
・心筋梗塞 IRR 1.9(1.6-2.2)
・心臓死 IRR 1.7(1.4-2.1)
だった。
 相対リスクは、ベースラインリスクが低〜中等度の群(糖尿病患者等)で最も高く、絶対リスクはベースラインリスクが高い患者で高かった。
 ジクロフェナクの開始は、30日以内の上部消化管出血リスクを増加させた。内服なし群と比較して約4.5倍、イブプロフェンやアセトアミノフェンと比較して2.5倍、ナプロキセンと同等だった。
【結論】
 ジクロフェナクは、内服なし、パラセタモールおよびその他の古典的なNSAIDsと比較して、心血管リスクとなる。
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【批判的吟味】
・まずは論文のPECOから
P:デンマークの全人口
E:ジクロフェナク開始
C:①内服なし、②イブプロフェン内服、③ナプロキセン内服、④アセトアミノフェン内服
O:心血管疾患
T:後ろ向き観察研究
・平均年齢 46-48歳、糖尿病患者 2-3%、COPD 5%前後、高血圧 6-9%前後
過去のジクロフェナクの全ての研究(システマティックレビュー含む)よりも、症例数が多く、この結果がかなり影響を与えそうです。
・国民データベースからの情報ですから、信頼区間もそれほど広くない一貫した情報です。

【個人的な意見】
 個人的に結構びっくりしたのは、心疾患だけでなくて脳梗塞も増えていることでしょうか。そちらも考えなくちゃいけないんですね・・・
 とはいえ、他のNSAIDsの方が安全であることが分かっている以上、ジクロフェナクを優先して処方する理由はほぼないでしょうねえ。あくまで限定的な使用に留める必要があるでしょう。

✓ ジクロフェナクは他のNSAIDsと比較しても心血管イベントを有意に増加させる